「居てくれるだけで、私は幸せだ……いや、嘘だな。やはりこうしてエルウィンを抱けるだけほうが、幸せだ」

本当に幸せそうに微笑んで、俺を抱きしめて、そして俺の中に全てを出した。

「あ、あの……そろそろ離して下さい」

「何故だ?新婚なのに。結婚をやり直しただろう?」

「でも……その、誰が来るか分からないですし。隊長もあまり無理しないほうが良いですし」

隊長は俺の中から抜かないまま、俺の髪をいじったりキスしたり、恥ずかしいアマアマムードを続行中で、俺は身の置き場がない。
隊長からは相変わらず好き好き光線が出ているようで、今までだったら邪険にしてきたが、そうするわけにもいかない。
となると、俺はどうして良いか分からない。鬼嫁と影で呼ばれてそれが当たり前のように隊長に接してきたから、それがなくなると俺はただの初心者だ。こういうときは普通の夫婦はどうしているんだろうか。クライス様を見習おうと思っても、あそこも変わった夫婦だし、でも今は期間限定ラブラブ夫婦だから見習うために見てこればよかったかもしれない。

とにかく恥ずかしい。ただそれだけだった。

「大丈夫だ。エルウィンと抱き合ったせいだろう。少しづつ魔力が戻ってきているようなんだ。先ほどよりは体調は回復してきている」

「お、俺と?……そんなので元に戻るんですか?」

「交わったことで、エルウィンの魔力がこっちに流れてきているのだろう」

「だったら、早くここを出発しましょう!…あっ」

俺が起き上がって動こうとしたせいで、隊長の物が俺の中で動いて思わず悲鳴を上げてしまった。どうせならこのまま抜いてしまおうと隊長を押しのけようとしたが、再び組み敷かれた。

「エルウィン、私はまだ本調子とはほど遠いぞ?長旅をできるほど回復をしていない。どうしても早く出発をしたいというのなら、もっと協力をしてくれ」

協力って、その、もっとしようってこと?
ここは敵地で、できることなら早く遠ざかりたい場所だ。しかし隊長はまだ本調子じゃないのなら、確かに出発することはできない。そして隊長の魔力が戻れば、きっと誰が襲ってきても勝てないだろうから、心配することが1つ減る。だったら、協力をしないととは思っても。

「あ、あのっ……やっぱり、あの……ルカがっ起きて」

止めようと言おうとして、止めてこのままどうするんだという気持ちでこのまま更に隊長に身を任せようと思いながらも、横を向けば息子が目をパッチリと開けてこちらを見ていたのだ。

「まだ赤ん坊だ。何をしているか分かるわけはないから気にする必要はない……エルウィン私に集中してくれ。私の子を産んでくれると約束しただろう?」

息子を見ないように顔を隊長のほうに固定をされ、激しい口付けをされる。口付けたまま隊長の太いものを抜き差しされ、放たれたもの水音が狭い小屋の中で響いていた。

さっきは痛みもあったが、今はずっと隊長の物を入れられていたからだろう。それほど痛みはなく、だけど最奥まで入ってこられると苦しい。

「さっきので、私の子どもを身篭ってくれたか?……いや、流石に1回では無理だろう?いくら私たちが相性が良くてもな」

隊長の魔力が高いため、さほど魔力の高くない俺とでは非常に相性が良いらしい。つまりとても俺は妊娠しやすいようだ。2回目でルカを妊娠しているが、それはドーピングがあったからで、今回は流石に1回では無理だろう。

「無理ですっ……っていうか、すぐには分かりません」

魔力が完全に無くなるのは一ヶ月ほどしてからで、それまでは不安定になるが、ようするにこの場ですぐ分かるものではない。

「なら、もし私はこのまま死んでしまったら、エルウィンだけでも国に戻って私の子を産んでもらうためにも頑張らないといけないな」

確かに、隊長が死んでしまうかもしれないと思ったから、隊長のためにも国のためにも隊長の子どもを産んであげたい、そうも思った。

だけど、この隊長どう考えても死にそうにない。そう言いたかったが、激しい愛撫と抱き潰す勢いで求められて、反論も出来ず夜が更けていった。


「……ん?朝?……」

夜になったのは覚えている。疲れきって気を失い、数時間眠らせてくれると、また隊長に起こされ、求められ、の繰り返しだった。
だから朝になっても、数時間ごとに起きていたせいか、ぐっすり眠ったという気が全くしなかった。

「おはよう……朝だ。エルウィン」

目の前に隊長の鍛えられた全裸があって、思わず目を背けた。俺の体は凄い。何が凄いって、体中についたキスマークと、噛み跡と、俺と隊長の体液でベトベトだった。
目の前の隊長も俺がキスマークをつけるわけはないので、一見傷はないが、背中は俺と爪あとで一杯だろうし、隊長も俺の出してしまったもので濡れていた。
それが直視できなくって、目線をウロウロ動かして落ち着かなかった。

「体調はどうですか?」

「ああ、もうすっかり全快したようだ」

「じゃあ、帰れますね。国境まで結構長いですから、ルカの食事とか買いたいんですが」

俺と隊長なら3日くらい食事を取らなくても平気だが、まだ赤ん坊のルカには無理だ。俺もう母乳はほとんど出なくなっているし。ほんの少し出た母乳は昨夜隊長に……

「大丈夫だ。このくらいの距離なら、転移魔法を使えば、一瞬で国に戻ることが出来る」

「え?本当ですか?数百キロありますよ」

「エルウィンを助けに来るときも、転移魔法を使って途中まで来た。でなくれば、こんなに早くは来れなかっただろう?」

そう言えばそうだ。隊長は誘拐されたその日の夜に助けに来てくれた。俺は転移魔法なんか使えないけど、隊長だもんな。それくらい簡単なのだろう。
っていうか、俺は早く出発しようと言っておきながら、この状態では馬に乗ることはできなかっただろう。腰が立たないだろうし、体力は隊長に根こそぎ取られた。

「じゃあ、早く帰りましょうよ……何時までもこんなところに居たくありません」

誘拐され、死ぬほど怖い目に会った地だ。今すぐにでもこの地を去りたかった。

「エルウィンには嫌な思い出だっただろうが……私にとっては、エルウィンと再び結ばれた記念すべき地だ。名残惜しいがな」

「恥ずかしいこと言わないでください……」

「本当のことだ……国に戻ったら夢が覚めてしまわないか?このままハネムーンを兼ねて、ゆっくり国に戻らないか?エルウィンを離したくないな」

昨夜の名残で情熱的に抱きしめてくる。

「嫌です……いくら隊長の魔力が戻ったとはいえ、またギルフォード王子がいたら魔法が使えなくなって同じことが起こるかもしれませんよ……新婚旅行をしたいのなら、国に戻ったら行きましょう。だから」

「エルウィンっ!愛している」

早く帰ろうと言ったのに、結局帰れたのはそれから一時間後のことだった。




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