※元ネタ:ついった「監禁風介bot」R15気味




わたしの大事な大事な風介はほんとうによく分からないやつで困る。前に髪を切ろうと思って、風介に参考までに「好きな芸能人とかいる?」と聞いた時に返ってきた返事はもうどうしようかと思った。
普通中学2年生にもなればかわいい女優さんとかアイドルとか、そういうのが気になっているころだ。風介はすこし悩んでから、かわいく「昨日のマツコ・デラックスはおもしろかったな」とはにかんだのである。つまりこの子の好みは黒髪ロングパーマか。そういう次元じゃねえぞ。とりあえず照れる要素はどこにあったんだ。

風介は本当にわからない。こわい。わたしのことが大好きで嫌いになんてなれないことは分かる。でも時々、ふわりとどこかに行ってしまいそうなそんな恐怖に陥ることがある。ひとりでふわふわ、何かに気をとられて迷子になってしまったら。誰かに攫われてしまったら。風介に予兆なんてものは存在しない。

そう思ったから、ふたをした。大事なものには鍵をかけるのだ。大切に大切にしまっておけばいいのだ。離れないように首輪をつけて、わたしが帰ってくるまで外さなければいい。玄関までは届かない鎖で縛って、風介をリビングに閉じ込めた。そんなことをされながらもわたしが帰ると嬉しそうに出迎えて怯えひとつ見せない風介も十分おかしい子だけど、今はすこしその精神疾患がありがたい。
その日から風介は、わたしの本当の宝物になった。




大抵ドアを開けると、鎖が届く精一杯のところまで玄関に近づいた風介がおかえりを言いに来てくれる。ひまつぶし用に買い与えたゲームや本を片手に。最初はなにも言わなかったのに最近はひとりが寂しいようで、首輪を外してほしいと言うようになった。いい子におうちで待ってるからって。そんなことを言っていつかふわっと消えてしまうんじゃないの。もぬけの殻になった宝箱なんてそんなものいらない。


「風介はわたしが嫌い?」

「そんなこと、ない、大好きだよ」


大きくなった身体を膝に乗せて、口に口を宛てる。宛てるだけでわたしは動いていないのに、風介のやわらかいそれはむずむずと何回かわたしを食んだ。でも舌までは入れてこない。勝手なことはしてはいけないと調教してあるから。
すこしだけ応えると風介の唇から息が漏れた。舌を入れて、ぐちゅり。流し込んだ唾液も従順にすべて飲み込んで絡めて、舌使いはうまいのにどうしてこんなに口下手なんだろう。わたしが離れたら風介も名残惜しそうに距離をとる。いい子だね。頭を撫でるとドヤ顔になりきれないはにかみが返ってきた。

わたしの風介。かわいくて優しくて淫乱で、どんなわがままを言われてもわたしのことを嫌いになれない。可哀想なのかもしれないけれど、大切なものを誰にも盗まれないようにしまっておくのは誰だってやることだ。だったらわたしが何よりも大事な風介を世界から隠したってなにも問題はない。誘拐しているわけでも虐待しているわけでもないし。キスだけじゃ足りなそうな風介を一瞥。


「いつからそんなえっちな子になったんだろうねえ…」

「……私をそうさせたのは君だ」

「失敬な」


風介が勝手に寂しくなっちゃっただけのくせに。不憫な変態だ。帰宅早々するような元気のないわたしは無視してソファに沈んだ。「なんかコーヒー飲みたいなあ」いそいそと風介がキッチンに立つので少しおもしろくなってしまう。この子をしまいこんでから加速してきている苛め性にもやたらと律儀に応えてくれるから楽しい。
わたしたちって相性いいのかな。ぽろっと呟いた言葉が聞こえたらしい風介が、どうしてその結論に至ったかもよく分かっていないくせに「そうだね」と微笑んだ。


