素敵少女1
※キャラ崩壊注意!
※六神将+ヴァン
神託の盾騎士団で……いや、ダアトで少々有名な少女がいる。
見た目も中身も基本は普通。
ただ……。
時々、おかしな歌を歌って、周囲の人間を困らせていた。
素敵少女
――神託の盾・ダアト篇
***
本人は無意識なままに少々有名になった少女・アンジェ。
今日もご機嫌なようで、スキップをしながら廊下を歩いていた。
彼女がご機嫌な時は、何が起こるか分からない。
アンジェを見掛けた六神将は、そっと後をつけた。
「今日は天気いいし、絶好の歌日和だねっ!」
誰もいないその場で、彼女は大きく頷いた。
廊下の窓を開けて、満足そうに笑う。
あれは、何かを企んでいる顔だ。
「みんなに聞かせる前に、練習しなきゃ。あー、あー」
お腹に手を置き、発声練習。
これから彼女が歌う歌の中に自分が登場しない事を切に願った。
微妙な恐怖心を抱きつつ、六神将はアンジェの歌に耳を傾けた。
♪―♪―♪―---
ヴァン主席総長の“ヴァ”は、『ヴァカンス』の“ヴァ”〜
アッシュの“アッ”は、『アップルパイ投げ』の“アッ”〜
シンクの“シ”は、『失礼しました〜(ジェイド風)』の“シ”〜
アリエッタの“アリ”は、『蟻地獄(notありじごくにん)』の“アリ”〜
リグレットの“リ”は、『領地・領海・領空』の“リ”〜
ラルゴの“ラ”は、『ラジオ体操第2』の“ラ”〜
ディストの“ディ”は、『ディスカウントセール[割引販売]』の“ディ”〜
大詠師モースの“モ”は、『もうええやん』の“モ”〜
導師イオンの“イ”は、『イクラ食べ放題』の“イ”〜
アニスの“アニ”は、『兄貴は出かけていますが、何か?』の“アニ”〜
ティアの“ティ”は、『ティースプーン』の“ティ”〜
あ、ティアは何か普通だ。じゃあ……
ティアの“ティ”は、『ティンカーベルコップ3杯分』の“ティ”〜
詠師トリトハイムの“トリ”は、『トラクタービーム』の“トリ”〜
♪―♪―♪―---
「アンジェが、またおかしな歌を歌ってるんだけど……」
「シンク……プッ」
「アリエッタ、笑わないでくれる?」
「何故、アップルパイを投げるんだ!?」
「アッシュ、そこに触れても答えは出ないぞ。私だって……」
「私が割引とはどういう意味ですかーっ!!」
「……何故、誰も詠師トリトハイムの歌詞には突っ込まないのだ?」
口々にアンジェの歌に突っ込む六神将。
彼らのすぐ側で、ヴァンが三角座り(体育座り?)をしながら、何やら呟いていた。
『いたのかよ!!』
六神将は誰も気づかなかったらしく、本気で驚いていた。
条件反射で武器を構えている。
「何故私は『ヴァカンス』なのだ。『ヴァイオリン』でいいじゃないか!!」
「イメージじゃないからでしょ」
溜め息混じりにシンクがそう言った。
「総長、『ヴァカンス』ってイメージ……?」
「派手な花柄の服とか着てそうだな」
『ブッ……!!』
アッシュが言ったソレを想像したのだろう。
頭に浮かんだヴァンがあまりに面白くて、六神将は吹き出した。
「別に『ヴァレンタイン』でもいいではないか!」
「か、か……閣下、い、色々と面白すぎるので、くく口を閉じて頂けますか?」
笑いを必死に堪えながら、リグレットは頼んだ。
ヴァンは寂しそうに二メートル離れた。
「『ヴァイウゼンセン[梅雨前線]』でもいいだろ」
『ブッ……!!』
六神将はまた吹き出した。
何とか笑いを堪えているが、体中が震えている。
涙目になっている者もいる。
「それがダメなら、『ヴァ――』」
「総長、黙れ……です! リミテッド!」
「ぐはっ……」
当り所が悪かったのか、ヴァンは倒れた。
取り敢えずは一安心だ。
明らかに不自然だった呼吸を何とか落ち着ける。
「あー、苦しかった」
「ああ」
「……あれ? みんな、ここで何してるの?」
『アンジェ!?』
彼女が来ている事に気づかなかった。
何故自分達の事がバレたんだ!?
と焦っているが、あれだけ笑っていれば、普通にバレる。
「あ、新曲聴きに来てくれたのね!」
「新曲……?」
「そう! じゃ、最後まで聴いてね」
アンジェを止める隙がない。
彼女は早速歌い始めた。
「六神将とその他素敵なお友達の歌」
「え? それが曲名なのか!?」
♪―♪―♪―---
ヴァン主席総長の“ヴァ”は、『ヴァードウォッチング〜』の“ヴァ”〜
おい、さっきと違わないか?
アッシュの“アッ”は、『アッキレス腱』の“アッ”〜
それは、不自然でしょ。
シンクの“シ”は、『集つう治療室』の“シ”〜
集中くらい言えないとダメだぞ。
アリエッタの“アリ”は、『有合わせ』の“アリ”〜
それは、酷くないか?
リグレットの“リ”は、『利害関係』の“リ”〜
もうどうでもいいですね。
ラルゴの“ラ”は、『駱駝(らくだ)』の“ラ”〜
そんな漢字だったって、知らなかった……です。
ディストの“ディ”は、『監視魔』の“ディ”〜
「ディ」が全く関係ねぇな。
♪―♪―♪―---
「アンジェ」
「何、シンク。まだ歌続くんだけど」
「今日で、その歌は封印してくれない?」
「何でっ!?」
アンジェは大袈裟に驚いた。
自分の歌が否定されたと泣きそうになっている。
「おい、シンク。アンジェを泣かせるな」
「分かってるよ!」
彼女が泣くとどうなるか、知っている。
嵐の方が可愛く思える酷い惨事になる。
「アンジェ……」
「な、に」
「キャンディあげる……です。だから……泣かないで?」
「ありがとう、アリエッタ」
アンジェの顔に笑みが戻った。
五人はアリエッタに拍手を送った。
「ところで、アンジェ」
「どうしたんですか? ヴァン様」
「歌の続きが聴きた――……」
『空気読めよ!!』
六神将は、素晴らしいチームワークで、ヴァンをぶっ飛ばした。
激しく壊された壁や廊下や部屋の修理費は、ヴァンの給料から引かれるのだろう。
連帯責任という可能性もあるが。
「ちょっと寂しいけど、この歌は封印するね」
「すまないな、アンジェ」
「気にしないでよ、リグレット。実は、もう一曲新曲があるんだから!」
『……』
彼らは黙ってしまった。
「ラルゴの娘さんとか、ディストの親友とか、いろんな人の事を歌ったの!」
どこから来るのか分からないが、自信満々だ。
彼女の言葉から想像すると、今度は今の曲にいなかったメンバーの歌らしい。
「特別に先に聴かせてあげるね!」
アンジェはどこからかマイクを取り出し、歌い始めた。
果たして、彼女を止める事が出来るのか!?
運命は次回へ続く。
up 2008/05/30
移動 2016/01/15
← →
←top