私は自分の耳がおかしくなったのかと思った。隊長の婚約者だった時は私が妻になる立場だった。これは一般的に魔力が高いほうが夫になり、魔力がない・または低いほうが妻になるほうが子どもができやすいためだ。どうしても魔力が低いほうが隷属的な立場になりやすいのだが、あくまで隊長の婚約者というのは対外的なものであり、本当に結婚するとはこれぽっちも思ってはいなかった。

だからいずれは私は妻を娶るつもりだった。

この美しすぎる王子から求愛された時も、彼は私の妻になりたいのだと信じて疑わなかった。



「僕がエミリオを孕ませて、お婿に入ってあげるからね。そうすれば流石にエミリオも僕と結婚する気になるよね?」

「止めろ!…そんな汚らわしいことをまさかずっと思っていたなんて言わないよな!?」

「ずっと思っていたよ、エミリオ。僕はエミリオを抱きたいって、毎日毎日思っていたんだ。僕がエミリオを犯したら、どんな顔をして喘いでくれるんだろうとか……嫌がって泣くのかな?とか、何度抱いたら僕の子どもを孕んでくれるんだろうとか、ずっと考えていたんだ」

おぞましい事を言いながら、ギルフォードは自分を服を脱ぎだした。真っ青になりながら私はそれを見ているしかなかった。

恥ずかしげもなく全裸になったギルフォードは、服の上からは想像もできないほど鍛えられた体つきをしており、しかも下腹部の隆起したものは、ギルフォードの可憐な顔と不釣合いなほど巨大だった。

「そんなに珍しい?ああエミリオは処女だから、しょうがないよね……男の勃起した性器なんて見たことないよね?もし見ていたら、ソイツを殺すけど……僕、今からエミリオを抱くんだと思うだけで、もうこんなになっちゃったんだ」

全裸のギルフォードを前にしてあまりの事態に硬直してしまって、言葉も出てこなかった。今まで私はギルフォードに抱かれることなど、これぽっちも考えていなかった。ほんの数分前まで、ギルフォードは自分に抱かれたいのだろうが無理だとしか思っていなかったのだ。
私がその気になれなければ、どうやっても性行為はできない、そう考えていたが、ギルフォードが私を抱きたいのなら、私がその気になれなくても行為は完遂できる。


「僕は君たちの国の慣習が理解できなかったけど、今は凄く感謝しているんだ……だって誰にも触れられたことのないまっさらのエミリオが手に入るんだから。もしエミリオが他の男を抱いたり抱かれたりしたことがあったら、全てを破壊して回りたい衝動に駆られたんだと思うんだよ……そんな純粋無垢なエミリオを僕が今から汚すんだと思うと、堪らなくなるよ」

全裸のギルフォードの圧し掛かられ、ベッドに横たえられる。抵抗しないといけないという思いはあるが、魔法はギルフォードの体質のせいで効かないし、腕力でもかなわないことは先ほどで証明されている。だとしたらもうすることは一つだけだ。

無理やりギルフォードのものにさせられるくらいなら、死を選ぶしかない。
これは私だけではなく、国の人間なら大抵は自害を選ぶだろう。無理強いをされるくらいだったら、潔く死を選択する。


「エミリオ……君が何を考えているか分かるけど、死んじゃったら王太子妃たち殺すからね?見殺しに出来る?騎士としての役割があるんじゃないのかな?護衛としての役割が果たせなかっただけじゃなくって、自害をしたせいで王太子妃たちまで巻き添えにするなんて、騎士の誇りが許さないと思ったんだけど?違うかな?」

ギルフォードの言う通りだ。既にもう私はエルウィンたちを守れなかった。この上、自分の貞操を守るためとはいえ死んでエルウィンたちを守れなかったら、誇りもなにもあったものではない。

「……その通りだ。私は陛下に剣を捧げた騎士だ。貴様に汚されるくらいなんだというんだ。将来の王妃を守るためだと思えば、貴様に犯されるくらい何でもないことだ。好きにしろ」

もはやギルフォードなど王子と呼ぶ価値すらない。貴様で十分だ。

「凄く男らしいね、さすが僕が惚れた男だけあるよ。エミリオ……処女じゃなくなる瞬間もそんな風でいられるか、楽しみだよ……そうそう、ちゃんと僕に抱かれてくれたら王太子妃たちの命は保障する。僕の名にかけて」



*エミリオさんの悲劇が始まる・・・



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