「なまえ、眠いの?」

「んー…ねむいね」

「…今日は、遊んでくれるって」


そんなこと言っただろうか。毎日仕事でぐだぐだになって帰ってくるわたしを、1日中ひとりで待っている風介は昔よりもずいぶん寂しがりになった。マグカップを傾けてテレビの方を見ればWiiのリモコンがしっかりふたつ準備万端。きれいにまっすぐ並ぶそれから几帳面さがにじんでいる。
風介がうそをついてわがままを言う訳がないから、寝呆けて約束をとりつけてしまったのだろう。最強で最高なゲーマー風介とパーティープレイが出来るほど頭が働いていない。いかにしたことか。すこし眉間にしわを寄せてから、ぱちんと思いついた。よし。とりあえずマグカップを置く。

そして首輪を鳴らして風介が隣に座ろうとしたところに、ちょうどおしりが乗るであろうあたりにさっと手のひらを忍び込ませた。肩が動く。
「、なに…?」「んー?遊んであげるんだよ」わあ、弾力きもちいい。ぐらついたマグカップを必死に固定し直して責めるようにこっちを見る青に、とりあえず意地悪く笑顔。ぐにぐにと薄手のズボンとパンツ越しの感触をたのしんで時折指先の方の本命を突く。


「や、っなまえまって」

「ちゅーだけじゃ足りなかったの風介でしょ。ほらコーヒーこぼれちゃうよ」


ただの意地悪だ。浮いてしまう腰を追い掛けられながら風介は必死にテーブルへ手を伸ばした。もうすこし。ことん、陶器が鳴るのを合図に鎖を引けば、風介は否応なしにまたわたしの手の上に収まる。「あそんでってそういう意味じゃっ」「え?そういう意味ってどんな意味?」涙目をすすった。指先にあたる感触はすでに大分硬い。淫乱。言葉のわりになにも抵抗してこないじゃない。デコピンみたいに弾けば元々高い声が一層つやめく。

いじめるために閉じ込めたわけじゃないのに、必死に外界とのひとつだけのつながりに縋るかのような風介を見ていると何だかそそられてしまう。わたしのことが好きというだけじゃない重い愛がかわいらしい。大事なものはしまっておかなくちゃ。鍵をかけて大事に着飾って。世界で一番かわいがらなきゃ。


「ねえなまえ、いやだ、」

「いやならやめるけどいいの?わたしエスパーじゃないからわかんないよ?何してほしいの?」

「…ごめんなさ、っあ」


しゃべらせる気も毛頭ないわたしの指先だけで風介の肩はびくびくと跳ねる。男子のくせによく鳴くな。このまま言えるまで突くだけでいるのはさすがに可哀想かもしれない。すでにいっぱい涙がたまって頬も真っ赤に熟れているのに、やっぱり必死に噛み締める唇もがらあきの両腕もなにも反抗を表さない。外に出たいなんていうのも本当に思っているのだろうか。気を引きたいだけだったりして。

空いていたもうひとつの手で足を開かせたころには、風介のかわいい顔は涙でべしゃべしゃだった。色々と水分の多いステータスである。濡れたそれを口に含んで、笑った。





ゆるんだ首輪をはめ直してベッドに転がした頃には、風介はすっかり寝こけていた。まだ熟れたままの頬が寝顔の幼さを引き立てる。またやっちゃったなあ。ソファの掃除、うん。ちょっと誤算でわたしも疲れてしまったから明日。ごはんを食べさせ損ねてしまったけれどきっと風介は朝まで爆睡してくれるだろう。

隣に倒れ込む。首輪がついたまま寝るのも大分うまくなった風介の髪を撫でた。伸びたから明日切ってあげよう。仕方ないからゲームも付き合ってやろう、大人の責任である。

この子はきっと明日が日曜日だということを覚えていないのだ。明日も一日中わたしが外へ行ってしまうと思って寂しかったのだ。だって風介は、わたししか見えない。
曜日感覚が狂うほど閉鎖的なこの宝箱で、めずらしくお昼まで風介を腕の中にしまい込んで眠った。大事なかわいい風介。大事なものは、しまっておかなきゃ。






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