貴方と一緒に


※バレンタイン



イベントだからじゃない。


好きだという気持ちは。



***



「何やってるんだよ、僕は……」


壁に背を預け、溜め息を吐くディオ。

チョコレートの香りが風になる今日は、バレンタインデー。

ディオは朝からコレットを避けていた。

当然の事だが、嫌いだから避けているワケではない。



バレンタインデーだから、である。



コレットの事だから、きっとみんなに平等にチョコレートをあげるのだろう。

それを見るのが嫌だったから。

やっぱり、特別になりたいから。


「はぁ……」


こんなイベントなければいいのに……と地面を睨む。

そうすれば、こんな思いをせずにいられるから。

純粋な気持ちが汚れたような気がして、唇を噛んだ。


「ごめんな、コレット」


誰にも聞かれる事のない謝罪。

愛しい彼女の姿を浮かべ、呟いた。

今日はまだ長い。

こんな気持ちのままでコレットに会いたくないから。

ディオは再び歩き出した。



***



「ディオ、どこにいるんだろ」


コレットは朝から探し回っていた。

心当たりは何度も見に行った。

けれど、どこにも彼はいなかった。


「もう! どこにいるの!」


これだけ探しても会えないと、今日は無理なんじゃないかと不安になる。

今日でないと意味がないのに。

何度も練習したソレに目を落とした。

ディオに「おいしい」と言ってもらいたくて。

笑顔を見たくて。

初めて作るソレを必死で練習した。


「まだ諦めないんだから」


早く見つけようと踏み出した時、その姿を見つけた。


「ディオ……」


誰とも目を合わせないように急ぐその姿。


「ディオ!」

「コ、コレット!?」


逃げようとしたディオの手を掴む。


「やっと見つけた」

「……」

「ずっと探してたんだからね!」


普段笑っているコレットが、本気で怒っているという事をディオは嫌でも分かった。


「どうして逃げるの?」

「……」

「会うのもイヤなくらいに私の事、嫌いになった?」

「嫌いなんかじゃ……!」

「じゃあ、どうして!?」

「……」


ディオはコレットに、彼女を避けていた理由を話した。

正直に。


「ごめんな」

「……」

「コレット?」

「ディオ、ヒドい」

「ごめん」

「ディオの意地悪」

「ごめん」


何度も謝るディオを横目に見る。

寂しい思いはしたけど、ディオの気持ちは嬉しい。

コレットは笑って彼の方を向いた。


「罰として、ホワイトデーには私の欲しいものちょうだい」

「コレットの欲しいもの?」

「うん。じゃないと許さないからね!」



私が欲しいもの。


それは、貴方と過ごす時間。


一人でいると不安になるから、ずっと側にいて。


約束だよ?



up 2007/02/16
移動 2016/10/10




 

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