「ということを、国王陛下から言われましたが、まさかエッチしたいがためだけに、国王陛下をそそのかして、俺に命令をさせたんですか?」

「ち、違う!エッチはしたいが!だが、陛下に二人目はそろそろかと聞かれ……ユーリのところに二人目ができたから、私もそろそろではないかと尋ねられたので、私はエルウィンに性生活を拒否されているのでそれはないと答えただけだ!」

「何でそこで濁さず正直に答えるんですか!?」

「だが、陛下に嘘はつけまい。私は陛下に剣を捧げた時から、嘘偽りなく、陛下にこの命を捧げますと!」

「それは分かります!ですか、もう少し濁しようもあったでしょう……こればかりは授かり物ですからとか!」

「授かるチャンスがこれっぽっちもないのに、そんな嘘を言うほど私は厚顔無恥ではないぞ!私は私の良心に従って正直に言っただけだ!」

確かに隊長は間違ったことは言っていないのかもしれない。
オブラートに包んでとか。言い方とか、人付き合いとか、そういうことは全く考えていないが。
嘘をつけない正直な人……といえば聞こえがいいが、空気を読まない男なので困る。しょうがないよね、だって今まで空気を読むほうじゃなくて読んでもらうほうだったから。

「では……正直に言った結果、陛下から俺に隊長とエッチするように命令(命令されたわけではないが、似たようなもの)が下ることを、全く期待していなかったと、そういう訳ですね?」

「いや、その、これぽっちも期待していなかったといえば、それは嘘になるが……もしエルウィンがその気になってくれれば、それにこしたことはないかも…と、わずかに期待していたことは否定はしないが」

出た。男らしくなく、他力本願でエッチを迫ろうとするところが。せめて男らしく初夜の日みたいに問答無用で押し倒してくれれば良いのに。俺がやりたいやりたくないにかかわらず、やれば良いのにと思うのだが。勿論俺だってやりたくない。
だって異性愛者というだけじゃなくて、隊長がスマートじゃなくってかっこよくなくって、変態だから。だからいっそ、無理やりやれよって思う。
良いか?って聞かれたら、良いわけないだろ。ってなるんだから。素直にやりたいわけがないだろう。
初めはあんなに強引だったのに、なぜ結婚したとたんにヘタレるんだろうか。
まだ結婚前の隊長は強引だったけれど、かっこよさに陰りがなかった。
しかし、今はどうだろう。

「はあ……」

29歳で1児の子持ち、ただし経験回数2回。それが隊長のスペックだ。仲間たちからも散々かわいそうだと言われている。

「昔のように、威厳のある素敵な隊長に戻ってくれれば、俺も応じるって言っているでしょう。陛下を巻き込まないで下さい」

「部下たちと、エルウィンが私の嫌いなところ100選を1つ1つしらみつぶしで、改善していった!……もう、昔のカッコいい私に戻れたか?」

だから、そういう物欲しげなところが駄目なんだけどと言いたい。毅然としていて、目線だけで怖かったあの頃の面影は……

同僚たちからの聞き取り調査により、隊長の改善報告書があがってきたが。俺はそれを見ながら、若干改善された部分はあるものの、夜の生活をするには決め手にかけると思っていた。だってかっこよくないから。

「……パンツ捨てたって本当ですか?」

「そうだ!とても、とても辛かったが、エルウィンとのエッチのために身辺整理をしたんだ!」

「どこに捨てたんですか?」

「え?」

「ちゃんとごみに出したんですか?燃やしましたか?」

「いや、その」

「どうやって整理をしたんですか?」

正直隊長が簡単にごみの日に出すとは思えないんだけど。だって、隊長の宝物らしい俺のパンツをそこらに捨てておいたら、誰かが持ち去ってしまうかもしれないという馬鹿馬鹿しい被害妄想に駆られそうな気がするから。燃やして捨ててくれたら良いんだけど。

「ほ、宝物庫に捨てた」

「……宝物庫って……それって捨てたって言わないでしょう!はっきり言いますけどね!隊長がユーリ隊長みたいに、かっこよくって強引だったら、俺クライス副隊長みたいにとっくに二人目ができていたかもしれませんよ!」

「エルウィン!……まさか、私よりもユーリのほうが好きだとでも言うのか!?」

「パンツを宝物庫に仕舞い込んで捨てたと嘘をつく隊長よりも、強引だけどスマートでかっこいいユーリ隊長のほうがずっとマシです。俺の旦那様がユーリ隊長だったら、男相手でも上手くやっていけたかもしれないですね。ね〜ルカもパパが隊長よりもユーリ隊長のほうがよかったかもしれないよね」

息子を抱っこすると、隊長によく似ているが愛らしい笑顔を振りまくルカを見ながらそういった。チラっとそのルカによく似た父親を見ると、シクシク泣いていたので、またげんなりとしてしまった。

息子は隊長によく似ているが、可愛い。隊長の子だから可愛がらないとかはない。
だけど、正直もう一人はいるから良いじゃないかって気持ちにもなる。だってルカに出来たときの状況説明できないし。お母さんが騙されて結婚させられた初夜に受精促進剤飲まされて出来たのがルカだよなんて言えない。
次の息子が出来たら、お母さんは国王陛下にスペアが欲しいからと命令されたから作ったんだよ、なんて言いたくないし、お父さんに泣き落としされてどうしてもエッチしたいからと土下座されたので、できちゃったとかも言いたくない。
ルカもだけど、次の子も相当可哀想だろう。

まあ、ユーリ隊長のところも、長男は強姦して結婚するために作った子で、次男(まだ妊娠3ヶ月)はお母さんが魔法にかかりやすくなるために作ったんだよ、とかも可哀想だけど……でも、ユーリ隊長はそれに勝る愛を感じるから、隊長よりは許される気がしてならない。
そもそも同僚が必死に隊長を矯正したらしいが、どこが変わったかさっぱり分からなかった。
まあ、夜、人の寝顔を見ながら自家発電だけはしていなかったようだけど。



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