【DC夢】終身嘘つき | ナノ


▼ 2回目のXDay 後日

結果として、あれは爆弾だった。しかも勘の物申すまま去年のものと全く同じ型。動かさなくてよかった。
萩原さんは勤務中だったのでそのままお別れしたのだが、数日経って彼から連絡があった。
曰く、会わせたい人がいるとのこと。

「あ、おーい初穂ちゃん」

都内某所、待ち合わせ場所には萩原さんと、知らないお兄さん。二人とも顔がいいのでいろんな人の視線を集めている。
あの視線の中に行かないといけないと思うとちょっと気が進まない。今日は非番なのか萩原さん私服でモデルのようだし、お隣のお兄さんも似合った私服をきれいに着こなしているしすごくかっこいい。キラキラしてる人ってこういう人たちに使うんだろうな。
さて、これだけ目立っていれば呼ばれなくても周囲の目線をたどればすぐ見つかったのだけれど、向こうがわたしを見つけるのが早かった。
いつも思うんだけれど、萩原さん私見つけるの上手い。探偵気取りの弟ですら、周囲に埋没する私を見つけるのに苦労するというのに。

「お待たせしました、萩原さん」
「そんなに待ってないよ。それより急にごめんね。仕事とか入ってなかった?」
「この間納品したので、しばらくは落ち着いてるから大丈夫です。テストもそろそろだから仕事ちょっと減らす時期だし」
「え、勉強とかいいの?」
「抜かりないからそれも平気です。それに一番取る気はないから、ほどほどでいいんです」
「その言葉聞いたらなんだか安心するわー。勉強しなくても平均以上は余裕ですって感じ」
「そんなことしたら世の学生敵に回しますよ。日々の積み重ねと言って下さい」
「あはは、ごめんって。努力の子だもんね初穂ちゃん」

頑張っててえらいぞ、と頭をわしわしされる。と、今まで黙ったままのお兄さんが私をじっと見つめていることに気づいた。

「萩原さん、この方が会わせたかった人ですか?」
「お、そうだった。立ち話もなんだし、移動しようか」


移動した先のカフェのボックス席、ニコニコした萩原さんにお兄さんを紹介される。

「初穂ちゃん、こいつ松田陣平っていって、俺の同期で同僚。今日会わせたいって言ったのはこいつのことだよ」
「どうも、はじめまして。工藤初穂と言います。萩原さんとは、去年の今頃もろもろあって知り合いました」
「めっちゃはぶいたねー」
「じゃあどう伝えたらいいんでしょう。、、、知ってるんですか?」
「んん?知ってるよー同僚だし、実はその場に居たんだよ。外だったけどね。こいつとは学校時代からの友達なんだよ。松田、この子が俺の命の恩人、工藤初穂ちゃんだよ。ちなみにお前の恩人でもあるんだぞー」

いまだ私をじっと見つめて、、観察しているお兄さん、松田さんはなんだか渋い顔をした。そもそも、恩人て何?

「え、なんでこのお兄さんの恩人になるんですか萩原さん」
「あの日そのまま初穂ちゃん協力してくれたでしょ?あの時別のところで、あれとおんなじ物をこいつが解体してたんだよ」

曰く、あの日デパート屋上の観覧車に同じものが仕掛けられていたらしく松田さんは警察に届いた犯行予告のもとその観覧車に乗り込み解体を行なったそうだ。しかし、爆弾の画面上に次回の爆破を予告するメッセージが出てきたため、解体を途中でやめてしまっていた。そこに、萩原さんからの爆弾発見と犯人逮捕の電話、ほかに爆弾はないとの情報が入り、解体を再開、無事帰還の運びとなったそうだ。
爆弾の発見、犯人逮捕(犯人はあの変態コートを脱いでおらず、簡単に見つけることが出来た)に一役どころかメインで関わった私が彼の命の恩人ということらしい。

「そろいもそろって、中学生の女の子に助けられるとは思ってなかったけどねー」
「、、は?こいつ中学生なのか!?」
「え、あ、はい。すみません、今ちょっとお化粧してて少しでも年上に見えるようにしています」
「、、、まさか萩原ァ」
「いや?!手だしてないよ?!出さないよ?!」

そりゃ萩原さんに私はどう見たって釣り合わない。萩原さんにはもっときれーでボンキュッボン(死語)のお姉さんがお似合いです。
一通り萩原さんをなじり倒していた松田さんは、はたと気づいて呟いた。

「まさか、こいつがロリコン疑惑の相手か?!」
「わあ、私もしかして有名人ですか?」
「今はそうでもないけど、一時部署内で噂になったんだよー。初穂ちゃんごめんねー」
「そうなんですか。、、、ところで萩原さんほんとにロリコン?」
「生意気な口を利くのはその口かなー」
「あででで顔つかまないで暴力反対!」

ニコニコしながらアイアンクローをかます萩原さん。

「うぐう、痛いぃ、、、」
「そういう冗談はいらないの」
「ごめんなさーい」
「よろしい。いい子にはパフェを奢ってしんぜよう」
「やった!」

すみませーん!と注文をする私たちと、話についていけずポカンと見つめる松田さん。
仲がいいのはとりあえずわかってもらえたらしく、自分の分のコーヒーも注文してこちらに向き直った。

「さっきからじろじろ見てて悪かったな」
「いいえ、気にしていません。気になるのは分かっていますし」

普通、友人に付き合いがなさそうな人物との関わりを紹介されたとき、気になってつい観察してしまうものだと思う。特に私ぐらい年が離れていればなおのこと気になるはずだし、彼は警察官だ。観察するのは職業病ともいえるだろう。

「、、、物分かり良すぎないか?」
「すごくよく言われますね」
「、、俺は松田陣平。先日は世話になった。、、、怖かっただろ、こいつのせいで最後までかかわらせてしまって悪かったな」
「、、そのことについて謝罪はいりません。悪いのは犯人ですし。確かに、少し怖かったですけど、萩原さんはちゃんとすぐ来てくれたからいいんです。それに、そのおかげでお兄さんが元気なら頑張った甲斐がありました」

そういって笑ってやれば、虚を突かれたのか驚いた顔をした後ため息をつく松田さん。萩原さんはやっぱそうなるよね初穂ちゃんはとカラカラ笑っているし、なんなんだろう。

「いつもああなのか?」
「んー、本人に訊いたら今まで巻き込まれすぎてちょっと感覚がおかしくなってるらしい」
「ちょっと、じゃないだろ危機感どっかいってんじゃねえのか」
「あー、なんか危なっかしいよね。わかるわー」

お待たせしましたーと明るい声と一緒にパフェやコーヒーが届き、私の注意はそちらに奪われていて、目の前の二人はこそこそ何か話しているけれど気にしていなかった。聞かなくていい話なんだろうな、きっと。
ただ、うまうまとパフェを食べ勧める私を見ている二人の目がすごく生ぬるかったのを覚えている。

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