私は数日振りに、眠った。いや、今までは眠りにはついていたが、気を失うという形で眠りに落ちていたので、自発的に眠ったというのは久しぶりな気がした。
異国に誘拐され、誘拐犯に犯され、誘拐犯に懇願されパイパンにして、誘拐犯に抱かれながら眠っている。

私の人生は一体どうなってしまうのだろうか。

身に着けているのは宝石と足にある拘束具だけ。下半身すら寂しいことになってしまっていて、本当に帰国できるか不安になってくる。

今日で誘拐されて一週間になる。あの隊長がエルウィンがルカ王子を一週間も見つけずに、誘拐されたままなど有り得るのだろうか。勿論国家の有事であるし、慎重にことを進めなければ戦争になりかねない事体だ。
だが、仕事だけは有能な隊長でもある。変態だとばっかり思っていても、優秀さは部下たちは誰も疑っていない。彼であれば、エルウィンが世界の果てにいてもすぐに迎えに行くことができるだろう。

私だけ後回しか?……まあ、一番三人の中で重要でない人物といえば私であるし、隊長が一番熱心に救い出したいのはエルウィンだろうから、仕方がないと言えば仕方がないだろう。

「エミリオ、おはよう。よく眠れた?」

「貴様が、毎晩疲れることをしてくれるお陰で、夢も見ることなく眠れたよ」

実際、悪夢を見ないのはありがたい。ギルフォードのお陰でも何でもないが、普通の人間だったらトラウマで一杯になって、精神的におかしくなってしまうかもしれない。そう考えると私は結構ずぶとい性格なのかもしれない。

「今日は服を用意させたから、着替えて」

服?この一週間全裸で、上着一枚すらくれなかったというのにか?
勿論服があったほうがいいに決まっているが、急にどうしたのいうのだろうか?

「夕べのこと覚えている?」

夕べか。あのしつこかった夜のことは秘薬を使われようが勿論覚えている。ギルフォードは初めて使ってから五日間連続秘薬を使い続けている。いい加減止めて欲しいが、ギルフォードは私の言うことなど聞いてはくれない。
あの薬はあまり使いすぎると依存性が強くて、男なしではいられなくなってしまうのだが、まあ5日間程度では中毒になるほどではない。ギルフォード曰く、私を薬漬けにするつもりはないので、私がギルフォードに慣れるまで、まあ要するに男に抱かれて感じられる身体にするまでの間に使用するだけだとは言っているが。

「ああ……相変わらず、孕めとしつこかった件か」

そもそも、たった一週間程度で簡単に妊娠するわけがない。普通のカップルでも男同士はそれなりに妊娠するまでに時間がかかるというのに。隊長みたいに魔力が高くて命中率が高い男なら別だが。
同じく魔力の高いユーリも年単位かかっている。


「ねえ、僕毎晩頑張っているから、そろそろ妊娠した?」

と、昨晩も妊娠妊娠と煩かった。
普通のカップルでもそんな簡単にはしないというのに、ギルフォードのような特殊体質で無茶を言うなと怒鳴りたかった。

「無理だっ……この薬は本来っ…魔力の低いほうの花嫁に使う目的なんだ……夫が魔力を操作して孕みやすくするために、感じやすくするためであって……私が妊娠するようにするには……集中して魔力を使わないといけないのに、こんな薬を使われたら、どうやったって無理だっ」

嘘じゃない。こんな精神を掻き乱されて、ギルフォードに貫いてもらうことしか考えられなくなった頭で、どうやって魔力を集中させれば良いというのだ。
だから妻側のほうが魔力が高い場合は、妊娠するのが物凄く難しい。
そういうカップルは本能的にほとんど有り得ないし、夫は射精の際に魔力を込めて注ぐ込むだけでいいので簡単なのだ。むしろ本能でそう出来るらしい。
ギルフォードは魔力はないが、ある意味、物凄く魔力に秀でた肉体と考えられるかもしれない。自在に周囲の魔力を無にすることができるのだ。ギルフォード一人いるだけで、何千という軍隊の魔法使い達をすべて無効化してしまうことができる。ある意味最強の生物兵器でもある。
こうして一対一になっても、魔力を無効化された私とギルフォードでは、圧倒的にギルフォードが有利だ。だからこそ、私を孕まそうと思うのかもしれない。

