……え?
今の話の中のどこにギルフォードの息子が国王にならなければいけない理由があったっけ?

私はただの惚気か、エロ話を聞かされただけのような気がするのだが。それにしてもどうでも良いが、誠実そうなウィルと純朴なリエラ国王との間に生まれたギルフォードが何故ああ残念な出来である変態になってしまったんだ。

まあ、リエラ国王の言いたいことは分からないでもない。要は愛する男との間に出来て産まれたギルフォードの子どもに王位を継がせたいというんだろう。

だが、リエラ国王の言っていることはただの我侭だろう。
まず勝手に婿に行かれたのは、リエラ国王の監視不足だ。息子が変な計画を立てている時点で、要注意をしなければいけなかったし、そもそもこの国王リエラにそれほど熱い思いがあるのか?

子どもができて駆け落ちしてしまうほど、リエラのことなんか何も考えていないではないか?
どう聞いても、ウィル>>>(超えられない壁)>>>リエラだったのだろうに。

「気持ちだけは何となく理解は出来ました……けど、やっぱりギルバードが王位を継がなければいけない理由が納得できません」

私はリエラ国民ではないので、理由に納得が出来ようができまいが息子を渡す気は毛頭なかった。
魔力の少ないギルフォードの兄たちに繁殖をさせて何とかさせれば良いだろう。

「そんな!……だって、ギルフォードはウィルの唯一の忘れ形見で……ウィルの血を引いたギルバードに僕の跡を継いで欲しいのに!」

とうとう回想だけではなく、現在からも私から僕になったな。リエラ国王を皆が甘やかしているのではないか?
だからリエラ国民ではないギルバードを連れて行きたいなど駄々をこねるのだ。
確かにギルバードはリエラ国王の孫だが、現在リエラ国籍はない。この国では一貴族の子息であるというだけだ。
そもそもギルバードを王位にと望むのなら、まず私に許可を得るよりも先に国王陛下の承認を受けないといけないのに。

「忘れ形見ね………えっと、そこの陛下のお付の護衛の方。お名前なんて言うんですか?」

リエラ国王の背後に黙って立っているだけだった、屈強な体格をしている護衛の騎士にそう問いかけた。

「わ、私ですか?私などギルフォード王子のお妃に名乗るほどの者ではありません」

私の問いかけに明らかに挙動不審でしどろもどろにそう答えた。

「そのお妃が聞いているんだから、答えろ」

「………ウィルフォードと申します」

ウィルフォードね……ウィルフォード→ギルフォード→ギルバード

「陛下、貴方のウィルは生きているようなんですが……」

しかも処刑されているとか、あのまま死んでいたとかじゃなくって、何時でも一緒にいる護衛の騎士として生きているようなんですけど。

「ど、どうして分かったの?ギルだって気づいていないのに!」

焦っているのか否定すらすることを思いつかないのだろう。

「まず、国家秘密になるような話しをその騎士の前で平然としていましたしね……関係者なんだって一目で分かりましたよ」

ただの護衛の騎士程度が知っていて良いことではない。

「う……」

「それに似ていますよ。ギルフォードに。まあ、顔は陛下とギルフォードは似ていますが、体格とか骨格とか……特にその手とか彼とギルフォードは良く似ています」

ナイフやフォークよりも重いものなど持ったことありません真性もやしなリエラ国王に比べて、ギルフォードは顔は美しいがいったん脱ぐと凄い身体をしている。
顔はリエラ国王から、その他はウィルから貰ったんだろう。

