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取りあえず、ヘリポートから壁の外を見ると……船がたくさんあるし、重機とかも置いてある。
あとは、鶏?もたくさんいるし、ヤギや羊みたいなのとか、牛までいる。
「窓がない部屋とか勘弁して欲しいよ」
要塞の中に入ると、なにやら作業をしているお兄さんがそうぼやいていた。
「ゾンビの世界になったら、窓が無いことに感謝をするかもしれないぞ」
「そうは言いますけど、社長本当にゾンビの世界になんかなるんですか? まあ、ゾンビの世界になったら衣食住を保障してくれて、そうじゃなかったら10日で100万くれるっていうから来たんですけど」
あ、この人、正親の部下でシステムエンジニアをしている人だ。この人も連れて来たんだ。
「あと数時間で分かる。亜季斗、紹介しよう。あっちにいるのが、医療メンバーたちだ。各分野のエキスパートだ」
20人くらいの男性で、外科や肛門科、内科に皮膚科、泌尿器科や薬剤師や、工学士、ウイルス学者とか覚え切れなかった。
「あっちにいるのは、技師やエンジニア、機械工学など。この要塞のメンテや維持をしてくれる」
同じく男性ばかり。
「外にいるのが、農業の専門家や畜産関係。あとはパイロットや傭兵など」
全部で100人くらいいるらしい。す、凄い。
「全員、男の人だよね。女性は選ばなかったの?」
「皆ゲイだ」
「……ゲ、ゲイ?」
「そうだ。女は邪魔だ」
「そんなことないだろ! 優秀な人だっているし」
「女は生理になるし、妊娠するし、こんな世界じゃあ、いるだけ邪魔だ。女を取り合って諍いになると面倒だしな」
「でも、皆ゲイだって言うんだったら、男を取り合うっていう可能性も!」
女性が好きじゃないのなら、男性を取り合って血みどろの戦いになる可能性だってあるんじゃないのかな?
「そういう心配が無いように、ここに選んだエキスパートたちの人選に一番の時間を割いた。まずは天涯孤独であること、精神的にタフであること。ゲイであり恋人がいること。ここにいる皆は恋人連れでやってきている。しかも恋人一筋で浮気するような軽いゲイはいない。お互い一生の伴侶だと誓い合っている、そういうやつらしか入れてない」
筋金入りのホモを選んだって事?
「皆さん、納得してきたんですか?」
「まあね。本当にゾンビの世界になるって言うんだったら、安全な要塞に囲ってくれるっていうんで、恋人連れなら文句ないし。そうじゃなくっても高額の給料保障してくれたから、バカンスのつもりで来たんだ」
それなら……良いのかな?
「さてそろそろ15時だ。東京はどうだ?」
「アメリカもロンドンも東京も北京も、すでにゾンビパニックは始まっています」
コントロールルームらしき場所に連れられていると壁中、液晶だらけで、世界各国の様子が流れていた。まあ、速報が入るくらいだから、その前にはゾンビは確認させていたんだろうなあ。爆発的に増えたのが15時前後だってだけで。
「うわっ……ひでえ。こりゃあ、屋外にいたらひとたまりもないな」
「凄い感染速度。数秒で倍々ゲームのようにゾンビが増えていっているし、ノロノロ型じゃないから、逃げられないなあこれは」
「屋内にいても無理みたいだね。ガラス破って進入しているし。どのくらい生き残れるんだろう……」
たった数分見ているだけで、衛星で送られている映像はゾンビだらけになっていった。
あそこにいたら俺は夢のようにゾンビに噛まれて死んでいたんだ。正親のお陰で今生きている。
「正親っ……」
「何だ怖いのか? 大丈夫だ亜季斗。お前のことは俺が守るから」
「うん……」
正親が俺を抱きしめてくれて、安心させてくれた。正親がいるから俺平気だよ。
ちなみに、俺たちだけじゃなくってホモの恋人さんたちも抱き合って、俺が守ってやるからとかしていた。でも、俺はホモじゃないから。