SUMMER SONG
(あ〜、あつ〜・・・・)
夏休みまえだと言うのに毎日毎日イヤな暑さが続く。太陽もセミもあいかわらず元気だ。
自転車に乗りながらそんなことを思う。
この暑さのせいで、我が家でもクーラーの効く部屋から誰ひとり出ようとしない。
必要最低限の行動くらいだ。
私もそのひとりなのだけど、暑い中自転車をこいでいるのにはもちろん経緯があって。
姉がアイスクリームが食べたいと言い出したのだ。それにみんなが賛同したのはよかったが、当たりまえのように誰も買いに行こうとしない。
結局じゃんけん決めることになり、あとはみなさんお察しの通りである。
「なんで言い出しっぺが家で涼んでてあたしだけがこんな目に・・・・」
正直ここまできたら怒る気力さえないけど。
そう思い、まえをむいて勢いよくこぎだそうとした時――――。
バシャっ
「うぁ・・・・っ!?」
いきなり横からきた水を思いきりかぶる。予想もしないできごとに、洋服はびしょぬれ。
「す、すみません!」
謝る声が聞こえて、ぱっと声のしたほうをむく。そこにはちょっと見慣れた顔。
「あ、安藤くん?」
「あれ、三上さん?」
ぬれて水が滴る髪をかきあげながら確認すると、どうやら本人のようだ。制服姿しか見たことのない私には新鮮な、いつもよりラフなTシャツと七分のズボン。ホースから出る水を見ると、彼のしわざらしい。彼は少しわたわたしながら、私を心配する。
「あ、ごめん!あの、今タオル取ってくるから庭に入ってて」
「え?いいよ、もう帰るから・・・って行っちゃった・・・・」
どうやら私の声は聞こえなかったらしい。このまま帰っては逆に失礼かもしれないと、私はしかたなく彼の家の庭に入った。
庭は思ったよりも広い。縁側の近くには少し大きめのビニールプール。中には水が入っていて涼しげに太陽を映している。端のほうに自転車をとめた。
「おまたせ。はい、タオル」
「ありがと・・・あ、アイス溶けるっ」
「じゃあ、うちの冷凍庫に」
そう言ってアイスの入った袋を受け取り、私にタオルを渡す。私はとりあえず髪をふいた。
「大丈夫?ほんとごめんね」
「気にしないで。返って悪いね、タオルまで貸してもらって。まぁ暑いし、水かぶってちょうどいい感じだよ」
「はは、三上さんは優しいんだね」
そんなことを言いながらふたりで笑う。
安藤くんとはあまり話したことはないけど、どうやらけっこう親しみやすい人らしい。話しているうちに盛りあがって、髪が乾くまで縁側でしゃべっていた。
「ねぇ、あのビニールプール、なぁに?」
さっきから気になっていたことを聞く。安藤くんの家に安藤くんよりも小さな子がいるなんて聞いたことがない。ペット・・・・がいる様子もないし。だから気になっていたのだ。
「あぁ、水遊びしてたんだ」
「え、安藤くんが?」
「うん」
なんというか、うん、意外な感じ。もう少しクールなイメージがあったのだけど。確かに毎日暑いし、そんなふうに水遊びしたい気持ちもわかる。
「暑いもんね〜。もうすぐ夏休みだからいいけど・・・・。海とか行かないの?」
「うーん、行ったことないんだよね」
そうなんだ、と小さく相づちをうつ。
安藤くんはあまり人付き合いがうまくないらしい。決して一匹狼ってわけじゃないし、友だちもいるけど、あんまり一緒にいるところを見たことがない。
なんだかもっとお話したいなぁ。うーん、これはある意味チャレンジの時かも。
「ねぇ、もうすぐ夏休みだしさ」
「うん?」
せっかく仲良くなれたんだし、今度はもっと知り合いたいじゃない?
学校生活では毎日落ち込まされるようなことばっかだし、この夏休みで全部取り戻してやろうか。そこに安藤くんも巻き込んじゃえ。
「海に、行こっか」
さぁ、どんな夏休みになるかな?
SUMMER SONG
(きみと私の夏物語)
(君に会って 笑いあって 始まるよ夏休み lan la lan la〜♪)
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個人的に気に入ってます。
まだ恋未満の関係です、このふたりは。
三上ちゃんは安藤くんに興味をもったようですがね。
song by yui
おまけ↓
「そういえば、アイス買いに出てたの?」
「・・・・あ、忘れてた」
・・・・・お粗末っ!
08/8/12 up
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