「ギルフォードは悲恋の忘れ形見だからとか、そんな嘘私に通用しません!従って、ギルバードをリエラに渡すことはできません!」

「で、でも!ギルバードは僕たちの唯一の孫で、魔力にも秀でていて……僕の跡を継いで欲しいのに……」

ああ、泣き出してしまった。
リエラ国王……42歳だろう。息子の嫁にちょっと言い返されたくらいで泣くな。

「アーク……ギルフォード王子にもお妃にも、2人の人生があるんだ。邪魔をしてはいけない……俺がいるだけじゃ駄目なのか?」

「ウィル、だって!……ギルフォードは僕たちの子だって公表できないんだもん!……だから僕たちの孫に王位をあげたいんだもん!」

「公表できなくたって、あの子は俺たちの子なんだから。そっとしておいてあげよう。アークが王子だったせいでどれだけ苦労したか、アークが一番よく分かっているだろう?」

「……ウィル」

「俺たちのような目に合わせてはいけない。いや、俺は不幸じゃなかったが!……どんな形であれアークで一緒にいられて幸せだった」

「ウィル!好き!」


あー……いちゃいちゃいちゃいちゃ……一応義理の両親のラブシーンを何故見ないといけないんだ?
どうせいい年して、護衛だとか言いながら一緒に生活して一緒に寝て、やりまくっているんだろう?
いっそもう一人作ったらどうだ?42歳なら頑張ればまだいけるかもしれないだろう?

死んだはずのウィルが生きていたと確信していたのは、どう考えてもこのリエラ国王、ウィルを失っては生きていけないからだ。
思い出したが、リエラの宰相はブレイクという名で国王の異母弟ではなかっただろうか?
そして将軍の名前はウィルフォード……。

ただの推測だろうが、おそらく間違っていないだろう。
二人で駆け落ちした後、おそらくブレイクはリエラ国王が立てた筋書き通りにことを運んだのだろう。
病気の療養のために、田舎の離宮で過ごしていると。ギルフォードはそこで生まれたことにし、母親はあの青年ということにした。そうやって駆け落ちした二人を影ながら守っていて上げたのだろう。

そうやってブレイクはリエラ国王たちを見守っていたのだろうが、国王が健康でいる間は仮病で田舎にいてもばれなかったのだろう。
しかし突然の国王が倒れたことで、事態は急変した。
つまり、仮病もそこまでにしなければならず、3人は連れ戻されたと。
その時はおそらくブレイクというのもそれほど権力を持っておらず、病気の前リエラ国王が連れ戻せというのに反対は出来なかったのだろう。それで駆け落ちという事実がばれてしまったのだろう。
当然連れ戻された時にウィルは殺されるはずだっただろうが、きっとリエラ国王が泣いてウィルを殺すんだったら僕も死ぬとでも喚いて、仕方がなく生かすことになったのかもしれない。
一旦は殺したことにしたのだろうが、もしリエラ国王が後を追おうとした際の人質として念のために生かしておいたのではないだろうか。ギルフォードを生かすためとはいえ、この弱いリエラ国王のことだ。本当にウィルを殺してしまったら、弱ってすぐに死にかねない。
きっとすぐに衰弱して死にそうになったので、本当はまだ生かしてあるから、死んでは駄目だ。という展開だろう。目に見えるようだな。

『陛下、ウィルを殺してしまっては、アーク様は絶対に生きてはいけません』
『ならん、殺せ!』
『いったん殺した振りをしましょう。それで、アーク様がちゃんと生きていけるのなら、ウィルは処刑しましょう。でも、無理なら……』

『ウィル……うっうっ…僕ちゃんとギルを育てるから』
『アーク様、ちゃんと食べてください。死んでしまいます。ギルフォード王子のためにも』
『うん、ちゃんと食べる……食べれない』
『死なないで下さい!実はウィルは生きています!』

そして父王が死んで、事態は変わったのだろう。

ブレイクが宰相となって権力を握り、ウィルはおそらく国王専属の騎士という役割で一緒にいることを許されたんだろう。確かウィルフォード将軍というのは、国王の懐刀ということで、何時も側に控えているこということで有名だ……きっとベッドの中でも。いや、私も下世話になったものだな。

この頼りないリエラ国王のことだ。ブレイクが国政を仕切って、ウィルが軍を統制して、頼りきって国王をしているんだろう。
だから皆に甘やかされて、駄目人間になっているんだ。回想の若き頃よりも、明らかに精神年齢が下がってきているとしか思えない。

「この国でギルを産んだんだよね。あの頃のウィル凄くカッコよかった。でも今もカッコいい」

「アークは今も綺麗だ」

早く帰国してください。



ウィルは第一話からいたんだから!(笑)
ご想像どおり生きていましたw



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