▼ ロザリオに奪われる
とある島の黄昏時、
大きな海賊船が停泊している浜辺では焚き火が焚かれそれを囲むように男達が座り酒を飲んでいた。
赤髪海賊団船長 大頭 "四皇" 赤髪のシャンクス。
そう呼ばれる男は世間の想像とは反対に酒と宴が大好きな中年だった。
今日も無人島の浜辺で理由なき宴を繰り広げている。
そこへ珍しい客が来た。
「よう、鷹の目...こりゃ珍客だな」
「...こんな辺鄙な島で宴とは、貴様も変わらぬな」
「当たり前ェだろ。2年ぶりか?
ホラ、おまえも飲め飲め」
シャンクスはジョッキに並々と酒を注ぎミホークに渡す。
鷹の目のミホーク、かつてシャンクスとライバル関係であった彼はシャンクスの利き腕が落とされてからはこうして稀にこの海賊団を訪れては"ひまつぶし"をするような関係になっていた。
「おまえまだあの湿っぽい城に住んでんのか?」
「そうだ...住めば都とは言ったものだ」
「もっとこう、南国のよォ、おっぱいのおっきなお姉ちゃん達がきゃあきゃあしてるような...住むならそんな島がいいね、おれは」
「...貴様には似合いだな」
「鷹の目、おまえ女はいねェのか?
そもそもおまえは女に興味あんのか?」
その質問は誰もが気になっていた内容のようで、
クルー達も心なしか声を落とし鷹の目の反応を伺った。
「城に1人、モリアの部下である女が住んでるが.....特別興味はない」
「へえ...女と住んでる鷹の目なんて想像出来ねェな。抱いてないのか?」
「..無論」
「男の隅にも置けねェやつだな..
あ、もしかしてアッチは世界最弱か?」
ぎゃはははははと下品な笑い声が響き渡る。
少々うんざりしたようにジョッキに口をつける男は、ふと感じたことのない冷たい雰囲気に薄暗い辺りを見回した。
「随分と盛り上がってるわね」
船から降りてきたのか、気だるげに歩いてきたのはブルネットの髪を揺らす女だった。
シャンクスの肩に手を置き、彼の持っていたジョッキを奪い白い喉に流し込んだ。
「おお、起きたか!ナマエ。
おまえ、鷹の目には初めて会うだろう?」
そう言われてから見覚えのない男の方を向いたナマエ。
鷹の目の黄金色の瞳と、ナマエの血のような深紅の瞳が重なる。
「鷹の目、こいつはナマエ。
一年ほど前から船に乗ってんだ」
「まあ、....鷹の目のミホーク!
会えて嬉しいわ、よろしくね」
「....貴様の女か?」
「まあそんなとこだ。
....ナマエ、もう体は平気なのか?」
「ええ....でもお腹が空いちゃって起きてきたの」
「そうか。
じゃあ直ぐにやるから、部屋へ行こう」
「....ねえ、あのね、」
鷹の目は酒を飲みながら、横目で2人を見る。
愛おしそうに女の髪を撫でるシャンクス。
ブルネットのウェーブヘアーを揺らす女は血の気の引いたような真っ白な肌に、唇と瞳だけが赤く染まっている。
一切の無駄がないその美しさは、完璧な美術品のようだがどこか不気味だ。
冷たい、空気の原因はこの女か、と納得した。
「....仕方ねェなぁ、オイ 鷹の目」
「....」
「ナマエに飯をやってくれねえか?
どうしてもおまえのを飲んでみたいと聞かねぇもんで」
「....意味がわからん」
女はヴァンパイアの末裔だと聞いたミホークは合点がいった。血を連想させる瞳も、真っ白な肌も、全体的に纏っている冷たい雰囲気も。
いつもなら絶対に了承しない願いも、好奇心から首を縦に振っていた。
「ありがとう!
あの鷹の目のミホークの血を飲めるなんて、光栄だわ...」
舌舐めずりをしながらミホークに触れるナマエ。
シャンクスは少し面白くなさそうにそれを見る。
他のクルー達はこんな光景二度と見れない!とばかりに注目していた。
ナマエは躊躇なくその膝に跨る。
突然のそれに一瞬眉が顰められるが、ナマエは気にせず太い首筋を指先で撫でた。
「噂以上にずっと男前なのね。
ドキドキしちゃうわ」
「...首から吸うのか」
「基本は。あとはそう...少し満腹感は減るけど唾液でもいいわ。
それか、一番満たされるのは精液。
....あなたさえよければ、私はどれでも構わないわ」
「....血液にしてくれ」
「十分よ。
あなたのとっても美味しそう...首筋の匂いでわかるの、ハァ...」
「オイナマエ、さっさと済ませろよ」
「前菜みたいなものよ、これは..」
シャンクスの声に仕方なくシャツの襟もとを少しずらし、舌を這わせる。
ぴくりと反応するミホークだが、その顔は崩れない。大抵のものはこの時点で自らの芯を熱くさせてしまう。
「いただきます..」
「っ...」
肌に牙が刺さる痛みが広がり、ナマエはミホークの血液を吸っていく。
こくこくと鳴るナマエの喉、ミホークは暑くなる己の体に驚きを感じていた。
それもそのはず、ヴァンパイアの吸血には催淫作用がある。それを知らされていなかったミホークは次第に硬さを持ち出すそこに思わずナマエの肩を掴んだ。
「おい、赤髪......」
「凄えだろ。
誰でもそうなっちまうから、気にすんな」
とても甘美な味がしたのか、ナマエは夢中になってミホークの首筋から離れない。
抱きつくような格好で、胸にはやわらかい感触が押し付けられ、髪の毛から香る女の匂い、そして極め付けにはそこが布越しに触れ合っているのだから いくら鷹の目のミホークといえど男である彼はしっかりと反応してしまった。
「ふう....なんて甘くて、コクがあるのかしら...
ずっと飲んでたいくらい。
とっても美味しかったわ、ありがとう。」
四つの噛み跡である穴を撫で、ナマエはミホークの上から腰を下ろそうとした。
だがそれはミホークの彼女の腰を掴む手により阻止されてしまう。
「?」
「見返りはないのか?」
「な、何言ってんだよ鷹の目ェ!」
「久しく女を抱いてないというのに、こうなってはな...」
「んなの自分でどうにかして来い!
ほら、ナマエ来い」
シャンクスはさっさとナマエを抱き上げ自分の元へ引き寄せた。
そしてナマエが避けたことにより露わになった鷹の目のズボンの膨らみにぎょっと目を丸めた。
「おまえ....やっぱいいモン持ってんだな」
「とんだ茶番に付き合わされた。
ベックマン、酒を貰えるか」
「お、おう。
ワインがあるぜ。今持ってくる」
ちら、と横を見ればシャンクスの隣で酒を飲むナマエと目が合う。
闇の中でさえ発光しているように輝く真紅の瞳は美しい。
ニヤリ、と口角を上げる鷹の目に
寒気を感じたシャンクスの"嫌な予感"は次の朝にしっかりと当たってしまう。
ロザリオに奪われる消えた2人の行き先は きっと、.
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