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「え?……ちょっと、酷くない? 選択肢ないの?」
ガチホモ君のホモターゲットになるなんて。
「諦めろ」
「須藤が命を張って守ってくれているんだ。お前もケツを捧げろ」
味方がいない。
「俺を拒絶するなら、ここを出て行く」
っていうか、出てってもらったほうがいいでしょ。
「じゃあ、出てってくれ」
「おい!何を言うんだ!須藤がいなくなったら、どうやって生き抜いていけっていうんだ!?皆瀬、お前なんかよりも須藤のほうが何百倍も役に立つんだ。須藤は出て行かせないからな!」
「そうだそうだ!!」
「……まあ、俺も実は出て行く気はない。恵のことが心配だからな……出て行くという選択肢がない以上、やはり恵とセックスをする」
「やだよ!ホモになんかなりたくない!」
「別にホモになる必要はない。ただ、俺に愛されて、身体をくれれば良い。この状況だ。心までくれと贅沢をいうつもりはない」
「ほら、須藤優しいじゃないか! お前尻捧げるくらいしか脳ないんだから、もったいぶらずにやれよ!」
「そうだそうだ! お前のイケメン面はゾンビ世界じゃ役に立たん! せめて須藤の性欲処理くらいしてやれよ!」
世の中に神はいません。余りにも酷いクラスメイトたちの裏切りっぷりには涙もでません。
「不公正だよ!何で俺だけ!!!……せ、せめて5人で交代制にするんだったら、俺も涙を飲んで諦めるよ」
俺だけ尻を掘られるという事実に、どうしても納得がいかない。ここには俺も含めて5人も男がいるんだぞ?
交代で平等に尻を掘られるって言うんだったら、仕方がないと思う。しかし、俺だけとはひど過ぎる。
「残念だが、須藤の好きなのは皆瀬なんだ。俺たちなんかには興味がないんだ。なあ、そうだろ?須藤!」
生き生きと、俺たちは須藤の好みじゃないと胸を張って言い張るクラスメイトたちに殺意を覚える。
「そのとおりだ。俺は男なら誰でもいいわけじゃない。恵だけだ……恵を愛している」
「あ! 俺、ベッドの用意をしてやるよ! 初夜だもんな! 固い床の上でやるのは腰が辛いよな」
そう言って4人がマットを何枚も重ねてベッドもどきを作ろうとしていた。おいおいおいおい。
「……体育館のど真ん中でやれっていうのか?……」
っていうか、いくら広くても体育館は一部屋?だよね。皆一緒にいるよね? 衆人環視の元でやれって?
「あ? 恥ずかしい? ならもっと隅っこに置くか?」
「同じ空間なのには変わらないだろ! お前たち自分に害がないと思って無茶苦茶言うなよ!」
「じゃあ、体育倉庫とかどうだ?」
「ステージにベッドを作って、幕で覆えばいいだろ?俺たちセックスの間、反対に体育倉庫閉じこもってやるから」
「今日はシャワー制限なく使っていいぞ?存分に身体キレイにして初体験に挑め!」
体育館には貯水用に雨水を貯めるタンクがあります。なので水にはおそらく困らないでしょうが、念のため節水を心がけてシャワーは1回5分以内。2日に一度という取り決めがあったんです。それを俺に解禁してくれるそうです。
え?嬉しいかって?嬉しいわけないだろ!
「言っていくけど、俺たち4人が見張っているから逃げようとか思うなよ?」
シャワールームに放り込まれて、たぶんドアを見張られています。シャワールームには窓があったが、ゾンビが侵入しないために、補強してあり出入りは不可能だった。
もはや一言も発したくない気分だったが、最後の最後に懇願をしてみた。
「俺たち5人いれば、須藤を倒すことができると思う。須藤をゾンビの餌にすれば平和になる」
「何馬鹿言ってんだ!5人いたって勝てるとはおもわねーし!ここの食料がなくなったり襲撃されたりする可能性を考えれば、お前よりもよっぽど須藤のほうが価値があるんだよ!良いから黙ってセックスして来い!」
頑張って頑張って頑張って、嫌がったのだが、誰も味方のいない状況では逆らうだけ無駄だった。
外の世界もゾンビで地獄だったが、仮初の楽園であるはずの体育館の中は更に地獄だった。
俺は須藤の尻奴隷に成り果てていた。