月色雫が浮かぶ夜


人は何故、こんなに小さいのだろう。

私は何故、こんなにちっぽけなんだろう。

こんな私じゃ、あなたの側にいられませんか?



その夜、私は肌寒さで目を覚ました。

夜空に浮かぶ眩しい月光が、部屋を照らしている。

穏やかに眠る彼女達を起こさないように、窓に近づいた。

夜空を眺め、ふと視線を落とすと、見知った金色を見つけた。


「……ガイ?」


部屋をそっと抜け出して、その背中を目指した。



月の光を受けるその姿に足を止める。

キレイだな……って思ったから。

暫くその背中を眺めていると、ガイは剣を取り出した。

それを天に向ける。

月に捧げるように。


「……」


何故だか分からない。

本っ当に分からない。

どうして、“怖い”なんて思ったんだろう。


「アンジェ? どうしたんだ?」


私が気づくと、剣は収められていた。


「あ、えと……」

「眠れないのか?」

「……うん」


ゆっくり歩を進めて、ガイの隣に並ぶ。


「ガイは?」

「月が、綺麗だったから。……なんてな」

「ガイには月が似合うよ」

「いや、俺なんかよりアンジェの方が似合うだろ」


突然伸びてきたガイの手が私の髪に触れた。


「!!」


驚きの余り、2メートル程ガイから離れる。


「……傷つくんだけど」

「え、あの……“女性恐怖症”だったよね?」

「うん」

「私、一応、女の子なんだけど」

「一応じゃなくて、立派な女の子だろ」


なら余計に分からない。

何故私に触る。

まぁ、髪だったけど。


「アンジェに触れたくなったから」

「ガイって人の心読めるの?」

「そんなワケないだろ」

「……だよね」


あんまりタイミングよく話すから。


「えいっ」


私はガイの腕を掴んだ。


「うわあぁっ」

「……こっちの方が傷つくんだけど」

「ごめん……」


ま、いっか。
と、私は空を見上げた。

柔らかな月の光を体に浴びる。

風が吹いた。

夜の空気を動かすように。


「そろそろ戻らないと」

「そうだな」


宿に足を向ける。


「ねぇ、ガイ」

「ん?」

「寂しくなったら、私の事呼んでね」


そう言うと、ガイは驚いた顔をしてた。


「おやすみ」


そのままガイを置いて、私は歩き出した。



やっと分かった。

さっき、“怖い”と感じたのは、ガイが月光に溶けてしまいそうだったから。

伸ばした手が、届かない場所に行きそうだったから。



お月様にお願い。


永遠を願わないから、もう少しだけ彼の側にいさせて。



up 2006/09/25
移動 2016/01/12


***

初めて書いたテイルズ夢だったみたいです
 


 

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