友情 1
俺の親友がその性癖に気がついたのは、小学校の高学年になったころだった。
男しか好きになれない。そう真剣に相談されて、俺はなんて答えたら良いか分からなかった。
俺も小学生だったし、今だったら他の答えの仕方もあったかもしれないけど、俺は『大きくなったら治るかもしれないよ』と言ってしまったのだ。
きっと悩んで悩んで親にもいえなかったことを俺に相談してくれたのに、まるで病気みたいに扱ってしまったのだ。
そのせいで、春哉はゲイだと他人に知られるのが怖くて堪らなくなってしまったようだ。俺のほかには、女が好きだというように振舞って、同じ性癖のやつらにも言えずにいる。
この学園にはたくさんの同性愛者がいて、知られてもおかしく思われない。なのにどうやっても知られたくないようで、告白されても男に興味がないで通していた。
「なあ……ここでなら、別にお前がゲイだって知られても大丈夫じゃないか?ここでは、それは特別じゃないし」
「ここでは特別じゃなくても。外の世界じゃあ、偏見で見られるよ。知ってるだろ?親にばれたら、どんな目で見られるか」
春哉の家は保守的で政治家なんかしているから、息子がゲイなんて世間にばれたら親からどんなに怒られるかは目に見えるようで。学園だけの遊びでは、すまないのは確かだ。
「う〜ん……分かるんだけどな。でも、誰にも言えないままじゃあ、恋人もできないだろ?ずっと秘密にしていたら、ずっと一人のままになっちゃうじゃないか」
せめて同じ趣向の持ち主にくらいは秘密にしていなくてもとは思うんだけど、どこから漏れるか分からないから無理だという。こいつくらいの家柄になれば、それをネタに大金揺すろうって輩が出てきてもおかしくないから、心配も分かる。
「ともがいるから良い……」
春哉はふて腐れたようにそう呟くと、俺に抱きついてきた。
「とも、したい」
「え?また?」
「またっていうほど、してない」
もう2回やっているんだけどなあ。と思いつつ、こいつが甘えられるのも、嘘をつかないでいられるのも俺だけなので、断れない。
「いいよ……来いよ」