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夕焼けに微睡む


 緩く柔らかな11月の日差しは、冬の兆しを見せていた。図書館の木製の机や椅子はそれを優しく吸収し、程よく暖かい。窓の外は酷く寂しいのに、そこから飛び込んでくるものは不思議と心地いいものだ。
 僕はたまらなくなって隣で眠る君の髪の毛を撫でつけた。君は小さく呻くだけで、まだ目覚めない。短い髪の毛は綺麗な烏の濡れ羽色で、少し熱い。君の髪の毛に太陽の熱が吸収されるから、冬の空気は冷たいのかな、なんて、下らないことを思う。それならそれで、僕の隣に太陽が集まるのだから構いはしないのだけれども。
 下敷きになっていたほとんど進んでいないノートを見て起こすべきかと手を伸ばし、止める。たまには寝かせておいてやってもいいと思った。なぜだろう、今日は君を甘やかしたい。
 それも全部日差しのせいにして、僕のノートも閉じて愛読書を取り出した。ああ、読み込むのにはいい陽気じゃないか。

「おやすみ」

 幸せな夢を見てね。


2012.11.12



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