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雑貨屋さんは、当たり前だけどかわいいものであふれていた。リュウジなら多少ファンシーでも平気かもしれないが、風介じゃだめかな。外見的には全然平気なんだけど本人のキャラが許さないらしい。たむろう小学生を避けて路地をぐるぐる。今時の小学生はおしゃれすぎやしないだろうか。


「なんかこう…スタイリッシュでかっこいいけど可愛げある感じ」

「何それ、風介のイメージ?」


くすくす笑うヒロトがアクセサリーを提案してきたので、風介には似合わない面白グッズから目を離した。
アクセサリー。あいつそんなのつけるかなあ。腕まくりと同じ感覚で常備してくれるか存在を忘れるかのどっちかだ。なんていちかばちかで極端なんだろう。

かわいらしい店内に似合わないため息をつくと、星を抱えたかわいいペンギンのキーホルダーをつまんだヒロトも「こういうのは多分どっかにやっちゃうよね」と困ったように言う。何せ風介の持ち物に付けられた子たちはみんな悲しい運命を辿るのだ。

…アイスにしちゃおうかなあ。キーホルダーはアウトだからいつもどおり食品の。いやそれは好きな相手に送るものとしてどうなの。晴矢のとヒロトのとわたしのを合わせたらきっと冷凍庫ぱんぱんだ。もしリュウジもだったら風介のお腹はパラダイスになってしまう。苦い顔をするわたしをやわらかく撫でて、赤い髪が前を行った。とりあえずついていく。アクセのところへ行ってくれるらしい。

晴矢がたまにネックレスをしているのは見かけるけど、意外にも風介がじゃらじゃらしているのはなかなかない。好きそうなのに。そもそもアクセサリーを付き合っていない異性からもらうなんて重かったりとかしないだろうか、歩きながらむくむく沸き上がるのは限りない不安ばかりだった。

今までプレゼントにこんなに悩んだことはなかった。リュウジや晴矢の時はあまりろくなものあげたこともない上にあっさり決まったし、小さい頃の毎年も簡単に決められていたのにどうしてこんな。


「…風介さ、なまえがくれるならなんでも喜ぶよ」

「そんなこと、」

「乙女だね」


耳元に寄ったヒロトの声は、わたしが顔を上げた頃にはするりと離れていた。気に入ったのか指先でペンギンをくるくる回しながら何事もなかったかのような微笑みで、緑の目を細める。…なんだ、今の含みのある声は。乙女。言われるとむずがゆいそれってやっぱり、わたしの心はばればれということに。

ヒロトも風介も昔からよくわからないやつだけど、今またわたしを誘導し始めたヒロトは特によくわからない。生まれもよく知らないけど吉良ヒロト云々の話は知っていたから、生い立ちのせいかもしれないと思っていた。お日さま園ではよくある話だ。
気取られないスタンスを取るのは、当たり障りのないスタイルしかしないのはそのせいかなと。だから逆によくわからない、ただのいい子としかイメージが広がらないのだ。

女子用アクセの並ぶ明るい店内はちかちかしている。ディスプレイされたかわいい時計が、夕方の近いことを知らせて鳴った。ごはん前までには帰らないと、風介のごはん作りを手伝ってやらなきゃいけない。今はいつも通りよくわからないヒロトよりも風介のプレゼントが先決だ。


「なまえ、男子用あっちだ」


やたら手をつなぐ今日のヒロトの手は、なんだかつめたい。






あれだけ悩んだプレゼントは、結局アクセ欄でひとめ惚れして即一件落着した。細身のシルバーネックレス。おしゃれな青い小袋に包まれたそれを持って店を出る。


「よかったね、いいの見つかって」


うりうり頭を撫でてくれるヒロトの携帯には、さっきやたら気に入っていたペンギンがくっついている。今日付き合ってくれたお礼に贈らせていただいた。視線に気付いたのか、彼はポケットから覗くそれを指先でやさしく撫でる。


「風介みたいに旅に出さないでね」

「…うん、大事にする。帰ろうか」

「え、なに今の間」

「あはは、なくすわけないだろってことだよ」


ずっと持たせてしまっているわたしの荷物をよいしょと持ち直し、エスカレーターの方を見るヒロト。ああノーザンのトイレ砂ないんだっけ、でも時間的にちょっとアウトだ。あきらめて問いに頷き隣に並ぶ。
わたしの下がった手のあたりでペンギンがふよふよ揺れた。星を抱えた人鳥。それはヒロトの視界の外で願い事を大事に抱いて、家につくまでずっとじっとこっちを見ていた。


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