白い温もり


※クリスマス



ちらちらと。


鮮やかな光の中を舞う白い雪。


寒さも愛しいそんな日……。



ルークはクリスマス仕様に飾られた大きな木を見上げた。

ジェイドから今日がクリスマスイブだと聞いた。

が、それが何の日なのか詳しく知らない。

屋敷にいる時も特別興味はなかった。

いつもと少し違う夕食と欲しいとも思わない贈り物を貰う日という曖昧な認識しかしていなかったから。


「クリスマス……か」


着飾った木を見上げ、呟いた。


「ルークっ!」

「うわぁっ……!」


いきなり背中にくっつかれて(そう呼ぶにはかなりの衝撃があったが)、思わず変な声が出た。


「ルーク、無防備すぎ」

「アンジェ……」


背後から聞こえる心地よい笑い声。


「あ、ごめん。もしかして、痛かった?」

「痛いわけねぇだろ」


ようやく離れたアンジェは、いつものように笑っていた。

ルークの顔にも笑みが浮かぶ。


「ルーク、あのねっ!」


アンジェが何かを言おうと口を開いた時、額にひんやりとした冷たい塊。


「あ……」


ふわりふわりと舞い降りてきたのは、白い雪。

雪を見ると嬉しくなるのは、自分がまだ子供だからだろうか。


「きれいだね」

「アンジェの方が……」


慌てて自分の口を抑える。

何て事を……と恥ずかしくなる。

ルークはこっそりとアンジェの様子を窺った。

ルークと同じように真っ赤な顔をしているアンジェ。

二人そろって赤い顔。余計に照れてしまう。


「あ、あのさっ、アンジェは何を言おうとしたんだよ」


雪に遮られたその先を促した。


「あ、あれ? えーと……メリークリスマス」

「メリークリスマス」


それが言いたかった事ではないというくらい、ルークだって分かる。

何か言いにくい事なのかもしれない、と無理に聞こうとしなかった。


「ルーク、あのね」


雪はまだ止まない。

頭や肩にうっすらと積もっている。


「クリスマスにはね、特別な魔法があるの」

「特別な魔法?」

「そう。小さな願いが叶う聖夜だから」


ルークは、クリスマスってそんな日なんだー、と曖昧に思っただけ。


「ね、私の願い事叶えてくれる?」

「俺が!?」

「ルークじゃなきゃダメなの」


暫く考えた後で、「いいぜ」と快諾した。


「好きだよ」

「えっ!?」


突然「好き」だと言われ、少なからず驚いた。

お互いの好意は口にしなくても分かっていた。

だから、音になったアンジェの気持ちに驚いた。


「ルークが私の事をどう思ってるか、聞かせて?」

「……んなの、言葉にしなくてもいいだろ」


大きな音をたてる心臓が、他の音を遮断する。


「お願い。教えて」


不安げにルークの腕を掴むアンジェ。

震えているのは、寒さのせいだけではない。

面と向けって言葉にするのは怖いから。

アンジェをそっと抱きしめて言った。



「    」



up 2006/12/24
移動 2016/01/11



 

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