私はお茶会に参加するごとに、不思議な連帯感を感じるようになっていっていた。
まず境遇がみんな似すぎている。
唯一の両思いカップルだと思っていたクライスが、それこそかなり酷い目に会って結婚していた事を聞き、私達はやはり友人だったのだと思った。
結婚する前、私が一番酷い目にあっていたかと思っていたが、クライスには負けるかもしれない。誘拐されて陵辱されて監禁されて、私もかなり酷い目にあっていたのは確かだが、クライスの場合は精神的にかなりキツソウな感じがした。
私もエルウィンも好きな男がいたわけではなかったが、クライスの場合は……好きになってしまった男も最悪だったかもしれないが、当時はそれを知らない。
好きな男の弟に無理強いされ孕まされるのは、しかも精神制御魔法で好き勝手にされるのは、私でも勘弁して欲しいと思う。

しかしながら一番上手くやっている夫婦のようにも見えて、不思議だ。

逆に一番酷い目にあっていないはずのエルウィンが一番不憫に思えてならない。だって夫がああだから。

やはりTPOを弁えている理性的な夫ではないと、日常生活は上手くいかないだろう。

その点ユーリは世間的に満点だし、ギルフォードも外面は良い。
クライスのところは理想の夫婦に見えるほどだ。

「なあ……ちょっと聞きたいんだが」

「なんですか?」

「なんだ?」

「夫婦生活はどうしている?」

「………」

「……」

「…週何回くらいだ?」

同じ境遇のメンバーにどうしているか聞きたかった。
私だってギルフォードと結婚しようと思ったのは、帰国する際にこのままだと処刑……なので、もう仕方がなく結婚しただけであり、その後の夫婦生活のことなど全く考えていなかった。
するつもりもこれぽっちもなかった。

「俺はしていません!」

「一回もか?」

「はい。いくら隊長に懇願されようが無視しています。もうサラを産んだ事で俺のノルマは達成されました。今後一生することもないでしょう」

相変わらずエルウィンが強いな。10才も年が違う夫婦なのに完全にエルウィンが仕切っている。

「泣かないのか?」

「泣いていますが関係ありません。無視しています」

魔法でも剣でも武術でも完全に隊長が勝っているはずなのに、気迫だけはエルウィンが勝っている。無理強いすればすぐにでもできるだろうに、あの隊長は惚れきった妻に無理強いはできないらしい。

「クライスのところは?」

「……」

「おい」

「……ユーリの好きなだけ」

「ユーリの好きなだけやらせているのか?」

俯むいて私の顔を見ないように、ポツリとクライスは呟いた。

「仕方がないだろう! 俺はユーリには勝てないっ! 魔法をぶっ放しても平然としているし、殴っても次の瞬間には治っていて、笑いながら押し倒してくるんだ!」

「……それは、第三子も遠からずだろうな」

「できにくいから、そうすぐには妊娠しない。それだけが救いと言えば救いだな……」

クライスは、昔から何でもできた。名家の子息であり、魔力も非常に高く、聡明でカリスマ性も高く。次男ということもあり、いずれは同じように名家に婿に行くのだろうと。
そのクライスを自由に出来る男などそれこそユーリくらいのものだろう。そんな男に捕まってしまったクライスに、同情とともに、親近感を覚えるのだった。

「お前のところはどうなんだ? エミリオ」

「うちも……ギルフォードがしたいだけ……」

疲れていたり体調が悪いときは、ギルフォードはそれを敏感に察知して無理強いはしない。
しかしそうでない時は、抜群の運動神経を駆使して私が逃げられないように押さえ込んで、事を遂げられてしまう。
魔法は使えないのでそうすると純粋に肉体勝負となると、私はギルフォードには勝てない。

「分からないんだ。いつの間にか、甘えるように圧し掛かってきて『しよう?』とか『愛している』とか、甘いことを言いながら強引に人の服を剥いで、どんなに罵詈雑言を言っても気にしないで事を遂げるあの能力は何なんだろうか……?」

「分かる……こっちがどれだけ拒否をしても、全く気にしないで、強姦するのを悪いなんてこれっぽっちも思っていない、あの精神。同じ人間なんだろうか?」

「しかも年下だからだろうか? 甘えるのが上手いんだ」

「分かる……可愛いふりをして、甘えてくるんだよな。 何故だか分からないけど、拒否をしているこっちが虐めているようなそんな雰囲気にもするのが上手い」

「しかも世渡りが上手いから、虐げようとしているこっちが悪者のように家族からも見られるんだよな」

部屋の片隅において置こうものなら、父上や母上が怒るだろう。
ずっとギルフォードとの結婚など反対していたのに、ギルフォードを連れてきてしばらく経ったころだろうか。
いつの間にか母上は懐柔されていて、父上もギルフォードの領地経営手腕にほれ込んでいて、孫が生まれた瞬間にも素晴らしい婿だとギルフォードを歓迎していた。

