煌めきの欠片


「アルビオールの様子がおかしいので、緊急着陸します!」


ノエルのそんな声の後、衝撃が体を襲った。

無事に着陸できたのは、ノエルの腕だからだろう。

街までは少し距離のある場所。

ルーク達はアルビオールから降りた。


「ジェイド、買い物頼む!」

「年寄りは大切にしないと――……」

「ルーク、手伝ってくれ!」

「今行く」


ガイに名前を呼ばれ、走っていくルーク。


「……」


話を途中で遮られ、ちょっと寂しかったジェイドだが、それは表に出さずメモに視線を落とした。

回復薬と食材少々。


「行きますか」


街に向かって一人で歩き出した。

最近一人でいる事が少なかったからか、何だか違和感を感じる。


「やれやれ」


こんな感情を持ち合わせていたのですね、と笑いが込み上げる。

街に入った途端、前方から走ってきた人物とぶつかった。


「大丈夫ですか?」


ぶつかってきた小柄な少女に声をかける。


「ジェイドさん、お誕生日おめでとうございます!」


満面の笑みでそう告げた少女。


「……アンジェ?」

「はい。お誕生日おめでとうございます、ジェイドさん」

「あ、ありがとうございます……」


にこにこと笑いながら自分を見上げてくるアンジェ。

今日が誕生日だという認識とアンジェの笑顔が重なって、柄にもなく照れてしまう。


「私、ジェイドさんにプレゼントがあるんです」


アンジェはジェイドから離れ、小さな箱を取り出した。


「私にですか?」

「はい」


アンジェのペースに巻き込まれたジェイド。


「開けるのは、一人の時にして下さいね」

「おや。今ではいけないのですか?」

「楽しみは、後にとっておくものなんです」


力説するアンジェに従い、小さな箱を大事にしまった。


「もしかして、ジェイドさん。買い物ですか?」

「そうなんですよ。うちの若い子達は、人使いが荒くて……」

「ジェイドさんって、ルークさん達のお父さんみたいですね」

「……」


確かにそんな感じはするが、面と向かって言われるのは複雑である。


「私、買い物手伝いますよ」

「え?」

「早く。ジェイドさん、行きましょう!」

アンジェにペースを崩されっぱなしのジェイド。



(たまにはいいですね。こんなのも)



アンジェと繋いだ手。

それを見つめ、そんな事を思った。



買い物を終え、仲間達が待つアルビオールへ向かう。
アンジェと一緒に。

他愛ない話。

アンジェの笑顔と笑い声。

こんな時間が好きなんだと実感した。



アルビオールの前に着いたその時――。

クラッカーの音が響き、目の前を様々な色の紙が舞った。

特別な景色の先には、仲間達の笑顔。


『誕生日おめでとう、ジェイド(大佐)!』



(ハメられたわけですか……)



ジェイドは眼鏡を直し、口元に笑みを浮かべた。

嫌味なモノではない笑顔。


「皆さん、アンジェ、ありがとうございます」



Happy birthday!!



輝く瞬間を心にやきつけて……。



up 2006/11/22
移動 2016/01/11



 

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