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それから俺はゾンビに世界になったら入所が困難だと思うものを夜まで買いあさった。
正親がたぶん、必要最低限な物は用意してくれているんだろうけど、でもほら、塩とか砂糖とかはあってもオリーブオイルとか、ドレッシングとか醤油とか味噌とかは怪しいと思うし。
味の無いものを食べたくない。たぶん、ゾンビの世界になったらとても贅沢な事を言っていると思うんだけど、でも、やっぱり味があるないとじゃ大分違うし。

俺は趣味で味噌や醤油を自家製しているし、ドレッシングとかの調味料も既製品を買わない。
お金があるからってバイトを正親はさせてくれなかったので、暇な時間を料理に費やしたり、漬物漬けたり、そういうことをしていた。正親もそういうことならと、職人さんに弟子入りまで融通してくれて、大学出たあと、自然食のお店でもやろうかなと思っていたくらいなんだ。
なので、自分で味噌や醤油が作れる用意もして、あとはAVも持参した。正親に見つかったら捨てられちゃうけど。昔から正親は潔癖症で、彼女も作らず、俺がAVを見るのも嫌っていた。

そして期間限定のポテチを買い集め、その夜は寝た。流石にゾンビの世界になるから緊張して眠れないかなと思ったけどスッキリと眠れた。
我ながらのん気だなあと思わないでもないけど。
正親は島に行っていて、ちゃんと必要物資があるか、足らないものは無いかのチェックに行っている。

それにしてもあと数時間でゾンビの世界かあ。できれば色んな人に忠告してあげたいけど、誰も信じてくれないだろうし。正親以外の誰が、ゾンビの世界になるなんてこと信じてくれるんだろうか。
俺の両親だって信じてくれなかったというか、気味悪がって俺を捨てたのに。段々俺のせいで仲が悪くなっていった両親は、離婚の際に俺を施設に預けた。まあ、その帰り道、両親は事故に会い死亡で、どのみち俺は施設行きになる羽目だったけど。
両親でさえ気味悪がって信じる以前の問題だったのに、正親は施設であった頃から、正夢を何も疑わずに信じてくれた。他人に言ったら馬鹿にされるか虐められるかのどちらかだったので、俺は正親に出会ってから正親以外に言わないことに決めていた。

だから他人を見殺しにすると分かっていても言いたくはない。頑張って生きてくださいとしか思えないんだ。

「亜季斗、準備はいいのか?」

「おかえりなさい〜って、もう行くの? 今帰ってきたばっかりだろ?」

「お前の予知が外れるとは思えないけど、大学とここでは発生時間が違うかもしれないし、できるだけ危険からは遠ざけないんだ」

危険と言っても、このマンション(ビル)要塞なんだけど。
このマンションは最上階は住居で、住人は俺と正親だけ。その他のフロアは正親の会社だ。
そしてゾンビの世界になると分かった昨日、マンションの外壁を全て鉄板で塞いでしまった。しかも何重にも。これじゃあ、流石の物量押しのゾンビでも入って来れないだろうし。屋上はヘリポートになっているので、そこから出発するみたいだ。
ちなみにここにも大量の物資が置いてある。何かあったら島から取りに来る用にって。

「それにしても流石正親だよな。たった一日で、無人島で生きていけるようにするなんて!」

「あくまで必要最低限だ。他にも足らないものはたくさんあるだろうし、集め初めたら町ができるほど必要なものは多い。生きていく事を最重要にして集めたから、現代生活の快適さは求めるのは無理かもしれない」

まあ、俺の予知が直前だったのもあって、正親といえでも全てを完璧にというのは無理だよね。
でもこれからこの世界に取り残される人たちに比べれば多大なアドバンテージがあると思うけど。

「せっかく電子書籍とか漫画ダウンロードしたのに、やっぱり電気なんかないよな。この充電で最後かあ」

「あの風車を見ろ、風力発電だ。それに太陽光発電もある。贅沢は出来ないが、漫画を見るくらいの電力には不自由させない」

ヘリの上空から島が見えてくると、確かに風車らしきものが。

「結構大きな島なんだな〜無人島って言うからもっと小さいと思ってた」

半径数キロくらいある結構大きな島だった。その中心に要塞らしきものが見えてきた。そこのヘリポートに降りるんだろう。

「要塞っていうからどんなかなと思ったけど……本当要塞なんだ」

窓が無く、核爆発が起こっても乗り切れるような数メートルある謎の鉄板で作られた外壁で作られた要塞。しかもその周りには10メートルの壁で覆われていて。

まず壁のせいで中に入るには困難を極めるだろうし、家は家で、窓1つないから進入不可能。入り口も何重にもなっていて、壊してはいるとか不可能だ。もしこの島にゾンビが流れ着いても、まあ、無理なんだろう。
しかも地下には核シェルターもあるらしいし。



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