「愛」 高村視点 3


「蛍……愛しているよ」

「り、つ」

今、なにをしているんだろうか。俺は。

目の前の愛していると言う男は誰だっただろうか。

りつ、そう呼ぶように言われ、すぐに名前を忘れてしまうけれど、俺を大事にしてくれる人だってことは分かる。

俺が名前を忘れると、律って呼ぶんだよと、優しく教えてくれる。

時々痛いことをしてくるけど、俺のことを好きだって言ってくれて、優しく笑ってくれるから、痛いけど我慢する。

俺のことを好きだから、することだって。だから俺は嫌じゃない。


なんていう名前だったっけ……そんな顔をしたからだろうか。律だよ、と言った。


りつは優しい。でも、りつが飲むように言う薬は好きじゃない。たくさんあって、飲むように毎日渡されるけど、飲みたくない。でも俺は病気だから、俺の病気を治すために必要なんだって言うから、飲んだ。

いつも飲ませてくれるけど、ある日、飲んだふりをして捨てた。だって、その日は喉が痛くて、薬を飲むのがもっと嫌だったから。

次の日も、次の日もそうして。りつは気がつかなかった。

だんだんぼんやりしていた頭がはっきりしてきて。

何かがおかしいと思った。



「蛍、愛してる。好きだよ……ずっとこのまま、俺の物でいてくれ」

俺はいつものようにただベッドに横たわっていて、りつの熱いものを受け入れている。

「はっ、んん」

「蛍、名前を呼んでくれ。律だよ?覚えているか?」

「りつっ…」

ぐちゃぐちゃと、粘着質が音が室内を満たしていた。


「りつ」

俺はそんな風に呼んでいなかったはずだ。立科、そうとしか呼んだことはなかったはず。


前はこんなのではなかったはずだ。

固くこわばる体は血を流し、激痛しか感じなかった。


蛍なんて呼ばれていなかった。高村と、愛憎の篭る声でそう呼ばれていたはずだった。

「いやだっ」

串刺しにされている俺は、弱弱しい、拒絶しかできない。

「痛いか?もう痛くないだろ?蛍、何が嫌なんだ?いつも気持ちが良いって、言ってくれただろう?嫌じゃないって」


立科の性器で体内をかきまわされる。余りにも禍々しい感触に震えてしまいそうになるが、嫌だって叫びたいが、知られてはいけない。俺が立科から渡された薬を飲んでいないことを。

だから、立科に犯されていても、嫌だなんて言ってはいけないんだ。気ずかれたら、もっと薬漬けにされて何も分からない状態に戻ってしなう。


なんとかして、立科(ここ)から逃げ出さないと。その方法を探さないと。だから、抵抗してはいけない。

そもそも、俺は抵抗できないけど、嫌だと、ただそれだけしか言えない性質だ。


だけど、今はそれさえ言えない。怪しまれてはいけないのだろう。だから、きっとぼんやりとしか覚えていない俺でいなければいけない。


だが、俺の身体はどうしてしまったのだろうか?

絶望に染まる。

立科の物を最奥まで容易に飲み込んでしまう、変貌振りに自分で自分の身体が信じられなかった。

以前も何度も身体を征服された。それは覚えている。

何度も血を流し、惨めな思いで手当てした時もあった。

なのに、今は俺を何度も傷つけた高村の性器を、俺の下部は喜んで咥え込んでいるのが、自分でも分かった。

裏切られた想いだった。俺の精神に反して、身体は立科を受け入れていた。


「あっ、んんっ」


意に反してもれ出る声は、紛れも無く快楽の声だった。

分かる。俺はこいつに犯されて、感じているのだ。この身体の奥で立科を喜んで迎え入れている。

止めてくれと、これ以上俺をおかしくしないでくれと、叫びたかった。


立科の劣情を受け止めた身体で、頑張ってくれてありがとう、良い子だって撫でられた。母はずっと昔に一度だけしてくれたことがあった。俺をたたいた後、ごめんね、悪いお母さんでごめんって抱きしめてくれて、撫でてくれたことが。たった一回だったけど、あった。

その後に捨てられたけど。

あの時だけだった。母が優しかったのは。

それ以来、こんなふうに優しく触れてくる手はなかった。


立科、止めてくれ。そんなふうに俺に触れないでくれ。


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