次期王妃として王宮に移ってきて一ヶ月ほどたち、ここにもようやく慣れ始めた。
王妃教育ってどんなの?とびびっていたが、それほど厳しいわけでもなく、そもそも隊長が国王で政務をするわけであって、俺がするわけではない。基本的に男性が王妃なことが多いので、独立心に溢れている人も多く、個別に仕事を持っていることもあったらしいので、俺も部隊に居続けたいなら良いよとまで言われていた。
まあ、危ないことは駄目なので、内勤ならという注意はあったが。
隊長は大反対なのでどうしようというのはあったが。仕事よりも先に第二子というプレッシャーが周囲からはあって、それは気鬱ではあった。

「エミリオ分隊長……俺ってもし仕事に復帰したとしても、護衛つくんですか?」

「それは仕方がないだろう。王妃が護衛もなく王宮の中とはいえ、一人にできるわけはないだろう」

まあ、それもそうだろうけど。

「復帰する気はあるのか?」

「そうしたい気もありますけど、ルカがいますしね……いずれルカも王太子になるでしょうから、今のうちに寂しい思いをさせないで可愛がってあげたいんです」

もう第一線で騎士というのも無理だろうし。
隊長もあのままだったら、一生武人だっただろうに。あれだけの剣の腕と魔力を持ちながら、もう使うことはないのかと思うと少し残念だ。隊長の凄いところNO,1のところだったのに。

「それに……やっぱり、王妃としての仕事がまったくないわけではないですし」

国賓が来た場合は当然俺も接待したいといけないらしいし。すると、部隊の仕事は滞ってしまい、皆に迷惑をかける結果になる。

「まあ、そうだな。なかなか両立は難しいだろう。今日も……実はあまり言いたくないが、ギルフォード王子が大使館でお茶会をするので参加してくれないかと招待状が届いているんだ。各国の大使夫人だけが参加するらしいので、そう堅苦しい会ではないが、どうする?」

「隊長が、出てくれないかって言ってました。あまり無理強いする人じゃないのに珍しいですが、それだけ重要なんでしょうかね?行きますよ」

どっちかっていうと隊長は公爵家にいた頃から、城から一歩も出なくて良いっていう考えというか、過保護だったので意外だったが、王妃になればこういう集まりも増えていくんだろう。

息子も一緒にぜひということだったので、エミリオ分隊長を護衛に大使館へ向かった。なんでも、奥様方の会らしく、大使夫人たちも子どもたちをつれてくるらしい。何でギルフォード王子が奥方たちのお茶会を開いているかは謎だが。隊長に結婚を迫っていただけあって、王子は独身らしい。

「お招きいただき、ありがとうございます。殿下」

「こちらこそ、招待を受けていただいて、嬉しいです。こちらが、未来の国王陛下かな?父君に良く似ていますね」

ギルフォード王子は、俺にライバル発言をしてきたにも関わらず、友好的に話しかけてきた。まあ、向こうから招待しているのに嫌味連発では大使としてやってはいけないだろう。

「そうですね。ルカは父親に良く似ています」

性格まで似ないといいけど……まだ一歳にもならないので、当然変態の片鱗も見せていない。将来好きな子ができたら、相手がルカのことを好きになってあげて欲しいと真剣に思っている。だって隊長よりも、ルカのほうが身分が上になるだろう。隊長は俺と結婚する時は隊長にすぎず、しかしルカが求婚する頃は王太子か国王になっているかもしれない。つまり、やろうと思えば国家権力も使って、やりたい放題できるのだ。

なのでクライス様と対策を練りあったりしているけど、最近これって無駄なんじゃないだろうかと思い始めていた。公爵夫妻は普通の人に見える。その普通の方が育てて普通に育ってきたのに、二人兄弟がああなってしまったので、もう遺伝としか思えない。育てじゃないんだと思う。

ちなみに穏やかに見える公爵様も、国家機密だそうだけど、王弟であった公爵夫人と無理やり結婚したんだそうだ。公爵と王弟なら身分的にもつりあっていて何の障害もないように見えるんだけど、元々王弟は1つ向こうの国の国王に嫁ぐことが決まっていたのに、略奪したそうで……まあ、あの兄弟二人見ていれば、どんな略奪の仕方をしたかはよく分かると思う。

内々に何とか治めたようだけど、一歩間違えれば戦争になっていたよな……と思う。
だからルカも、父親も祖父も……な性格をしているので、絶対に両思いになってもらわないと困る。何で一歳にもならないうちからこんなに心配しないといけないんだろう。


「可愛いね、僕もこんな赤ちゃん欲しいな……でも、振られちゃっているし。ね、抱っこさせて?」

隊長が王子と結婚していれば、ルカの母親は王子だった可能性もある。あまり一応ライバル宣言をしている人にわが子を抱かせたくないが、ここで断るのも悪い気がするし、そんなに性格が悪そうにも見えないし。ただしエミリオ分隊長は、ギルフォード王子は暗黒大魔王と言っていたけど。

王子はルカを抱っこしてお茶会の席まで俺を案内し、各国大使夫人たちに引き合わせてくれた。しかし俺が覚えていたのはそれまでだった。




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