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夕立と君が好き


 雨音が作る静けさは、しんしんと降る雪の作り出すそれと少し似ている。ザーザーと一定な音がある分、雨音は優しい。雪はあまりにも音を包み消してしまって、苦手だった。
 窓を開けて手の平を伸ばした。水っぽく、草っぽい自然の匂いが鼻をつく。
 みるみるうちに水浸しになった腕から一滴流れ、シャツを濡らした。
 窓、閉めてよ。
 小さく聞こえた君の声が柔らかくて心地いい。くるりと手をひっくり返して腕を引っ込めた。ごめんね、と言いながら拭いた腕は案の定冷えている。
 ゆっくり窓を閉めると、また雨音は小さくはっきりと鼓膜を叩きだした。
 この季節特有の湿気の高い空気に気分を良くしたのか、外の蛙がぴょこんと跳ねた。


2012.08.12



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