▼ 爆処理班と
「仕事部屋なんて、そんなに気になります?」
都内(といっても杯戸町や米花町付近ではない)にあるマンションの一室。そこが初穂の仕事部屋である。前のところは爆破されてしまったので以前とは別の部屋である。
「そりゃあ、気になるよー」
「だれだって、自分の知らないことには興味持つだろ。、、、タバコ吸っていいか?」
「ベランダでお願いします」
悪いな、と頭を撫でて行く松田さん。嬉しいけどイケメンにされると別の付加価値があるような。対して萩原さんは機会待ちになった絵本や絵の具など画材をみてしきりに感心している。
「あ、これなに?」
「これはまだ図面から形をおこしている途中のマグですよ」
まだ粘土ですがね。素材が特殊なので、試作をつくって職人さんにちょっとお願いする予定だ。その模写というか見本である。ただ、イメージどおりに曲線がおこせず、納得行かないうえに行き詰まってしまったので、今ちょっと時間を置いてるところなのだ。
改めて手に取って、いろんな角度から見るがまだまだ納得できる形ではなく、やはりしばらくかかりそうだなと苦笑する。
「どんな風にしたいんだ?」
ひょこ、と後ろから覗き込んできたのは松田さんだ。タバコタイムは終了したらしい、ほんのり香りがする。
何故だろう、萩原さんが松田さんを見てニヤニヤしてる。すこし気になりながら、ああしてこうして、と大体のイメージを松田さんに伝えると貸してみと言われた。手渡せば、あれよあれよという間に伝えられたイメージをそのまま作り上げてしまった。
「すごい!イメージどおりになった!」
「相変わらず器用だよねー」
けらけら笑う萩原さん。ニヤニヤしていたのはこれのことだったのか。
その萩原さんの手には、どこから見つけたのか今作り上げてもらった試作品の図面と鉛筆が握られている。
「これが図面だよね?書き足してもいい?」
「?ええ」
さらりと萩原さんは図面に見本の特徴を書き出した。これなら職人さんにそのまま渡しても作れそうだ。
、、、作ったの自分のはずだけど情けない。
「ふおお、、!お二人ともすごい!」
「いやー喜んでもらえたなら何よりだよ」
「そうだな」
嬉しくって仕方ない。さっき、まだまだかかると思って少し落ち込んだところだったんだから。何かお礼を。そうだ。
たしかあの辺りに、、、と部屋の棚を漁り、一番奥に行ってしまっていた目的のものをひっばりだす。
「あったあった。これをお二人に」
引っ張り出したのは2つの箱。
それぞれを二人に手渡して、開けてくださいと促す。
「なんだ?」
「、、タンブラーか?」
「はい、今日のお礼に。ささやかなものですけれど、よかったら」
「ありがとー初穂ちゃん、大事に使うねー」
「サンキュ。俺もありがたく使わせてもらうな」
後日、職場に持っていった彼らがそれが今品薄が続く「えふじはつほ」のタンブラーであることを知らされ羨ましがられ。気になって調べた二人に即日詰め寄られるはめになるとは、初穂は知らない。
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