ところが女との見合いを潰したのに、相変わらずエルウィンは私と結婚すると言わない。
将来の王妃なんてありえません、と泣いて辞退するのだ。地位や権力を持っていることは仇となっている。

「こうなるともう既成事実を作るしかないな……エルウィンは古風だし、処女を私に捧げれば、大人しく嫁になるに違いない」

この国の風習なら、エルウィンは私に抱かれさえすれば大人しくプロポーズを受けるだろう。翌日には結婚し、できれば専業主婦にしたい。勿論家事はメイドにやらせるので、エルウィンは私に抱かれ愛されるのが仕事だ。

「既成事実ってどうやって作る気ですか?……っていうか、もうエルウィンが可哀想だし、そういう妄想は心の中だけにしておいて下さい。俺も聞きたくはありません」

「なに、未来の義兄弟になるんだ。遠慮するな」

弟の嫁と兄の嫁。仲良くして貰わないといけない。

「それに既成事実は……どうやって作るか、か。やはり言っても聞かないので、腕力か権力に物を言わすしかないだろう。いや……権力は卑怯だから、ここは純粋に腕力で…」

「兄弟揃って、ろくでもないことしか考えないというか……腕力で強姦なんて最低の男のすることです!処女を奪えば結婚に持ち込めるなんて、野蛮な考えは止めてください!やるほうは良くても、やられるほうの身になって考えて下さい」

そうだな……あの愛しいエルウィンを強姦するなんて、そんな酷いことはしてはいけない。

エルウィンとの初めての夜は、合意でないといけない。強姦なんかしたら傷つくだろう。愛するエルウィンだからこそ、大事にしなくては。

「ちゃんと合意でやる」

「……それでも、やること前提なんですね」

「少し強引にいかないとエルウィンはYESと言ってくれないからな。大丈夫だ!誰より幸せにする自信がある!」

呆れた様な副隊長(弟の嫁)の抗議の声を無視して、私は実家に戻った。実家の城から王城に通えないことも無いのだが、愛するエルウィンを守るために同じ宿舎に寝泊りをしていたのだ。何時でもエルウィンを見ていたいしな。
実家に戻ってやることは、まずエルウィンのための部屋を整えさせることだ。結婚したらこの城で生活して貰うのだから。当然、あんなむさい男ばかりの宿舎などで新婚生活など送れないし、送らせたくも無い。可憐な白百合のようなエルウィンには、相応しくない。

ついでに両親にエルウィンと結婚するつもりだから、よろしく。反論は却下だと伝えておいた。名門の男じゃないといけないと言い出され、嫁いびりでもされたらエルウィンが可哀想だからな。まあ、両親は今まで独身だった私が結婚する気になっただけで十分らしく、エルウィンを歓迎してくれるらしい。
良い両親を持ったな。ついでにエルウィンの両親にも連絡をしておくか。


今夜は宴会だ。私は余り好きではないが、これでも一番偉い役職だし、まあ最初くらいはいなくてはならない。

「今日は宴会だが、ただの宴会と思っては困る。そうだ、言い忘れたが、まさか私のエルウィンに手を出そうと思っている輩はいないだろうな?勿論懸想するのもアウトだ」

部隊員は全員首を振っていた。ちなみにエルウィンは下っ端なため、買出しにいかされてここにはいない。

「そうか、良い心がけだ。ちなみに今日は私とエルウィンが結ばれる予定の日だ。明日は、エルウィンが初夜を迎え私と結婚することになるが、皆にはエルウィンが私と一刻も早く結婚する気になるように、温かい気持ちで称えてやってほしい」

ちなみに、部下一同が思ったことは、隊長は今夜強姦する気だ!……ヤバイ…こんな人が国王になって良いのか?尊敬できないかもしれない……そう国王に剣を捧げる騎士達は思った。
しかも、言っていることは、今夜エルウィンとやるから、皆は明日になったら『早く結婚しろよ!』とエルウィンに言い聞かせろと、言っているのだ。エルウィンを嵌める気満々な隊長の言葉に、冷や汗がダラダラだった。一同の倫理観では、隊長のやっていることは無茶苦茶なのだ。婚前交渉などもっての他であるし、強姦はもっとイケナイ!
しかし、隊長の扱きは身にしみているし、何よりも権力も地位も名誉もありすぎている人物から、やれよと言われれば、頷くより他はなかった。

「ちなみにこれは、エルウィン専用の酒だ。誰も飲むんじゃないぞ」

一同はそれになにかが入っているのが分かってしまい、誰も飲むことは無かった。エルウィンが飲むのを、ただ可哀想な目で見守っていただけだった。
寝入ってしまったエルウィンを嬉しそうに抱きかかえて、自室に連れ込んでいく隊長をみて、宴会はお開きになった。



*ゲスに権力を持たせるとこうなるようですw



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