普通は強制的に妊娠させる方法など必要ない。
言葉は悪いが、普通に強姦すれば、妊娠するものは妊娠する。私とギルフォードの体質と関係が特殊なだけで、無理強いしようと思えば特殊な方法などなくても、成功する。
不信な顔でギルフォードを見つめていると、突然ギルフォードは服を脱ぎだし全裸になった。
全裸になるのが好きな男だな、というか医者がいるのに何をしたいんだ?いったい。
「さあ、エミリオ。今まではエミリオと僕の愛の行為だったけど、今日からはそれにプラスして子作りに専念しようね」
そう全裸で微笑む男を見て、私はやはりギルフォードはただの変態にしか見えなかった。第四王子とはいえ下手に権力もあるせいで、本来だったらただの変態でも他人に迷惑をかけなければ、ただの趣味で済んだだろうが、ギルフォードは現在私に迷惑を掛けまくっている。
「おい……変態。何をする」
全裸で私に圧し掛かって、珍しく着せてもらった服のすそをまくってこようとする変態に、私は低い声で問いかけた。もはや、貴様と呼ぶ価値もない男だ。王子→貴様→変態とまで呼び方が変遷していったが、私は一生この男を名前で呼ぶことはないだろう。そんな価値もない。
「何って子作り」
「アホか!医者がいるだろう!!貴様が変態なのは分かっているが、私は違う!人前でそういうことをすることは恥ずべきことだと教えられてきた!これ以上私を屈辱的な目にあわせるな!」
「大丈夫です、お妃様。お妃様のお国に合わせて、わたくしは目隠しをして絶対にお妃様の尊い裸を見ることは殿下の名にかけていたしません」
「だよ、安心してエミリオ」
医者は本当に目隠しして、正座して待機しているし、何のためにいるんだ!お前は!
この医者がいる以外今までの変態行為と何も変わらないのに、例外は私が服を着たままで全裸に乗しかかられていることぐらいだが。
「この変態!いい加減にしないと私は自害するぞ!」
もし国に帰れたとしても、一生結婚はしないだろうが、おめおめと散々変態に弄ばれた身体で帰れるだろうか。国に戻らないことも考えたし、命を絶つことも考えた。だが……こんな変態相手に自分の命を捨てるのも、と思い直したのだ。
ギルフォードのアホさ加減で、ありがたくはないが少しは救われたのかもしれない。だから本気で死ぬ気はないが、脅し文句ぐらいにはなるだろうと思った。
「……じゃあ、お薬飲もうか?そろそろ必要ないかもしれないと思っていたけど、自害されたくないしね。薬が効いている間はそんなことを考えずにすむよね?その後は、エミリオ優しいから。僕みたいな変態の子どもでも身篭ったら、産むしかないよね?子どものために死のうとなんか思わないよね?」
何、できてもいない母性になんかに縋っているんだ、この変態は!無理強いされて出来た子どもなんかに何の愛情もあるわけはないだろうが。ギルフォードの中では私はどれほどお人よしなんだ?
しかし、あのエルウィンも隊長と不仲だが、子どもだけは可愛がっているし。世の中の男(夫側)は子どもさえできれば夫婦円満になるとでも思っているのか?
「死のうとは思わないかもしれないが、変態の子どもなど国には連れて帰れないから、この国に貴様とともに置いていくしかないだろう」
「……そんなことないはずだ!きっと、エミリオは僕の子どもを愛するよ。それで、僕のことも愛するようになるはずだ」
「そんな妄想をっ」
また媚薬を体内に塗られた。こうなってしまえば、確かに死のうとは考えられなくなる。嫌でもギルフォードを受け入れて喘ぐしかなくなるという訳だ。
こうなると医者の存在も気にならなくなる……訳はない!
何時までいるんだと思っていたが、ギルフォードがそろそろとなど言い出して、私もそろそろ絶頂を迎えるんだろうなこの早漏(事実ではない)と思っていた頃に、医者が突然私の手とギルフォードの手を掴んだ。
「何をするっ…」
私はギルフォードが絶頂を迎えてくれないと少しも楽にならない身体だ。ギルフォードに動いてもらう必要があるのだが、何故ここで医者が出てくる?
と思った瞬間、身体の中の魔力が勝手に動いているのを感じた。自分が操作をしているわけではなく、制御ができない状態になっている。
しかもこの魔力の動きは、まずいことをされている。
ギルフォードに貫かれているので動けなかったが、必死に上に動き抜こうとしたが、ギルフォードの馬鹿力に押さえつけられそれも適わない。医者の腕も外そうとしたが、これもギルフォードと医者の2人がかりで抑えられ適わない。
「貴様ら!人の魔力をっ!」
勝手に動かしている。こんなことは普通出来ない。自分の魔力は自分だけの物だ。他人には操作できるはずがない。
ごく一部の独自魔法の使い手を除いて。この医者はおそらく独自魔法の持ち主だ。私の魔力を操作して、私が決してギルフォードの子を孕むことがないよう使わなかった魔力を行使して、私の身体を変えようとしている。
「駄目だっ!出すな!……離せ!」
「駄目。僕の一杯の精子で今度こそ孕んでね。彼はね、僕の阻害能力を最小限にしてくれて、かつエミリオが孕むように魔力を操作してくれているんだ。なんと、受精率は95%以上らしいから、楽しみだよね……ね、僕の一杯受け取ってね」
私は自分では制御できない体内の魔力を勝手に操作され、これまでにやったことはないがこの魔力の動きは、孕むためのものだと感じた。
95%以上という数字に絶望しながら、それでも薬のせいでギルフォードの精を身体が喜んで受け入れ、魔力も自分自身の身体も裏切られるのを感じた。
「数日中には結果が分かるって。何度もすればほぼ100%に近い数字になるから、夜まで頑張ろうか」
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