「年貢」中編
でも、ちゃんとあいつは約束を守った。俺の前に現れない。隣のクラスだけど、偶然でも会わないようにしているのか、見ることもない。仕事も副委員長がもってくるしで、平和だ。
毎日土下座されることのない日々がこんなに清々しいものだったとは知らなかった。
「ちょっと、会長!大変大変」
会計が青ざめた顔で走ってきた。
「何かあったのか?」
「あったって……委員長が自殺したんだって!」
「え?…自殺?」
あいつが死んだ?
「死んだのか?」
「飛び降り自殺したって、さっき救急車で運ばれていったらしい。生死は分かんないって……」
「俺のせいか?」
俺が、会うな、見るな、視線すら合わせるな、なんて言ったからか?
「会長のせいって言いたくないけど、間違いないよ。だって、委員長がどんなだったか知らないでしょ?興味なかっただろうけど、委員長……食事もろくに食べられずに、吐いてばっかりいたんだって。仕事もできるような状態じゃなかったから、副委員長が会議とか出てたでしょ?」
勘弁してくれよ。俺のせいで自殺したなんてことになったら。
あいつと初めて会った時のことを思いだした。まだ可愛い顔をした美少年だった。今は見る影もないほどゴツくなってしまったが。
一緒に生徒会もやった。遠足も修学旅行も、思いだせばあいつといなかった日々はない。