「可愛い……」

「隊長……その鼻血と股間をどうにかして下さい。みっともないです」

私はまさしく恋に落ちた。それも猛烈な一目ぼれだ。部下の一人として今年の新兵士として入隊してきたエルウィン。
なんだか副隊長に色々注意されたが聞いてもいなかった。よしエルウィンはもう私の嫁だ。さっそくプロポーズを。

「振られた……」

「それは仕方が無いですね。入隊初日に、除隊して嫁になれと言ってYESという馬鹿がいたら見てみたいです。しかも彼は珍しく異性愛者らしいですし。好みのタイプは守ってあげたいような可愛い女の子らしいですし。隊長とは正反対すぎて、何の見込みもないでしょうね」

弟の嫁の辛らつな言葉に、愕然とした。別にコイツが辛らつなのは何時ものことなのでそんなことにショックは受けない。
ショックを受けたのは異性愛者というところだ。何てことだ。この国では0.1%ほどしかいないと言われている、あの異性愛者なのか?
軍人ともなればほぼ100%の割合で、同性愛者とまで言われているのに。そんなレアな男エルウィンに惚れてしまった私は物凄くかわいそうだ。

「どうしたら良いんだ。はっ……まさか、私の可愛いエルウィンは4人部屋で寝起きなんてことは!?」

「当たり前でしょう?新入隊員なんですから、個室の訳は無いでしょう」

「そ、そんな」

あれほど可愛くて男の扇情を煽るようなフェロモンを出しているエルウィンが雑魚部屋で寝起きなんてしていたら。他の三人によってたかって、処女を散らされてしまう!

『あっ、俺は隊長に処女を捧げたいから、止めてっ』
『残念だったな、エルウィン。お前のエロい顔が悪いんだよ』

「妄想はいい加減にしましょう。うちの隊にそんな不埒なことをするやつは、隊長以外にいません。見つかったら問答無用で死刑なんですから」

「こうなったら、私がエルウィンの処女を貰わないとっ……一秒でも早く、最速で、嫁に迎えないと……」

「聞いているんですか?……こんな男が未来の国王かもしれないと思うと、涙が出そうです」

しかし何度真摯にプロポーズしても、俺なんか隊長に相応しくありませんから!と逃げられてしまう。
エルウィンのように美しく可憐で慎ましい男など他にはいない!私に相応しい男はエルウィン以外にはいないというのに。

確かに私は次の国王になる可能性は高い。国王陛下はもう60近いが、王女以外のお子がいない。この国は厳格な一夫一夫(一夫一妻)制なので、王女しか生まれなかったが、他国のように側室など論外なため、王子に恵まれないまま国王も王妃もお子を儲けるのが難しい年齢になってしまった。
このままいけば、初代国王の弟が始祖の我が公爵家に王位が回ってくると誰もが思っている。王女には王位継承権がないため仕方が無いが、もしこの継承権のせいでエルウィンにプロポーズを断られるのだったら、王位など欲しくも無い。

しかしまわってきそうなものは仕方が無い。来るかこないか分からない微妙な今でこそ、エルウィンを落とすチャンスがあるのだ。もし正式に王太子などに任命された日には、あの控えめなエルウィンが余計逃げてしまう。今しかないチャンスなんだ。

なのに……

「あの女はなんだ!?」

「どうやらエルウィンの実家の男爵家の親戚の令嬢のようです。入り婿の話が来ているようですね……お見合いでしょうが、ほぼもう決まったも同然らしいですよ。隊長とよりはよほどお似合いじゃないですか?」

違う!エルウィンは女を愛するよりも、男(私限定だ!)に愛されるほうがあっているはずだ!しかもなんだ!今にもつぶれるような騎士爵家に婿入りなんて!
私の嫁になれば、どんな贅沢でも思うがままだというのに!

「潰す……どんなことをしてもこの見合いの話を潰してやる。いや、見合いというよりも、その女の家を潰したほうが早いか……」

その女の家も潰したいが、エルウィンにそんな話をもっていったエルウィンの一族も潰したいほどだ。しかしそんなことがばれたらエルウィンには嫌われるかもしれない。
したがって、私はその縁談が円満に壊れるように計らった。その女にもっと金持ちの貴族の男を斡旋してやったのだ。

エルウィンはがっかりした顔をしていたが、これも私とエルウィンが幸せになるために、訪れた試練と思えば良い。私と結婚したほうが絶対に幸せになれるからな。




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