雨待ち風




ねぇ、きみはこの空にいるんだよね?

ぼくもできることならそこに行きたいよ――――――――。







サー・・・・
窓の外から聞こえる雨音。それで目を覚ました。雨の日って言うのは外にいようと部屋にいようととても静かなはずなのに、どこか地面をたたく雨の音が耳の奥で響いて、うるさい。
部屋の中はどことなくひんやりとしている。素足で立つ床が冷たかった。
今日は確かこの家にはぼく一人。親は仕事に出かけたと思ったな、なんてことを考えながら着替えをすませる。
部屋を出ようと扉に手をかける。ふと顔をあげてカレンダーを見た。

「あ、もうそんな季節なんだ・・・」

そんな言葉が不意にこぼれた。最近身の回りが忙しくなってすっかり忘れていた。
「自分、薄情だな」そう思った。あれだけ泣いて泣いてこれでもかってくらいに人目もはばからず泣いたと言うのに。

あの日もこんな空だったかな?もう忘れかけているのか、空の様子はもうほとんど覚えていない。覚えているのは、目のまえにあった信じられない現実だけ。
夢を見ているのかと思った。だって昨日まで今までと同じように笑っていたよね。だから死んだって聞いたときは悪い冗談か夢だと思った。だけど導かれるままに訪れたその部屋にきみは横たわっていたから。
冷たい体。とまったままの心臓。それはもう人形のようで。ただ泣くことしかできなかったんだ。

「ごちそうさま」

ごはんの食器を片付けて、一度部屋に戻る。特にすることもないんだけど。
ただボーっと雨が落ちてくる空をみあげていた。
この景色がイヤと言うほど入り込んでくる。あのときの気持ちをよみがえらせてくる。堪らずに目を閉じた。この景色を見ているくらいなら、まだ暗闇のほうがマシだ。

まだ現実を受け止めきれない頃には何度もきみを追って行こうと思った。できることならずっと一緒にいたかった。だけどぼくは弱いから、きみを追いかける勇気もないんだ。
今でも時々恋しくなることがあってこの現実に嫌気がさして、きみのもとに行きたいと思うこともあるけれど。きみにこの声は聞こえていないのかな?だって迎えにきてくれないもんね。

いっそのことこのまま降り続けばいい。すべて洗い流してしまってほしい。
この思いも、苦しみも、なにもかも。

ねぇ、きみはこの空にいるんだよね?

ぼくもできることならそこに行きたいよ――――――――。

だけど、ダメなんだ。弱すぎて、きみを守ることもできなかったんだから。
きみのもとへ行くことが後悔か、きみのもとへ行かないことが後悔か、ぼくにはわからない。
ただ今でもここにいるのはちょっとばかりの勇気で、きみのいた場所を守りたいって思えたからなんだと思うよ。

ぼくはきみに届くような声できみの、名前を叫んだ。


(死ぬことがつらいのか、生きることがつらいのか)

(ひからびてた毎日よ 音を立てて剥がれ落ちていけ)


********
後半めちゃくちゃでごめんなさい。


song by sukimaswitch

08/10/25 up










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