「隊長!第一稿が書きあがりました!」
原稿を書いたのは、第一部隊有志一同。推敲に推敲を重ねての第一稿を書き上げたのだった。
「しかし……何故、牢での切ない一夜で合体をしないのだ!?」
「隊長!まだそこでは隊長の勇士を見せていません!エルウィンは隊長の戦っている姿をみて憧れていたんですよ?魔法や剣を駆使して戦う姿に弱いはずです!戦闘の後の狩猟小屋で、エッチを仕掛けるべきです!」
「そうか、一理あるな。これで陛下の決裁を仰ごう!」
可哀想なのはこの国の国王陛下だった。
優秀な甥に跡継ぎになってもらうのを期待していたのだが、念願の結婚をしてもらったあたりから、甥の行動が怪しくなってきたためだ。
挙句の果てには、甥から変な作戦の決済を依頼され、一ページ目を見て、台本を閉じて決済印を押した。王家の繁栄のため、犠牲はつき物だと。
隣国の国王も可哀想だった。可愛がっていた第四王子から、戦争にはならないので決済をしてくださいと、変な台本を渡され。流石にこんな変な作戦に決済印は押せないと突っぱねたが、無許可で決行されてしまい頭を抱える羽目になってしまったのだ。
王子の持っている領地で爆破騒ぎがあったりしたが、見てみぬ振りをするように部下に命令をすることになってしまい。隣国に文句を言いたくなったが、息子の王子が勝手に国王の印を偽造していて、息子の不始末で抗議するのも……と、国王は隣国への不満を飲み込んだ。
挙句の果てに勝手に婿に行かれてしまったからだ。
「準備は万端か?!」
「準備万端です!狩猟小屋の用意もしました!エミリオ分隊長もエルウィンの護衛任務についてもらっています!」
「しかし、ギルフォード王子が、あまりにも下っ端風の悪役な台詞で嫌だとクレームをつけてきます!」
「エミリオがいらないのか!と返答しておけ!」
「しかし……ちょっとエミリオ分隊長の扱いが酷すぎるような気がするんですが」
第一部隊一同が作成した初稿案にはエミリオ分隊長は登場しなかった。悪役の配役も決まらないまま、漠然と隊長がエルウィンをかっこよく救出する!としていただけだったのだが。
次案では以前隊長が倒した古代竜の子ども竜が復讐するべく隊長の妻子を狙ってというシナリオだったのだが、突然隊長がエミリオ分隊長を生け贄にするシナリオで作成をするように要請してきたのだった。古代竜よりはギルフォード王子が悪役になったほうが、話が進みやすいが。だけど、自分の隊の分隊長を・・・・と思わずに入られなかったが、切欠はどうしてもギルフォード王子がエミリオと結婚したいと再び隊長にお願いしに来たことと、エルウィンがエミリオ分隊長のことを褒めたのがどうしても許せなかったという結末なのだった。
「ギルフォード王子は自分の領地の城を爆破しても良いとまで言って来ているのだ。エミリオも私のためになら喜んで犠牲になってくれるだろう」
勿論分隊長の許可は取っていない。
そして隊長は、部下であり自分の親族の青年を犠牲にしたことなど忘れてハネムーンを楽しんでいた。
「隊長!あんまりハネムーンだからと言ってがっついてはいけませんよ!夜2回、朝1回くらいが限度です!」
「そ、そんなに少ないのか?」
「エルウィンはあくまで異性愛者です!嫌だと思わない程度に絶倫を制御しないといけませんよ!長期計画なんですから!」
「そ、そうか。仕方がないな。これはエルウィンと長い年月愛し合うために必要な措置だったな……」
隊員たちは魔力を駆使して、隊長とテレパシーをしながら日々隊長を指導し、2人のロマンスを見守っていた。その間仕事が滞っていたことは言うまでもない。
誰か魔法の使い方を間違っている、と忠告したほうが良いのだが、部隊の良心のクライス副隊長は産休中であり、エミリオ分隊長は隣国リエラから戻ってきていない。
そして皆、エミリオの存在を忘れていた。
戻ってきたエミリオが台本を見て、切れた時のことを全く考えていなかったのだ。
脳筋の集まりだから……
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