私は医者です。医者なんです。軍医です。たぶん、派遣された先の上司がいけなかったのだと思います。
私が一番先に配属されたのは、ユーリ隊長が指揮をとる、第3部隊の軍医としてでした。
問題のない上司のはずでした。
しかしある日、無理難題を吹っかけられました。
第一部隊の副隊長を妊娠させ産ませるつもりだが、相手が同意しないので、想像妊娠で実際は妊娠していないと言えと命令されたのです。
私は医者です!そんな嘘をつくなどと、医者としてあるまじきことなのです!
ですが……私は小心者です。ユーリ隊長を目の前にして嫌とはいえませんでした。隊長の精神魔法できっと操られていたのです!
許してください、副隊長!
でも、そのおかげで一人の子どもの命が助かったのです。私は人助けをしたんです!……そうですよね。

ユーリ隊長が怖くて、転属願いを出しました。新しい配属先は第一部隊でした。ユーリ隊長の兄君がおさめる、評判のいい部隊です。隊長も私に無理難題を言いませんでした。はい、さっきまではね。
今度は、追い掛け回して眠っているところを強姦したエルウィン隊員に、妊娠していると診断しろというのです!
妊娠していたら、そのように告げろ(これは問題ないです)
妊娠していなくても、妊娠していると嘘をつけと!
私は医者なのです!偽造は犯罪なのです!

でも、でも、隊長の目を見ていると。隊長の時封魔法で時を止められてしまったのかもしれません。気がついたらエルウィン隊員に妊娠していますと言ってしまっていました。
私はお二人の結婚に手を貸す悪事を働き、その結果尊い一人の子どもの命を授かったのです。

私は、名前は伏せ、二人の赤子の出生に手を貸してしまったと友人に懺悔したところ、私がこの国の後継者たちを作ったのだと褒めてくれました。気にするなと……なんと優しい友人なのだろうか。あれ?私は彼らの名前を言っていないのに、なぜ国を救ったのだと分かったのだろうか。酒を飲んでいたのでその疑問には、至らなかった。
その流れで何故か、子どもを作る手助けが上手いので、彼の子を作るのを手助けして欲しいと言われ、どういうわけか私もこの国ではあるまじきできちゃった結婚をしてしまったのです。

そして産後、私は再び第一部隊に戻りました。
また部隊を転属したいんですが、短期間にそう何度も出来ないそうで……騙す結果になってしまったクライス副隊長と顔を合わせないように必死でした。
勿論、私に理不尽な命令を下したご兄弟たちとも、です。
しかし、また今日も無理難題で理不尽な命令を下されてしまいました。

*****

俺の仕事は隊長の飼育……いや、保育だろうか。
なぜあの独占欲の強い夫(不本意)が、過去好きだった男のそばで仕事をするのを許したのかは、ユーリの隊長幻滅計画によるものらしい。
計画は成功したが、ユーリをも幻滅させてしまうW効果があったのだから、計画は半分しか成功していないともいえるだろう。
しかし俺は現在も隊長の補佐で、ユーリの妻でいる。
あれほど嫌っていて死んでも結婚するかと心に誓っていた男と、一見円満そうな夫婦でいるのって一体なんなんだろう俺はと思わないわけでもない。
俺たちが不仲な夫婦だと知っているのは、エルウィンだけだ。隊長は知っているのか良く分からない。そういう話はしないからな。
あとは、俺を誤診した軍医は……事情は知っているのだろうか。誤診というかユーリと脅されて妊娠していないと嘘を言ったのだろう。それほど顔を合わせることはないが、たまに見かけるとコソコソ逃げていくを発見することがある。
しかし、俺も過ぎ去ったことで嫌味を言うほど大人気ない男ではない。どうせ、ユーリに脅されて言うとおりにせざる得なかった被害者だろう。
そう思いながら自室へと向かった。勿論実際の住居は今は公爵家に移してある。だがたまには夜勤が回ってくることもあるし、仕事は家に持ち込まないので、与えられた宿舎の部屋でユーリのいない時間を楽しむこともある。
城ではアンジェ(息子)がいるので、自分一人の時間ばかりとるわけにもいかず、いつもは早く帰るようにしている。
名前のように天使のような子どもで、本当にユーリの血を引いているのか疑うが、あの兄弟も昔は普通だった。むしろ常識的過ぎるほど常識的な男だったように思えるのに、ふたを開けてみたら、笑って強姦するほうな男に成り果てているので、いくら愛らしくかわいい息子とは言え、しつけを間違ったらユーリの二の舞になりかねない。しかし、アンジェの名前はユーリが名づけたらしいが、あの一家は男らしい顔をしていてかわいらしい名前をつける一族なのだろうか。
しかし城にいてもユーリがいるし、仕事にきても何故かシフトがユーリと重なっていることが多いため、出勤も帰宅も重なることが多い。そのせいで自分一人の時間はほぼないに等しい。
こうやって1時間くらい宿舎でぼんやりするのが、唯一の自分の時間だろうか。

そんなふうに思いベッドで横になっていると、重なってくる体温と重みに目を覚ました。

「ユーリ……重い」

勝手に人の部屋に入ってくるなとか、ノックくらいしろとかは言っても無駄なので言わない。

「クライスが帰ってこないんから心配したんだよ?一緒に帰ろうと思ったのに」

「何時も何時も一緒にいる必要もないだろう。うざい」

「俺はクライスと何時でも一緒にいたいのに……酷いね。城に戻るとあの子にクライスを占領されちゃうし。最近甘やかしすぎるんじゃないか?」

甘えんぼは、息子よりユーリのほうが余程酷いと思う。俺がアンジェを抱っこしていると、奪い返すようにユーリが背後から抱いてくるし、俺はアンジェを離さないと3人引っ付いて団子状態になっているし。一緒に寝ようとすると、息子を子ども部屋に追い返してくるし。
とにかく夜独占しようとしてきて、うっとうしいことこのうえない。

