「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!エルウィン!!!」

「エミリオ!どうしてえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

こんにちは。臨戦さながらの第一部隊所属のイアンと申します。第一部隊に所属して、数々の魔獣や猛獣を倒してきましたが、今日この日ほど命の危険を感じた日はありません。
僕の趣味は人形つくりなのですが、昨日とある方に無理矢理死体人形を作成を依頼され、命の危険を感じながらも目の前の脅迫に屈してしまい作ってしまいました。

目の前の貴い身分の方々2名は僕の死体人形を見るなり、人目も憚らず泣き出し、叫びました。駆けつけた第一部隊と弟君のユーリ隊長がいなければ、確実に王都は崩壊していたでしょう……
隊長はショックの余りにか魔力を暴走させ、自分と一緒に王都を吹き飛ばすほど理性を失っていました。王都を守るために結界魔法を一同は張りめぐりましたが、一瞬で魔力が枯渇し、正直隊長と同等といわれるユーリ隊長がいなければ、今頃この国はなかったかもしれません。

王都が壊滅せずに済んだと思ったら、今度は王国各地から魔法が使えないという伝令が入ってきました。
僕たちはすでに魔力が枯渇して回復していなかったので気がつかなかったのですが、ギルフォード王子も悲しみの余り、自分の能力を操作できずに、王国中を混乱に招き入れました。
魔法が使えないので伝令は馬でやってきましたが、各地魔法だけではなく魔道具まで使用が出来ず、指令系統が混乱し壊滅状態です。

たったお二人でこの国を破滅する気なのでしょうか……というか、僕は……このお二人をここまで悲しみのどん底に追い詰めた人形を作成……ああああああああああああああああああああああああああああああ、絶対に殺される!!!!!!!!!!!!!!!!!
僕は昨日結婚したばかりなのです!!!!
妻をたった一日で未亡人にするわけには!!!!!!!!!!!!
僕はエミリオ分隊長お仕置きによって結婚したばかりなんです!!!!!だから余計エミリオ分隊長に逆らえずにお人形を作ってしまったんですが……僕の命は風前の灯火です。

「エミリオのいない人生なんて!!!!!僕も一緒に死ぬよ?」
「よせ!私が先だ!!!!!!」

あとを競って、後追い自殺をしようとされるお二人。いえ、分隊長もエルウィンも実は生きているんです!!今頃温泉にでもつかってのんびり夫のいない気楽な旅を楽しんで……でも、言えません。言ったら僕の命が……

「いい加減にしろ!それでも一国の王太子や王子なのか!国を混乱に陥れて!ユーリがいなければ今頃廃墟の山だぞ!」

「エルウィンのいない世界などどうなっても構わない……」

「僕もエミリオがいない世界なんて……」

「後追い自殺をするのは勝手だが、夫として妻の葬儀の手配もしないまま死ぬのか?それなら俺が葬儀の手配をするぞ!……そうだな、遺言通りにエミリオとエルウィンを一緒の墓に入れる。墓石にはこの世では結ばれなかった最愛の二人とでも刻もうか……で、隊長はエルウィンと一緒の墓には入れない。あの世でも一緒にいたくないだろうからな。ギルフォード王子の遺体はリエラに返す」

「そんなの酷い!僕とエミリオをあの世でも裂こうなんて!!!!」

「クライス、お前に情はないのか!」

「だったら後追い自殺は葬儀が終わってからにしろ」

流石クライス副隊長です。お二人を一瞬正気にさせました。もうすぐ出産だというのに、こんな騒動の後始末に借り出してしまい申し訳ありません。
しかし高貴な方々に命令できるのは、クライス副隊長だけなんです!最早この部隊での最後の良心は副隊長しか残っておりません。

いそいそと葬儀の準備をしだすお二人に、なにか違うと思ってしまいます。

「葬儀の際には最後に私も棺に入るので、私のスペースも空けて作るように」

「絶対に僕の遺体はリエラに引き渡さないでよね!……エミリオと一緒に永遠に眠るんだから」

何かポイントが違いませんか?

「お前たち……妻に心中をされたのに、相変わらず反省をしていないな。お前たちといるのが嫌だから心中したんだぞ?もう会いたくないだろうに、葬儀まで一緒にしようとは……一緒の墓にいれて静かに見送ってやろうとか思わないのか?」

「反省って……こんなにこんなにエミリオを愛したこと?エミリオが死んでも離さないこと?駄目だよ……どんなに嫌がっても死後の世界までついて行く」

「だからエミリオは危険だとずっと言っていたのだ!エルウィンはあいつに惚れかけていた!死んでまで一緒の墓になど絶対に入れさせん!!!!!」

嫌だ。嫌だ。こんな男と結婚したくなかったエルウィンと分隊長の気持ちが物凄くよく分かる。
なんて粘着質なんだ。

「隊長は特に……もうすぐ国王になるというのに」

「ユーリがいれば問題はない!」

「ルカはどうするんです?母親が死んで頼るべき父親がいないなんて可哀想でしょう」

「なら、一緒にルカも墓に」

「アホですか!」

妻が死ぬとこうなるんだな……王子まで道ずれに墓に入るって一体。
なんか、ずっとこの方が国王になったら尊敬できないかもと思ってきたけど、やっぱり尊敬できそうもないんだけど。

って被害が大きすぎるんですけど!今他国に攻められたら、魔法使えない、伝令系統滅茶苦茶、魔道具兵器も使用不可ですぐ負けそうなんですけど。

おまけに。

「そうだ!わが一族に伝わる禁忌魔法があったはず!……100万人の命を犠牲にして、エルウィンを黄泉がえらせれるかもしれない!!!!!」

100万は王都の人口ですよ!!

「エミリオも一緒に蘇らせて!!!」
「ふざけるな!エルウィンと心中した男など、今すぐ木っ端微塵にしたいほどだ!!!!!」

隊長とギルフォード王子は仲たがいをしていましたが、ギルフォード王子がエミリオ分隊長も一緒ではないと、王子の能力を最大限使用して魔法を使えないようにしてやると言われ、隊長はしぶしぶ折れたようです。

って200万人も犠牲にする計画を堂々をしていますよ。心のどこかが折れたか壊れちゃったのかもしれませんね。

そろそろ誰か、真相を暴露してくださいよ。僕では無理です。
このままだと200万人本当に殺す気でいますよ。
クライス副隊長くらいは、本当のこと知っているんじゃありませんか?

しかし、禁忌魔法を使おうと、遺体を清めようとした時……お二人は気づかれました。

「違う!エミリオの身体じゃない!!!エミリオの乳首はもっとピンクで可憐な大きさだ!!!こんな肥大してどす黒い色じゃない!!」
「私のエルウィンだって可憐なパイパンだと言うのに、毛が生えている!!!これはエルウィンではない!!!!」

……僕もお人形つくりには絶対の自信を持っていますが、たった数時間で作ることを強制された上、分隊長とエルウィンの裸など知るはずもありません。
分隊長の乳首の大きさや色なんか知るわけないでしょう!!!!!!!
エルウィンがパイパンなのは知っていたけど……時間との戦いで作ったので、プロトタイプに顔だけくっつけただけの手抜き作品だったのです。
パイパンにする時間なんてなかったし思いつきませんでした!!

こんな理由で生存がばれるなんて、エルウィンたちも非情に恥ずかしいでしょう。

勿論葬儀など行われることもなく、お二人は妻たちの後を追って行かれました。

王都は平和になりました。200万人も救われました。

……でも、僕ってお二人が戻ってこられたらどうなるのでしょうか?僕は救われるんでしょうか……



死んだと思った時のギルと隊長の反応が見たいというリクがあったので、気の毒な人形師隊員から視点でお送りしました。



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