「お前のほうこそ、第二子はすぐなんじゃないのか?」

「いや……ユーリに子作りの権限があるお前や、やったら最後すぐできてしまうようなエルウィンとは違って、子どもを作る権限は俺にあるから」

ギルフォードに子作りの過程はできても、子作り自体は俺は作ろうと思わない限り無理なのだ。またあの宮廷魔法医をつれてこられたら話しは別だが、流石にそこまではしないだろう。

結婚できた今、あえて子どもを作る事を強行する必要はギルフォードにはないからだ。

「でも、あと3人は産んでおかないと、エミリオ分隊長の家は安泰じゃないですよね?」

「いや…? なんであと三人なんだ? ギルバードがいるので、もう良いんだが」

「だってまずその1、家の跡取り その2、王妃になった場合 その3、リエラ国王になった場合 その4、家出人が出た場合(スペア)の4人は子どもがいると思いますよ?」

まだ王妃を諦めていなかったのか?
ルカ王子はアンジェと結婚したいといっていたのに。
しかしまあ、あの二人は実際に結婚する事は難しいので、エルウィンとしては諦められないのだろう。

確かに、王家から命令が下れば、王妃に差し出す必要がある。それで一人は必要だ。
そしてもしリエラ国王になりたいと言い出す子どもがいたら、また一人いる。家の跡取りは必要だし、私の兄のように駆け落ちする子がいるかもしれない。
本当だ。カウントしたら最低三人は必要だ。安泰を目指すならエルウィンの言うように4人はいないと安心できない。

「エルウィン、せめて王妃は諦めてくれ……私もこれ以上産みたくはない」

「それでも、やはりもう一人は最低必要だろ? いや、もう二人いるな」

「だったら、クライスのところだって同じだろ!? 王妃にと王子が切望している長男がいるんだ。だったら予備を含めてあと一人いるな。いや、エルウィンだってルカ王子が独身や子どもが生まれなかったときに備えて、最低後一人は王子は必要だろう?」

要するに皆まだ子どもが足らないということだ……

恒例のお茶会で、最後はお互い自滅して分かれるのが定例になってしまっていた。





(もし、ルカが独身で過ごしたり、サラがお嫁に行ったりしたら、また王家に跡継ぎがいなくなってしまうか……もう一人必要なのだろうか?)

「隊長……もう一……いえ、何でもありません」

(もう一人必要でしょうか? なんで言ったら喜び勇んで、作成しようとするに決まっている!!! まだ10年後でも産める年齢だから、今は考えない! ただでさえ、俺に似た子どもを産む約束をしたのにと、泣きつかれているんだから)



(もう一人必要かって……俺は考える間もなくユーリに問答無用で孕まされるだろうから、俺が考える必要もないだろう)

「お茶会で三人目が欲しいって話していたね? 今度こそクライスそっくりの子が俺も欲しいな。 すぐには無理だろうけど、できるまで凄く頑張ろう?」

(何でお茶会の会話を知っているのか、疑問に思ったら負けだ)


(二人目……ずっといらないと言っていたのに、私から作るか? とは言えないな。ギルバードがいれば……王妃にもリエラ国王にもやらなければ、これで大丈夫な……はずだよな)

「ねえねえ、エミリオ……この家のためには、4人くらい子どもがいたほうが良いんじゃないかって、お義母様やお義父様もおっしゃっていたよ。もっと孫の顔が見たいって。僕もエミリオに良く似た子が欲しいし……せめてもう一人産んで?」

(なんかタイミングが良すぎじゃないか? 何故お茶会の会話とこれほど似ているんだ? それに産んでと言われても、無理矢理孕まされたらギルフォードの責任に出来るけど、今回は俺が妊娠するようにコントロールするほうだし……無理強いしてくれたほうが楽なのに。俺からは二人目は作れない!)

「聞いてる? エミリオ」

「……無能が」

「え? 何で??」


END
エルたんクライスたんエミリオたんのそれぞれのお茶会が終わりました〜
エミリオたんはツンデレ奥様



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