「エルウィン……私は、今日この日生きていて良かったと思った。ありがとう」

蒼白だった顔をわずかに紅く染めて、隊長は俺を見つめた。その顔に確かに嘘偽りはなかっただろう。とても嬉しいという表情をしていた。

「エルウィン、愛している」

何時もだったら、良いか?と聞いてくる彼は、今日はそうは言わずに、俺をそっと倒し、圧し掛かってくる。良いか?と聞かれたら拒否するつもりはなかったが、だけど。

「た、隊長……っ。隊長は、具合が良くないですし。その、まだ昼間ですし」

今にも死にそうだった顔色をしていて、おまけにまだ明るいし、何時追っ手が来るか分からない。もしかしたら仲間が来てくれるかもしれないし、どれをとっても今はしたくない。

「エルウィン、私は何時死ぬか分からない。今エルウィンと結ばれずに終わってしまう可能性もある。お願いだ、私を受け入れてくれ」

「隊長……」

裏を返してみれば、確かに隊長は何時急変してもおかしくない状態だし、追ってが来たら今度こそ駄目かもしれない。隊長と触れ合えるのは今日が最後になる可能性もあるんだ。

「分かりました……隊長、来てください」

今までは全て無理矢理だったせいか、物凄く恥ずかしい。しかもこんな明るいし、真横には息子だって寝ている。
合意の上で抱き合うのって、こんなに恥ずかしいものだったなんて。
子どもまでいるのに、今更恥ずかしがるのもおかしいんだろうけど、恥ずかしいものは恥ずかしい。

「そう恥ずかしがるな……私まで緊張してしまう」

「でも……」

隊長は黙々と俺の服を脱がし、自分も脱いでしまう。やはり明るくて、全て見えてしまう。俺だけじゃなくって隊長の裸も当然見える。
意識してそんなに見たことはなかったので、隊長の鍛え抜かれた肉体が圧し掛かってくるのを、まるではじめてみたいに眺めていた。俺も軍人だったのでそれなりに鍛えていたが、今は専業主婦をしているので、隊長みたいに筋肉に覆われていない。それが余計羞恥を煽った。
黙っていると隊長はカッコいい。特に今日は、俺とルカを命がけで助けてくれて、魔法を駆使した姿も剣を使う姿も、初めて見た時の隊長のようで、憧れていた隊長が帰ってきてようだった。

本当に俺今から隊長と、と現実味が帯びてきた。
拒否の連続だったので、もう一生しないのかな?と思っていたのかもしれない。

「エルウィン、なんて可愛いんだ。とても綺麗だ」

「あんまりっ見ないで下さい」

どこを見られているか分かっている。見られたくなくて、隊長の首に両腕をかけて胸に抱きこんだ。こうすれば見えないだろうと。

だけど、抱き込んだ先で舌をはわれ、ビクリと震えた。気持ちが良いと言うのだろうか。でも、よく分からない。初夜だって覚えていないし、結婚してルカを授かったときも、それほど覚えていない。あの時は薬を使われていたから。
でも今は、素面でどう反応して良いか分からない。

「やっ、隊長……そんなこと舐めないで下さい。早くして、その……終わらせてくださいっ」

「私だけ気持ちよくなっても仕方がないだろう?……エルウィンに痛い思いはさせたくない。私も初心者に等しい……お願いだ。優しくさせてくれ、エルウィンにも気持ちが良くなって欲しい。私と愛しあって嫌な思い出にさせたくないんだ」

「だって、その、何時誰が来るか分からないですしっ……あ、ルカが起きるかもしれないですしっ」

俺のわずかな抵抗は無視して、隊長はそのまま愛撫を続けてきた。俺は変な声が出るのが嫌で、横を向いて口で手のひらで抑えていると、隊長がその手を剥がしてキスをしてきた。
キスのせいでわずかばかりの拒絶も言うことができなかったし、声を抑える必要もなくなって俺と隊長は長い間口づけをしていたように思える。しかしその間も隊長は手で俺の体中に触れ、準備を進めていった。
その間隊長は何も言葉を口にしなかった。けど、きっとその方がいい。隊長から出る言葉はきっと何を聞いても恥ずかしかっただろうし、こんな場面で可愛いとか好きだとか言われたら、もう俺はどうなるか分からなかった。

足を開かれて、俺のコンプレックスになっている部分すら見られた。隊長はそこも口でして、俺は何も会話がないことに感謝をした。お願いだから早く入ってきてと、もう最後には懇願をした。

「あっ、隊長……」

痛くないようにしてくれたんだろうが、流石に隊長を受け入れるのは楽ではなかった。歯を食いしばって耐えていると、隊長も辛いようだった。
当たり前だろう。ここまで来るのに長い時間かかっているし、動きたいだろうに俺が慣れるまで我慢してくれているようだった。

「隊長、良いんですよ……好きにしてくれて」

「エルウィン、ありがとう。私を受け入れてくれて……異性愛者のお前には辛いだろう?」

「いいえ……今日は嫌じゃありません」

もう一度隊長は俺に口付けをすると、ゆっくりと動き出した。全身を隊長に支配されているみたいで、けどさっき言ったみたいに嫌じゃなかった。

「隊長っ…今日、俺を守ってくれたとき……凄く素敵でしたっ……国王様になるのがもったいないな、って思って」

隊長は、今はまだ第一部隊に所属しているが、そのうち誰かに隊長の地位を譲って国政に専念をすることになる。せっかく魔力も剣もあれだけ使えるのに、もったいないなと思うのは俺だけじゃないはずだ。

「私のことを、少しは好きになってくれたか?……エルウィンの伴侶に相応しいか?」

手つきは優しく、でも俺を揺さぶるのは荒々しく隊長は俺を抱いた。
隊長が俺に相応しいかって?
俺のほうが隊長に相応しいのだろうか?俺は何も出来ないのに。


*まだ続くよー
ここまで長かったね!隊長・・・29歳3回目です!



- 43 -
  back  






×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -