私はそれからエルウィンに会い、色々準備をして屋敷に戻った。

「ギルフォード、お帰り」

「え?…ただいま!エミリオが出迎えてくれるなんて!それに、僕のこと名前で呼んでくれた?」

これまで私はギルフォード王子→貴様→変態、など呼んで来たが、敬称をつけずそのまま名前で呼んだことは初めてだっただろう。
ギルフォードは子犬のように嬉しそうに私に付きまとっていた。

「これからは私の夫だからな……家の仕事も手際よく始末してくれて、両親も感心していた。よくやってくれたな」

「ううん!だって僕エミリオの夫だもん!それにお婿さんだから、エミリオのご両親に気に入ってもらわないとね」

私に褒められたことでまた嬉しそうに纏わりついてくる。それをあえて拒否はしなかった。

なごやかに食事を一緒に済ませ、ベッドに入った。寝酒をギルフォードは飲むくせがあるので、妻らしくワインを渡してやった。
そんな些細なことにギルフォードは感激をしていた。

「なんか物凄く新婚っぽいって、ドキドキする」

「新婚だからな……一応」

「隊長ね、ハネムーン行ってきたんだって。王太子妃の第二子はハネムーンベイビーだったらしいよ。僕たちの赤ちゃんと予定日が一緒なんだって」

「ほう、それは心強いな。私も、初めての妊娠だからな。エルウィンに色々聞けて便利だ」

そうか、隊長のやつ……私があんな目やこんな目に会っている間に、ハネムーンになんか行って楽しんでいたんだな。
もう一生分の幸運を使ったのだろう。

「僕たちもハネムーンに行こうか?」

「残念ながら、まだ忙しいから行く時間はないが……新婚らしいことをしてやろう。ギルフォード、服を脱げ」

「え?……エミリオ?」

「妻の私が奉仕をしてやろうと言っているんだ」

「で、でも……エミリオは悪阻が酷くって、エッチできないって言っていたよね」

妊娠してからは安定期にならないと駄目とか医者に言われていたし、悪阻が酷かったためここしばらくはリエラにいた間も、無理強いされなかった。要するに物凄く久しぶりということだ。

ギルフォードは医者に駄目だって言われたから、と言いながらも期待に満ちた目をしていた。

「何も最後までしなくても、私がやってやれることはある……さあ、脱げ」

ギルフォードは言われるがまま盛大に全裸になった。

「私では経験が少なくてリエラ出身の夫に満足をしてもらうのは難しいと思ってだな……リエラ出身の商人から面白い物を購入した」

全裸のギルフォードに買ったばかりのリングを見せた。
それを見るとギルフォードが微妙な顔になった。用途を知っているのだろう。

「これは、すぐに射精をしてしまう男性用の拘束具らしい。私が奉仕する間、我慢できるようにつけてやろう。まさか、私がここまで夫のために考えたことに嫌とは言わないよね?」

性器を拘束するリングだ。たぶん嫌だろう。

「ううん……エミリオがしてくれることだったら、僕いやなんて言わないよ」

目を紅くして期待を滲ませて私を見ていた。嫌じゃないのなら付けてやろう。

私が付けると、私が触れたからかすぐに臨戦状態になってしまう。だがリングがある限り私の許可がないと射精はできない。

「貴様は早漏だからこういう道具がちょうど良いだろう」

「エ、エミリオ。僕、そんなに早漏じゃないと思うけど……」

「ついでに縛ってやろう。私の許可なく外さないようにだ。これも嫌とは言わないだろう?」

ギルフォードの手も縛ってやる。それでも嬉しそうな顔をしているギルフォードは被虐癖でもあるのだろうか。

そしてそのまま10分以上放置をしてやる。初めは嬉しそうだったギルフォードも段々と顔に焦燥感が満ちてくるのが分かる。

「エ、エミリオ!そろそろっ」

「そろそろ、薬が効いてきて我慢できなくなったか?」

「薬?」

「そう、先ほどのワインにとっても強烈な媚薬を入れておいた。ああ、公爵家に伝わる秘薬ではない。あれは魔法で調合しているせいで、貴様には効かないからな。普通の媚薬だが、効き目は24時間でその間に性交渉をしないと……狂うほど強烈らしい」

「じゃあ、エミリオが24時間相手をしてくれるの?!……って、駄目だよ!赤ちゃんがいるんだから、そんなことできない!」

「当たり前だろう!……貴様、私が『台本』のことを知らないとでも思っているのか!……隊長と手を組んで、あんな目に合わせたことがばれないままで済むとでも思っていたのか?」

私はギルフォードはあの台本のことがばれたらさぞ慌てると思っていた。ごめんなさいとこれまでのように可愛く泣いて縋ってくるかもしれないと。

「……知っちゃったんだね。でも、もう僕とエミリオは結婚したんだから、関係ないよ」

まったく反省もしていないし、慌ててもなかった。

「貴様……悪いことをしたとか、罪悪感とかは一切ないのか?」

「ばれないに越したことはないけど、僕の目標はエミリオと結婚することだったから。僕とエミリオは結ばれる運命にあったから、罪悪感なんてこれっぽっちもない。だって悪いことをしたとは思ってないから」

