「隊長ってあれだけど、弟夫婦は仲良いよな」

部下一同に、あれと思われる隊長夫婦。隊長の性生活は、部隊に知れ渡っている。
何せエルウィンを強姦しようとしたあたりから筒抜けであり、今は一切の性的交渉を許されていないことまでもだ。

普通は他人の性生活など知らないだろう。しかも公爵家の長男一家のことなど、普通は流れてこない。しかし隊長本人がただ漏れにしており、第一部隊の隊員の精神状態は、その隊長に左右されているといっても過言ではない。

つい先日は隊長の命令によりパイパンにされ、今は解除となったが被害をこうむっている隊員たちは数限りない。

しかも隊長の暴走を制御してくれるはずの副隊長は、先日二人目を授かり、産休に入ってしまったのだ。暴走を止める人がいないのだ。

「あの副隊長って、物凄いツンデレっぽっていうか、一生孤高で過ごしそうだったのに、ユーリ隊長と電撃結婚しちゃって。二人目だろ?ただでさえ、ユーリ隊長と副隊長って魔力が強いから反発しあってできにくそうなのに、そうとうやってるんだろうな」

「ユーリ隊長がべたぼれかと思いきや、副隊長も旦那のことを熱愛しちゃっているみたいだし、ほんと分かんないよな」

隊員たちは恐ろしく怜悧な副隊長しか知らなかった。だから、ある日自分のところの副隊長が旦那とそれは仲むつまじくイチャイチャしているのを見てしまったことに、驚きを隠しきれなかったのだ。

公爵家の次男夫妻はとても愛しあっていて、中睦まじい。これは誰もが知っていることであった。
勿論、中身は知らない。


IN真実。

「エルウィン、これから1年くらいの俺を見ないでくれ!見ても忘れてくれ!」

「……クライス様、どうなさったんですか?」

「俺は……また妊娠している」

「え?……おめでとうと言うべきですか?」

「そんなわけないだろう!!二度と孕ますな!とあれだけ言って約束させたのに、ユーリの腹黒め!……あいつをほんの少しでも信じた俺が馬鹿だったんだ」

「あの、でも、仕方がないですよ。相手はあのユーリ隊長ですから」

「出来ちゃったものは仕方がない……だが、俺は妊娠している期間おかしくなるんだ……魔力の抵抗値が極端に落ちるから、ユーリの精神魔法に抵抗できなくなる。その間、俺はユーリがとても頼りになる素晴らしい男で、好きになってしまうらしいんだ……」

「……でも、別に夫婦なんですし。そんなに気にしなくても良いんじゃないんですか?」

「なら、お前は自分の意思でもないのに、隊長が好きで好きで仕方がなくなってイチャイチャラブラブしていて、それを他のやつらに見られている自分を想像してみろ!!」

「……気持ち悪いですね」

「そうなんだ!だからそんな俺を見ないでくれ!!……ああ、ホントにまずいんだ。以前は妊娠初期は大丈夫だったのに……だいぶ後半にならないとユーリの魔法にかからなかったのに、今は初期なのにもうまずい……今は目の前にユーリがいないから平気だけど、ユーリを目の前にすると、好きで好きでたまらなくなるんだ。2度目にかけられているから、かかりやすいのか、抵抗できないのか分からないが、いたたまれなさ過ぎて仕方がない!」

「クライス様!妊娠中なのに、そんなに嘆かないで下さい!体に良くないですよ」

「そうだよ、クライス……ごめんね、エルウィン。俺の奥さんが変な事言って。クライスが俺のこと好きなのは当たり前のことなのに、何を言っているんだろうね?マタニティーブルーなのかもしれないね……ね、クライスはずっと前から俺のこと愛しているよね?俺の子どもできて嬉しい?」

「嬉しい……ユーリの赤ちゃんがまた産めて幸せ」

「だよね、ふふ」


ユーリもエルウィンも隊長のように吹聴して回ったりしないので、こんな弟夫婦なのを誰も知らない。

しかし長男夫婦は知られている。

「エルウィン……そろそろ、やらせてやったらどうだ?ユーリ隊長のところも二人目できたんだし、お前もそろそろ二人目を作成をさせてやったら」

と、部隊での友人たちが二人目を作らせて上げたらどうだ?と頻繁に訪ねてきては、薦めるのだ。

「帰れ!」

と、毎回のように追い返されるのだった。

「隊長申し訳ありません!今日も、夫人に具申しましたが、力が足らず追い返されました!」

「俺もです!」

「私もです!」

一見するとこれまでの経緯で、隊長がまた部下たちに無理強いをしているかのように思えるかもしれない。
だが、彼らは自発的に隊長とエルウィンをくっ付けようとしているのだった。
初めは、これ以上被害を受けないようになんとかエルウィンを説得しようと思ったのが発端だった。
だがこんな隊長でも、皆に愛されているのだった。


「隊長、夫人のパンツは捨てましたか?!」

「残念だが、全部処分をした。身が引き裂かれる思いだった……」

「物欲しそうな目で見ていませんか?以前の威厳のある目でいてください!」

「夫人をおかずにして目の前で一人エッチは厳禁ですよ!」

「夫人との性生活を一切口にしてはいけませんよ!」

部隊員たちはエルウィンから隊長への不満一覧を表にし、一個一個ピックアップしては隊長に言い聞かせている。

「ちゃんとやっている!どれほどエルウィンのイヤラシイ肢体を見ても、欲情しないようにユーリに魔法をかけてもらっている!」

いや、隊長魔力強いんでそんな魔法をかけてもらっても無意味じゃん……と思ったが、突っ込むことはしなかった。それだけ隊長が努力をしていることを知っているからだ。

「隊長!もうすぐですよ!隊長の嫌なところリスト100の克服はもう少しです!これが完遂できれば、エルウィンとエッチできるはずです!みんなと一緒に頑張りましょう!」

「私はいい部下を持って幸せだ!」

副隊長がいないせいだろうか、もはや第一部隊は機能しているのか、不明だった。

そのころの公爵家

「エルウィンも一緒に二人目を作って、一緒に妊娠生活を送ろう!」

「クライス様!旅の恥はかき捨て……じゃないんですから!嫌ですよ」

「俺だけ不幸じゃないか!」

「そんなことないですよ!とってもクライス様幸せそうですよ!……昨日もユーリ隊長と仲良くお風呂に入って」

「やめろやめろやめろ!見るなって言っただろ!」

「見てないですよ。クライス様がさっきそう言っていたんですよ。ユーリ隊長がいなくなっても、最近暗示が消えにくくなってますよね。大丈夫ですか?」

「………大丈夫じゃない……このまま出産後もずっとこの状態だったらどうしたら良いんだ?」

「それはそれで、幸せじゃないんですか?」




副隊長は、自分がどうなるか分かっているので狂乱気味★
エルたん、だんだん公爵家でもっとも恐妻家になっているかもしれません。



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