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不条理パズル


(あ、)

 ふと足を止めて眉をひそめて、辺りを見回す。なんてことはないただの細い路地裏、それも何度も通っているはずのそれなんだけども。なんとなくあふれでた、既視感、既視感、既視感。それが浮かんでは消え、また浮かんでは消え。
 どこか冷たく無責任にも感じる、ただの道なのに。

(ああ、デジャビュ、ってやつ)

 デジャビュ、デジャブ、デジャヴ。言い方を変えただけで、何ら変わりはないのだけれど。口のなかで思わず何度も呟いた。
 だいたい、往々にして、自分がそれを感じるのは何かしら似ている光景を意識せずに思い出しているとか、そうでなければ、夢で見た、だとか。そんなとりとめのないもので、デジャビュの原因なんか学者でも知識人でもない自分には全く掴みようもないのだ。
 そういえば、このあいだ夢で暗がりでセックスをしていた友人二人は、元気なのだろうか。近親相姦も、同性愛も、夢の中じゃどれもただの愛のカタチとして、世間体が丸無視される。ということは、現実では受け入れがたいことなのだろうか。いや、夢は自らの深層心理だとか、誰か有名らしい学者がテレビでぼやいていた気がする。ならば、近親相姦も、同性愛も、自分は推奨しているのだろうか。ああ、ついでにいえば公共の場でのセックス、それからやけに馴れ馴れしい幼なじみも付け加えようか。
 馬鹿馬鹿しい、ただの記憶の断片をごちゃごちゃにまぜっかえした身に覚えがないものに何を求めているんだ。

『全く、この人たち俺が目瞑った瞬間にしっぽりおっぱじめるんだもの』
『えへへ、ごめんね』
『だってこいつが……!』
『え? え? 二人、付き合ってる、の?』
『あれ、××くんは知らなかったっけ?』

『今ね、私、お父さんと付き合ってるの。皆に内緒で』
『へえ……そうなんだ』
『お、応援してくれる? 気持ち悪い? 変だよね?』
『……いや、そんなことないよ。大丈夫、お似合いだと思うよ。お幸せに』

『うん! やっぱり二人でいるときが一番楽しいよ!』
『そうだね』
『こっちに転校してきなよ! 私が転校してもいいけどさ、あ、むしろ学校やめて二人で暮らそうか! ね、そうしようよ』
『ばか、ニートになる気かお前』

 頭の中でぐるっとこの間の夢を一巡させた。ああ、くだらない。くだらない。深層心理?ありえない。
 叶わない恋のはずが叶っている彼らが羨ましいだとか、どんなことも背中を押してやることしかできないだとか、幼なじみからの今の中途半端な友情が錆びていくぐらいなら親友でもなんでも越えてしまいたいだとか。そんなことを、自分が思っているとでも?
 鼻で笑って、既視感からくるからだにまとわりつく違和感を押し退けた。


2012.11.28



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