ギルフォードへ。

酷いよ勝手に婿に行ってしまうなんて!
パパを騙したんだね?(ノ_・。) (ノ_-。)
ギルが初孫の顔を見たいんだったら、と言ってパパに協力しろと脅したくせに、孫の顔も見れないような外国にお婿に行っちゃうなんて!
パパは頑張って、ギルの書いた台本を覚えたんだよ!
パパのお陰でお嫁さんと結婚できたんでしょう?
ギルの息子が次の国王になるんだったのに、嘘ついて家出するなんて(´;д;`)
リエラが滅んじゃうよ!
今だったら許してあげるから、お嫁さんと一緒に帰ってきてよ!
外国にいたって、ギルの息子が第一王位継承者なんだからね!
帰ってきてくれないと、お嫁さんに、あれが全部ギルの計画で演技だったってばらしちゃうんだからね!


………
……


あの騒動が全て隊長一同の作戦だったことは、勿論知っていた。
知っていたが、あの台本はあくまで隊長とエルとのラブストーリーであり、エルが出てこないシーンはカットされている。
つまり、私とギルフォードのやりとりは台本にはない。
従って、私は犠牲にされたくらいにしか出番はなかった。

だが、ギルフォードはギルフォードで別に台本を用意していたわけだ。
リエラの国王も可哀想に。息子に極悪非道で馬鹿な王の役を演じるように強制され、孫を餌にしたにも関わらず、ギルフォードは無許可で婿に行ってしまったという訳なのだろう。
この手紙を見る限る、リエラの王位継承権の順番がよく分からないが、ギルフォードの子が次の王位につく予定らしい。だから国王としては、おそらくあのまま私がギルフォードの命乞いに感動してリエラで結婚をし、孫を産んでくれる予定だったのだろう。

「何が隠しごとは絶対にしないだ!!! あの腐れ変態が!!!!」

隊長の台本にのってしまった被害者のような弁明すらしていたというのに、ギルフォードのアホは自ら台本を書き上げて、自分の父親に演技を強制していたのだ。
それを白状しようともせずに、私の命を救うために頑張りましたという顔をして見せて。
親子揃ってリエラはアホの国だろう!!!

「もう駄目だ。もともと無かった愛想が尽きた」

私ももうあんなアホで誠意もない夫と生きて行きたくはない。

遺書を書いた。



夫たちへ

もともと愛が無かった結婚でしたが、もう一緒に暮らしていける気がしません。
しかし一度騙されて結婚してしまった以上、離婚は出来ないのはわかっています。もう少し良く考えて結婚すればよかったと今は後悔しています。
妊娠中だったからか、とにかく夫がいないと死刑になる、そんな追い詰められた考えしか思いつかなかったのがきっと敗因なのでしょう。
運命の人は別にいたというのに……

あの誘拐劇の中で、ずっと一緒にいて愛が芽生えました。お互い、この世ではもう結ばれないことは分かっています。
愛してもいない夫の子を産んで、生きていかなければならない……
真に愛する人を見つけたお互いにとって、それはとても辛い日々になるでしょう。

だから、この世で結ばれないのなら来世で結ばれようと思います。
2人の遺体は一緒のお墓に埋めてください。

子どもには申し訳ない気持ちで一杯です。

この世で結ばれなかったエルウィンとエミリオより



二人の遺体を発見した夫たちは、見ていられないくらいに悲嘆にくれたと言う。
後追い自殺をしようとし、部下たちに止められ、それでも死のうとして……


「あ〜あ、今頃あの二人ちょっとは自分のしたことを真実反省してくれていますかね?」

「どうだかな?死んだ私たちを恨んでいるかもしれないぞ」

遺書を書いて心中したはずの私とエルウィンは、妊娠中に良いという温泉につかりに療養の旅に出ていた。
遺体は人形(とはいっても魂が入っていないだけで実際の肉体と代わりない)を作るのが得意な部下に、2人分の遺体を作成させた。
部下は隊長を騙したらあとでどんな罰があるかと泣いて嫌がったが、ここで作らないとすぐさま私が罰を与えるといって、無理矢理作成させた。

そして夫たちにウンザリしていたエルウィンと旅に出たという訳だ。

しばらく私たちが本当に心中したと思っていれば良いと思う。むしろ後追い自殺してくれたら嬉しい。

「でも、来世では本当に隊長とかと出会わないで、可愛い女の子……いいえ、エミリオ分隊長だったら俺男でも良いんで、来世では隊長と出会う前に結婚をしてください」

「私もギルフォードと出会う前にエルウィンと結婚したかった」

らぶらぶ?温泉旅を楽しんでいる私たちの後を追って、迷惑な夫たちが真相に気がつき謝罪行脚の旅に出たのはそれから3日後のことだったという。



END
あとがき
エミリオの一番最初の出番は、『ある隊員は見た!』からなんですが、お気づきの方はいたでしょうか?
こんなに長くなる予定はなかったんですが、エミリオたんが結構しぶとい性格なので、長くなっちゃいました。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです(^▽^)




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