「え?……この薬、妊娠を促進する効果があるって言っていたのに、エミリオにはむしろ逆効果だったの?しまったな……」

全く効果がないとは言わない。本来妻が夫を受け入れる状態であるほど妊娠しやすいと言われている。私は全く心からギルフォードを受け入れる気持ちがないので、付け焼刃にもほどがあるほど効果はないが。まあ、通常よりも10%ほど効果があるかもしれない。

というやり取りを昨夜したのだが、まあ、ギルフォードはしつこい。しつこすぎる。

「ねえ、エミリオ……僕が特殊体質なのもあって、たぶんなかなか妊娠しずらいんだよね?だから、外部の手を借りようと思うんだ」

「失礼いたします」

「エミリオ、彼は宮廷医で僕の母の担当をしてくれていた。エミリオが妊娠しやすいように手助けをしてくれるよ」

手助けなどしてくれなくとも、私が自分でしたいと思えば、そのうちできる。ただ、したくないだけだ。

「彼は宦官だから、エミリオに触れても問題はないから安心して?」

「それでは、お体に触れさせていただきます。ご懐妊されている可能性もありますので」

そんな確率はほとんどないだろうが。この宮廷医というのは、うちでいう軍医と同じ役割だろう。うちの軍医たちも、治療から妊娠のサポートまで幅広くしている。触れると魔力の流れ等で、妊娠しているか分かるという。エルウィンはそれで騙されたそうだが。

「残念ですが、ご懐妊はされておりません」

「……やっぱりそうか。残念だ」

「しかし……お妃様は、これぽっちも懐妊される努力をなさっている魔力形跡がないようなのですが」

お妃様という呼び方は不愉快だがどうでもいい。私が全くこれぽっちもギルフォードの子を孕むように努力していないことが、分かってしまうのがまずかった。あれほどギルフォードは孕ませようと煩かったのに。確かに私はお前の妻になる気もないし、子どもを生む気もないといっていたが、これぽっちも努力をしていないことがばれたら……

「へえ……僕、散々言ったよね?エミリオの子が欲しいって。孕むように何度も言っていたのに、エミリオやっぱり僕の言うことなんか全く聞く気なかったんだね?」

「……黙れ、強姦魔の早漏男が。お前の精液がいくら多いからって、そう簡単に妊娠するか!というか、産む気はないと私も散々言っただろ!」

「産んでくれるって言ったよね?」

「そんなもの、お前のテクのなさをカバーするために薬を使った後遺症だ」

「……王太子妃と王子が」

「またお得意の脅しか?……私の身体を自由にするくらいなら任務と思って目を瞑って我慢するが、流石に貴様の子どもを孕むことだけは、いくら脅されたってする気はない!これまでは貴様の言うことを唯々諾々と聞いてきたが、そもそもお前の独断で、エルウィン達を殺すことなどできるわけない。なんと言って人質を殺す?私程度の立場だったら、いなくなっても気にされないかもしれないが、王太子妃たちを殺す理由が、私が孕む努力をしないからとでも父王に言うのか?貴様の父親がまだマシな頭を持っているのなら、そんなことをするはずがない。本当に殺す気があるのなら、エルウィンたちを私の目の前に連れて来い」

ここで簡単に王太子妃と王子を殺すほど、リエラも馬鹿ではないだろう。
それに、いまだにあの二人が救出されていないのもおかしいとも思っている。ただ、私がそれを知らされないでいるだけの可能性も高い。
今でもあの二人がリエラにいようがいまいが、私は真実が分からない今、独断でもういないと判断して行動をすることはできない。
いるものとして行動をしなければいけない。ただ、ギルフォードには適わないからこうして体を自由にされるのは止めようはなかったが、妊娠する・しないだけは私の意志で動かすことが出来る。

「……そうだね、エミリオはやっぱり冷静だね。まあ、僕もこの一週間はエミリオが僕に抱かれるのに慣れてくれる準備期間だと思うよ。でもこれから先は、どんなことをしてでも孕んでもらう。エミリオの意思なんかなくても、そうする方法がリエラにはあるんだよ?」


*エミリオさんの次の野望w



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