次の王に指名されたのは、僕が15歳になったばかりの時だった。僕にはたくさんの兄弟がいたが、皆それほど魔力が高くなく、皆の中では一番マシだろうという僕に王位継承権が回ってきたのだ。
だからと言って飛びぬけて魔力が高いというほどでもない。せいぜい上の下程度だろう。魔法大国の隣国と比べたらささやかと言われるほどしかないのかもしれない。
だから15歳になるのと同時に僕の後宮が作られ、たくさんの魔力に秀でた男女が宛がわれた。
子作りに励めということだが、元来それほど性欲が強いわけでもなくどちらかというと好きな人をそっと影で見ていたいタイプだった僕にとって、後宮は苦痛でしかなかった。

王子で王位継承権を与えられたが普段はまだ学生であり、リエラ王族であろうとも勉学の場では平等という観念の元、身分を隠して大学に通っていた。
リエラは一夫多妻で有名だが、一般市民は一夫一妻制だ。貴族でも余程大貴族でもない限り複数の妻はもたない。隣国ほど貞操観念が発達しているわけでもないので、一夫一妻制といえでも婚前交渉は珍しくもないし、愛人を持つ夫も多い。

だが15歳にして多数の妻を持つ学生などどこにもいなかった。

クラスメイトたちに会うたびに、自分は皆と異なる世界に生きているのだと落ち込んだものだった。
それでも義務として子どもを作らないといけない。

学校にいけばずっと恋をしている人がいるのに、城に戻れば役目のために義務感だけで性交渉をしなければいけない。
それでも何とか義務感だけで子どもを数人儲けた。
数人儲けたのでそろそろお役目ごめんになっても良いのではないかと思ったが、第三王子まで揃いも揃って魔力が低いと言われとても次の王位継承権を渡せるような魔力ではないと酷評された。
後宮の中に男女(圧倒的に男が多いが)の中でも男は魔力を持っている人間をそろえてあった。しかし子どもを産んでもらうためには、それらの男たちは僕よりも魔力が低くなければいけないのだ。そのためだろうか。せっかく儲けた王子も合格点が貰えなかった。

でも僕は何の感情のないまま作った子どもだからではないだろうかと思っている。
友人としてしか接していない彼を僕はずっと愛し続けていた罰なのかもしれない。

信頼する配下は、それほど彼が好きなら後宮に入れたらどうかと進言してきたが、彼は僕が王子だと知らず、またもっと問題があった。彼は僕よりも魔力が高い。僕では彼に子どもを産ませることができない。それでは後宮にむかい入れる事もできないし、したくなかった。
誰が愛する人を後宮に押し込めたいと思うだろうか。

「それでは独身最後の夜を祝って乾杯!」

学生時代の友人の結婚祝いに、内輪で仲間が集まってパーティーを開いた。
僕は卒業した今も身分を隠したままでいた。王子と知られて皆の態度が変わってしまうことが嫌だったからだ。
勿論僕も王族として働いているので王宮で僕の側で働いている友人たちには知られてしまう場合もある。しかし厳重に口止めしているので、今ここにいるメンバーたちには知られていなかった。

「これで結婚も婚約もしていないのはウィルとアークだけか?みんなの中で一番の出世頭たちで、顔も良いのに何でだ?」

「アークは宰相府で働いているし、ウィルは王都警備隊の隊長をしているし、縁談が来ないわけないのになあ」

僕は将来国王としての仕事を覚えるべく、宰相に就いて仕事を覚えていた。ウィルは初めは国境警備隊に赴任しそうになっていたが、僕が横槍を入れて王都警備の職を斡旋した。ウィルにとっては出世は王都警備隊のほうが早いので、悪い話ではなかったはずだ。本当は近衛のほうが出世の道へは一番だが、僕が王族だとばれる可能性が高いため見送った。

「俺はなあ……縁がないみたいなんだな」

「そうだよ、コイツこんなガタイで良い顔していてまだ童貞なんだぜ?」

「ばらすなよ!」

「嘘、まだかよ!」

「だから縁がないって言ってんだろ……何故か何時も良いなと思ったら振られるし、娼館に行けばびっくりするほどの不細工を宛がわれるし」

「いや、一緒に行った俺もびっくりだったな。金払ってあんな不細工なの送り込まれたら、無理無理だって……チェンジと言うほど有り得ない化け物になっていくし。何だったんだあれ?」

「いや、お前らアークを見慣れているから贅沢になってんだろ?アークほどの美貌を子どもの頃から見ていれば、大抵の人間は不細工になるよ」

魔力も突出して高くない僕の自慢は、この美貌……らしい。
でも僕はウィルの男らしく野生的に整った顔のほうが好きだった。鍛えた肉体と、ゴツゴツしている無骨な手が大好きだ。
言えないけれど……
そんなウィルがいまだに性経験がないのは、全部僕が邪魔をしたからだ。
影の者にウィルに邪な感情を抱いている人間は全部排除しろと命じ、娼婦たちも手を回してウィルの趣味ではない男ばかりをまわした。
ごめん、ウィル。どうしても僕はウィルを他の人間に渡したくなかったんだ。

「縁がないのはしょうがないが……どうして結婚も駄目なんだろうか。縁談もすぐに断わられるし、上手くいっても典礼省から婚約の許可が出ないし。陛下に嫌われるようなこと、うちの家はしていないはずなんだけど」

「そればっかりは俺たちも分からないな。まさか陛下にどうして結婚の許可をいただけないのですか?なんて聞くわけにもいかないしな……」

「……このままだと一生俺は独身だ」

「一生童貞の間違いじゃないか?」

皆の笑い声に、僕はかすれた苦笑しか浮かべられなかった。典礼省で結婚の許可を出さないように手を回したのも勿論僕だった。

「アークは何で結婚しないんだ?ウィルみたいに運が悪いとかじゃなくってさ」

「僕は……」

僕は正式に結婚はしていないけど、たくさんの妻と子どもがいる。15歳から5年の間に王子と王女を4人儲けた。
ほとんど会うこともなく、顔も見ていない子もいる。
生まれたとたんに取り上げられるのだから仕方がないし、そもそも僕に子どもたちに対する愛情があるかすら分からない。

「僕も……縁がないのかな?」

ウィルとは絶対に結婚できないし。
仕事をやめて後宮に入ってくれる?一生出れないけど……なんてウィルに言えるはずがない。
ウィルは長男だったはずだし、継がなければいけない家もある。
ウィルに僕が子どもを産ませることは絶対に不可能だし、男として仕事に自信を持って働いて、そのうち結婚したいと思っている普通の夢があるウィルを僕が手に入れることなんて、できるはずはない。
でもそう思っておきながら、ウィルが結婚することも恋人を持つことも性交渉することも、全部許せなかった。
結局、僕はどっちつかずで卑怯な男なんだ。

「いっそ、縁がない同士でくっつけば良いんじゃないか?ウィル、お前昔アークのこと好きだっただろ?」

「おい!ばらすなよ!……あー、アーク、その、昔のことだから!気にしないでくれ!今は何とも思ってないから!な?」

「え?……本当なの?それって何時?」

僕は……この時、過去のことだって言われても胸がドキドキするのを止められなかった。
ずっと好きだったウィルが、僕のことを昔でも好きでいてくれた?


*パパの純愛w
おまけのくせに長くなりそう(><)



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