泣いて縋れば可愛げがあったものを。

「だって、エミリオが悪いんだよ!……初めて会った時のことを覚えている?僕が成人した時で18歳になったばかりの時だった。この国に来賓として来て、エミリオが僕の護衛をしてくれたんだよ。その時から、僕はエミリオと結婚するんだって思った。だけどエミリオは連れなかった。軍人になるはずだったのに、エミリオのために大使にまでなってこの国に来たのに、エミリオは隊長と結婚するかもしれないから僕とは結婚できないって断わり続けた!3年も、ずっとずっと僕を拒否し続けた!……そんな僕にエミリオは何時も冷たかった。こんなにこんなに愛しているのに!…だから、隊長が僕が悪役を引き受けて王太子妃と上手く行くのに協力をしてくれたら、エミリオと結婚をする許可をくれるって、そう言われたら僕が拒否できるはずないだろう!?今回のことはエミリオを手に入れるために仕方のないことだったんだ。ただ、怖い目に合わせてしまったことは申し訳なかったと思っているけど、僕がエミリオを騙したことは、これっぽっちも反省していない!だってこうでもしないとエミリオと結婚できなかったんだから!」

長い言い訳だったな。
そうか、馬鹿とか変態とかが自分を自己弁護をするとこうなるのか。

「この国は離婚できないから素晴らしいよね!国王陛下もこの作戦を認めてくださったんだから、僕は国に認められた正式なエミリオの夫だ!……まさか、エミリオは尊敬する君の陛下が決めてくれた婿の僕を今更認めないなんていわないよね?ううん、できないもんね」

……私は今一番ショックなことを聞いてしまった。
まさか、隊長だけではなく陛下にまで私は売られてしまっていたのか?……
穏やかで優しく、私に好きな相手と結婚すると良いと言ってくれ、ギルフォードからの矢のような求婚にもNOと言ってくれたのは陛下だったというのに。国(将来の王子たちの誕生)のために私はギルフォードに売られたということか。

「……残念だが、陛下にまで認められた貴様と離婚することは生涯かなわないだろうな。しかし貴様が死んだら、関係なくなる」

私は全裸で媚薬に悶えるギルフォードを引きずって、用意をしておいて部屋に放り込んだ。

「え?どこここ?」

ギルフォードの疑問は無視をして。

「分隊長!出してください!」
「ここは何処なんですか?」
「会議と嘘をついて閉じ込めるとはどういうことだ!!??エルウィンに謝って許してもらわないといけないというのに!!??」

一生許されることはないでしょうに、隊長。

「ここに閉じ込めたメンバーは、私の婿に晴れてなったギルフォードと、隊長と素敵な台本を書いたメンバーたちです」

要するにエルウィンと私を騙した面々(隊長+ギル+部下)20人くらいを、会議なのでと偽って呼び寄せて閉じ込めたわけだ。

「魔力阻害症のギルフォードがいるので、親愛なる皆さんは魔法が使えません。皆に飲んでもらった水にはとっても強力な媚薬がたくさん入っています。Hしないと頭が狂ってしまうような、とっても強力なやつがね。24時間閉じ込めるんで、ここにいる皆で好きに発散してHしまくって下さい」

「私はエルウィン以外とはしない!」

「僕だってエミリオ以外とはしない!」

「俺は婚約者がいるんです!!!分隊長許してください!」

「僕には妻が!」

「私は一人身ですが、結婚前にそんな破廉恥なことはできません!!」

「いやあああああ、助けてください分隊長!!!!」

涙声で懇願してくる面々に扉越しに、冷たく言い放った。

「はっ!……我慢したいなら、我慢しろ!できるものならな」

媚薬を飲んだメンバーを放置しておけば、24時間後にはどうなっているか楽しみだな。
特にギルフォードは変態だが、美形で妖艶なので。童貞と妻一筋のメンバーに囲まれて、どうなるか……私も分からんがな。

「ああ、一つ言っておこう。姦通罪は問答無用で死刑だ。死にたくなければ我慢するしかないな」

エルウィンも笑って、隊長は死刑で良いと思いますと言っていたしな。

「エミリオ!僕はエミリオに貞操を誓っている身だ!こんな薬になんか負けて、死刑になったりしない!」

「そうか、それは楽しみだな」

「貞操を守りぬいたら、僕を夫だってちゃんと認めてね!」

一人だけ全裸でリングを嵌められて言っても全然かっこよくないのだが。

ギルフォードも隊長も媚薬で結婚まで追い詰めた下種なので、今度は自分が媚薬で死ぬ思いをする番だろう。本当に死んでくれたら嬉しいな。

さあ、エルウィンと二人で24時間後にこの扉を開けよう。


*エミリオたんのお仕置きw



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