「ギルフォードの子どもじゃないと駄目なんだ!」

「だから何でですか?はい、分かりましたって理由も知らずに簡単に息子を外国に渡せるはずはないでしょう?」

最も理由を知った所で、渡すつもりはなかったが。

「ギルフォードは……私の息子だ」

「そんなの分かっていますよ……でも、他にも」

「リエラの王位継承権は、王子だからと言って無条件に与えられるものじゃないんだ」

まあそれは聞いている。ギルフォードは第4王子でうちの国だったら4番目のはずだが、リエラではそうではないそうだ。

うちの国は魔力のある人間が多い。そして魔力の高い人間も他国に比べてとても多い。
まあ、この辺はあまり自慢できる事情ではないが……色んな所から魔力の高い男を浚って……。
だからうちの国は他国の侵略を受けたことがない。戦争には何時も勝っていた。
逆にリエラは魔力を持つ人間が少なく、結構戦争に負けたりしていた。だから、まあ実験的に王家に魔力の高い人間を混ざるようにしてきたらしい。
王位継承権を持つのは、というか、結婚して子どもを持てる王族は国王の許可がないといけない。その条件は魔力が高いこと。
魔力の高い王子にはたくさんの男女を宛がって、たくさん子どもを産ませるが、その中で魔力の高い者だけが繁殖を許されるということ。そうではないと王族が増えすぎて内戦がおきかねないからだ。

「ギルフォードの兄たちは魔力が少なくて、子どもを作る権利がないんですか?」

「うん、そう……ギルもね、始めは魔力が全くないと思われていたんだけど。魔力は結局なかったけど、ギルフォードの体質ってある意味最強だって成長していくうちに気がついたんだ」

ギルフォードも言っていたな。初めは魔力が全くないので、皆から軽視されていたと。だから頑張って剣を腕を磨いたと。
だが確かにある意味ギルフォードは最強だ。あの心中騒ぎを見るに、ギルフォード一人敵国に送りつけるだけで、混乱して国として成り立たなくなってしまう。この前もうちの国を壊滅状態一歩手前までにしてしまったしな。

「ギルフォードにもちゃんと言ってあったんだよ。ギルは魔力がないから次の王にはなれないけど、ギルの息子で魔力があったら最強だろうから、ギルの息子に王位を継がせるつもりだって。お婿になんて出すつもりはなかったんだよ!」

確かにあんな最強の生物兵器を他国に輸出したくはなかっただろう、リエラも。うちの国にいてもらうのも迷惑なんだが。いざとなったら役には立つが。

「でも、まだ生まれてもいない子に王位を継がせるのはおかしくないですか?必ずしもギルフォードの息子に魔力があるとも限らないし、私みたいに魔力が高かったから妊娠できたが、本来ギルフォードは子どもを儲けるのが物凄く難しい体質ですよ?ギルフォードに期待して、他の兄たちに子どもを儲けさせないのは、国としておかしいと思いますよ。予備として一人くらいには結婚を許すべきだったのでは?」

「でも、ギルバードは物凄く魔力高いでしょ!?」

「うっ…そうですが」

隠しても無駄なほどギルバードは魔力が高い。ある程度魔力のある人間なら会うだけで分かるほどだ。私よりも今の段階で高いので成長したらどれほどになるか恐ろしいほどだ。

「でも、それは結果論です。ギルバードは魔力が高いですが、だからといって余計リエラには渡せません」

何で他国に貴重な人材を渡さないといけないんだ。自分の息子という観点だけじゃなく、軍事的にもありえない。
一応婿にギルフォードは来たので、渡す義務はない。
リエラ国王も騙されたのは勿論分かっているが。
なんでも、こういう作戦があるんで許可して(隊長の台本を提出)〜 →リエラ国王却下(まあ、ここは常識があるといえよう)
じゃあ、勝手にやっちゃう。ギルフォード刻印偽造して、婿に行く約束を等を締結。
国王そんな約束知らないまま、孫を餌に台本を読まされる。
勝手に婿に行かれる。
こんな有様だったらしい。

酷い息子だな……


「リエラが滅んじゃう……」

「関係ありません」

私はリエラ国民ではないので、リエラが滅ぼうと関係ない。

「ギルの息子じゃないと嫌なの」

子どもですか?!リエラ国王は!

「だから、その理由は!!!??」

「……ギルフォードも知らないことだから……」

「息子をくれっていうんだったら、秘密だろうが母親の私にはきちんと説明するのが筋というものでしょう?」

消沈な面持ちで話せないというリエラ国王に、どうやら口ぶりからギルフォードの出生に秘密があるらしい。あの変態な体質なだけに人体実験でもされて生まれてきたのか?と危惧してしまう。ギルフォードが心配ではなく、その血を引いたギルバードが心配なだけだが。

「私は兄弟のなかでも一番魔力が大きく、跡継ぎとして父王に指名されていたんだ……私一人だけ王位継承権が与えられていたから、私は望まなくてもたくさんの子どもを作らなければならなかったんだ」

まあ、仕方がないだろうな。王家に生まれたからにはそういう事情もあるだろう。
わが国の国王陛下も跡継ぎ問題では相当苦労された。本来なら陛下は男性と結婚しないといけないところを、愛した女性がいたため歓迎されなかったが結婚し、結果王女しか生まれなかった。わが国は自由恋愛だから女性と結婚したいという陛下に反対は出来なかったが、為政者としてみれば陛下は失格だっただろう。
自由恋愛と言っても、ある程度は制限される。同じ階級・身分であること。できれば男性で魔力があること。これは国王や貴族と跡継ぎだったら絶対条件の一つだ。だから私の兄は両親に反対され家出してしまったのだが。
跡継ぎがいないと国は乱れる元だ。
今は一応隊長という王太子がいるが……傍目では優秀な跡継ぎだが、もはやエルウィンのせいで見る影もなくなっている。本当に真面目に国王をしてくれるのか今から心配だ。

「エミリオはきっと私のことを、ハーレムを築いて不潔な国王とでも思っているんだよね。でも、私だって好きでたくさんの妻を侍らしていたわけじゃないんだ」

まあ、ハーレムを持っていないギルフォードですら私は散々不潔だの、汚いだの言っていたからな……リエラの国王は更に不潔だと思う気持ちもある。実際想像の中では汚らしい腹の出た脂ぎった親父を想像していたのだ。目の前のリエラ国王はとても美しい男だが。

「国王になんかなりたくなかったんだ……好きでもない男や女を抱いて、好きな人に触れられない生活なんて……」

リエラ国王の回想が始まった。




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