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My Sweet Leopard




「本当によくあの男と恋人でいられるわね」

「いきなり何よ?」


自宅近くのバーにてカリファと女子会。
唐突な話題にナマエは怪訝そうな顔をした。


「あんな冷血で、無口で、何考えてるのか分からない男の何処がいいのかしら。
まだカクの方が可愛げがあるわ」

「顔も、身体も、性格も全部好きよ。
ああ見えて結構甘えん坊なの」

「ありえない。そんなこと絶対にないわ。あのルッチが甘える?信じないわよ」

「本当よ。毎朝起きたらキスをして私を起こしてくれるし、愛してるが口癖なの。可愛いでしょう?」

「....」

「何よその顔。信じられないなら見にきたら?」

「見にって、お宅にってこと?」

「そうよ、彼はまだ帰ってないわ。
家で飲み直しましょう」



ナマエの提案により、カリファはたまたま近場で飲んでいたカクとジャブラを呼び出し四人でナマエの家へと向かった。



「あら....結構センスいいわね」

「ナマエの匂いの中にルッチの匂いがしやがる....」

「同棲しとるんだから当然じゃろう」


ブラウンと白を基調としたインテリアは殆どナマエが決めた物で、キッチリまとめられてはいる。寝室のクローゼットからは服やヒールが乱雑にはみ出ていた。


「ああ...それは今朝のまま」

「あなたらしいわ。
...それに、随分大きいベッドね」

「彼が変身したままでも眠れるサイズよ」

「ふん...ルッチめ、本当にナマエと寝てやがるのか」

「さあ、リビングで飲み直しましょう。
お酒とおつまみは沢山あるの」


雰囲気のいいBGMを流し、橙色の間接照明に照らされた部屋で一同はわいわいと酒を飲む。
話題はルッチとナマエのこと、仕事のこと、政府のこと、様々だ。

ルッチが帰宅するまで待つはずだったカリファはテーブルに突っ伏して眠り、ジャブラは大の字になって大いびきをかいている。

カクとナマエは未だ酒を飲み交わす。
二人ともすっかり顔が赤くなっている。



「それにしても....まさかルッチとデキるとは思っちょらんかったのぅ」

「またその話?
なら誰となら納得したのよ」

「そうじゃな....ワシかの」


照れ臭そうにぽりぽりと短髪を掻きながらそういうカク。
二人も長い仲だが、恋仲に進展したことはなかった。

「ふふ、口説いてるの?」

「うむ...口説けてるか?」

「パウリーといいあなたといい、不器用な男は嫌いじゃないわ」

「パウリー?あやつにも口説かれたのか?」

「何度かデートに誘われたの。一度だけ飲みにいったわ」

「女に弱そうなふりして...やりおるな」

「可愛いわよ、少し背中と胸が開いたワンピースを着て行ったらもう茹で蛸みたいに真っ赤になっちゃって。折角可愛いデザインなのにずっと彼のジャケットを羽織らされていたの」

「やっぱりな...ルッチの女に手を出すとは、命知らずな奴じゃ」

「手を出すも何も、一度デートしただけよ。
帰り際にキスしたら倒れてしまったけど」

「...なんとも残念な男じゃの」


玄関の方で物音が聞こえたと思えば、
お待ちかねの男のお帰りだった。
玄関に並ぶ靴を見て想像がついてはいたものの、リビングに広がるその光景にうんざりとしたようにルッチが部屋に入ってきた。


「おかえりなさい、ルッチ」

「邪魔しとるぞ」

「何の騒ぎだ、こりゃあ..」

「宅飲みよ。たまにはいいでしょう?」

「....カク、おまえがいながら何をやってる」

「ナマエに頼まれたらわしゃ断われんわい」


ジャケットと帽子を掛け、ソファに腰を下ろせばすぐにナマエがその上に乗る。
首に手を回しへの字に曲がった口元にキスを落とした。


「ダーリン、怒ってるの?」

「いや、.....だがそろそろお開きにしてくれ」

「そんな、だってもう潰れてる人達が可哀想よ。今日は泊まらせていきましょう」

「駄目だ」

「ワシはそろそろお暇するぞ。
ただこいつらは泊まらせてやってくれんかの」


すっかり寝入ったカリファとジャブラは簡単に起きそうにはない。
無理矢理起こして吐かれるのは困る。


「....ハァ、」

「ありがとう。
カク、あなたは大丈夫なの?」

「うむ。邪魔したな」


カクを玄関まで送り、部屋に戻ればルッチはゴミを拾い集めながら忌々しそうにジャブラを蹴飛ばしていた。


「もう....ジャブラはこのままでいいけど、カリファはソファに寝かしましょう」

カリファをソファに移動させせ、ブランケットを掛ける。
ルッチは空き瓶も全て処理をし、汚れたテーブルを綺麗に拭きあげた。



「楽しかったわよ、もっと早く帰れば良かったのに」

「三日ぶりに帰ったというのに....とんだ邪魔者だ」

洗い物をするナマエの腹に後ろから手を回し、その芳しい首筋に唇を寄せる。

するすると伸びるその手は豊かな膨らみを撫でた。だがそれはナマエによって阻止される。

「今すぐおまえが欲しい....声を出さなけりゃあいつらは起きやしねェ」

「ダメよ、声を我慢できる自信ないもの」

「...寝室に行くぞ、早く」

「ルッチ、今日はお預けよ」

「...無理矢理でも抱く」

「いいけど、明日家出するわよ」

「...ハァ」



三日も会えなかった愛しい女、
まるで生殺しだ、と元凶である二人を睨みつける。
洗い物が終わったナマエがシンクに座り足を組み、飲みかけのグラスで酒を飲む。
シルクのバスローブは無駄に短く、こんな格好であいつらの前にいたのかとふつふつと嫉妬心が湧き上がった。


「...こんなのを他の野郎の前で着るな」

「いつものスカートと変わらないわよ。
ああ、でもカクに口説かれちゃった」

「...おれに嫉妬させて楽しいか?」

「もちろん。とっても可愛い」

「酷い女だ」


細い腰を抱き、覗いた胸元に顔を埋める。
チクリとした痛みがしたと思えばくっきりと独占欲の証が残されている。


「そんなに私を独占したい?」

「..愚問だな」

「心配要らないのよ、ルッチ。
私はあなたのもの.....大好きよ」

「おれは愛してる」


重ねられる唇。
普段の彼からは想像できない、
慈しむような優しいそれがナマエは大好きだった。
その後何度も囁かれる愛の言葉。

すっかりリビングの二人を忘れていた男のそれに
寝たふりをしていたカリファは必死に笑いを堪えるのだった。







My Sweet Leopard
知ってるのは私だけ 。





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