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水風船膨らめ


 ばしゃ。
 いっそのことそれくらいの音がなるくらいの量があったら面白かったのかもしれない。でも実際はばしゃばしゃなるほど量は無いし。ベタベタしたカルピスみたいなこれはそんな良い音はしないし。そもそもカルピスじゃないし。結局カルピスとは似ても似つかないし。
 どうにも笑えない。普通、こういうときは笑って、というか、微笑んで、好き、だとか。嬉しそうにするとか。ちゃんと覚悟も決めて、話し合って、なのに。なんか、苦しい。
 私と彼は愛しあっていた。
 好きだよ、うん、私も好き。大好き、愛してる。何回言った、何回言われた。私はその言葉を疑ったことはない。彼に疑われたこともない。だから私と彼は愛しあっていたのだ。お互いに、お互いが大切だったのだ。それは、事実のはずなんだ。
 身体中カルピス浴びたみたいにベタベタで、寝転がった彼の肩を舐めてみた。しょっぱい。甘くない。意外と濡れてない。当然と言えば当然で、カルピス浴びたのは私のゴム風船で、それ以外の場所にはカルピスかかってないし。第一カルピスじゃないし。
 重い。最初に感じたのはそれだ。もっと違うと思ってた。愛しさとか、その辺。でも、ただ重かった。私がかもしれない。彼がかもしれない。カルピスは重くなかった。ゴム風船は水風船になった。口を縛ったのは私だった。用意したのも私だった。伸ばして解して蛇口に繋いだのは、カルピスをかけたのは、彼だった。全然膨らんでないけど、水風船だった。
 水風船は勝手に膨らむらしい。だから、愛情もそれに比例して膨張していくそうだ。その辺の心配は私にはなかった。
 笑えない。重い。きっと水風船は、これから。私を変えてしまうんだ。


2013.08.04



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