「お前……お前が無理やり作ったのに、アンジェを可愛がらないなら、ただでさえこの世で1,2を争うほどお前への好感度は低いって言うのに、ダントツ一位に格下げしてやるぞ」

「え〜?俺は俺なりに愛しているし可愛がってあげているよ?……今日も、先に帰って、一緒に寝かしつけてやってきたんだよ。で、今夜はここでクライスと二人きりで熱い夜をすごそうと思って戻ってきたんだ」

それはただ単に己の欲望のためだけだろう。
基本的に俺はユーリの言うことなど信用していない。この男がどれだけ俺以外のものを大事にしているのか、いまいち分かりにくい。

「信用していないだろ?クライス以外から生まれた俺の子どもだったら何とも思わなかっただろうけど、クライスが産んでくれた子どもだから、本当に大事に思っているよ?」

なんとなく思い出して嫌な気分になってきた。それはもう、アンジェを孕ますためにされたことの数々だ。
俺の子を身ごもって欲しいとか、孕ませたいとか、散々犯されて中出しされまくったのだ。その際にすごく大事にして見せるよとか、いっていたような気もするが。
胡散臭そうな俺の視線に気がついたのか、ユーリはまたいやな目で俺を見てきた。いやな目とは魔力のこもった目線だ。

「よき父によき夫になって、クライスに愛してもらいたいんだ。だから、俺努力しているんだよ?ね、だから二人目作ろう?」

「待て!何で努力することが、イコール二人目を作ろうってことになるんだ!」

「今度はクライスに似た子が欲しいね。クライスに似ていたら、もっともっと可愛がるよ」

「アンジェだって俺に似ているだろ!」

息子は、どちらかというと俺似……のような気もする。周りは両方共からいいところを貰ってきたね、と言われるが、要するにどっちにも似ているらしい。

「そっくりな子が欲しいんだよ!……ふふ、ここってアンジェを作ったところだよね」

ギクリとした。この部屋で俺はほとんどユーリにやられていたといっても過言じゃない。だから、アンジェができたとしたら、確かにこの部屋だっただろう。

「それに、初めて俺がクライスを抱いたのも、ここだったよね。ここで結ばれて、ここで子を授かったから、この部屋と相性がいいのかもね。最近頑張っても、なかなか二人目できなかったけど、ここでならできるかな〜♪」


―――クライス、部屋に入れてくれるかな?

―――愛している……兄さんなんかには渡さない。俺だけのものにする。

―――凄いね……俺、クライスの中にいる。もう一生離さないよ。

どう考えても抱いたんじゃなくって強姦したんだろうが。
ユーリは強姦したことは認めているし、常に無理やりやってくるが、言葉を美化する傾向があって、俺から言わせれば、ここで無理やり押し入ってきて、有無を言わせず強姦したことが、ユーリに言わせると結ばれてという素敵な言葉に変わるのだ。

―――クライス、俺の子どもを孕むんだよ?

―――明日結婚しようね。だって俺、クライスの処女奪っちゃったし。え?嫌?何で?しきたり破るの?一生結婚してくれない?なら、何度も抱くからね?で、俺の子を孕ましてみせるから。

よく思い返せば、強姦至上主義というよりも、孕ませ至上主義者じゃないのか?ユーリは

「って!止めろ!子どもはもう作らない約束だろ!」

「俺はたくさん欲しいんだけど?そろそろ二人目作っても良いだろ?」

回想しているうちにユーリはほぼ俺を全裸にしてしまった。

「俺のここ、クライスの中に入って、クライスを孕ませたくって仕方がないって?ね、入れてよ」

入れてという割には、同意しなくても無理やり入ってこようとするそれに、蹴りを食らわせた。

「挿入主義もいい加減にしろ!孕ませ主義もな!いきなり入れようとしたら痛いだろ!このアホユーリが!」

痛いと痛そうな顔をしても、魔力であっという間に回復してしまうため、意味がないほどだ。ゴキブリのように生命力が強すぎて、こっちがいくら殴っても魔法で攻撃しても、一瞬で回復してしまうのだ。

「痛くても、すぐ俺が回復魔法かけてあげるから大丈夫だよ。でも、でもいきなりやろうとしてゴメンネ。この部屋だと、あのころのことを思い出してつい興奮しちゃって、我慢ができなかった」

気を取り直してとでも言うように、俺を抱きしめなおしてキスをしながら慣らしてくる。ユーリのものが蹴り倒しても猛ったままで、腹の間に当たっている。

「愛しているよ、クライス。死ぬまでに、クライスも俺のことを愛してね?」

本当に気が長いというか、頭がおかしいというのか。

抱きしめたまま、俺の慣らした後口に雄を押し当てて挿入してくる。何度経験しても、嫌だ。憎い男の性器が入ってくるのだ。
と思っていたのだが、だんだん慣れてくるので、嫌悪感が薄れてくるのも事実で、もう割とどうでもいい気もしている。
そういうと、精神魔法が効いているのかな?とか、愛し始めてきているんだとか言われそうで嫌なので、言わないが。

「興奮するこの部屋だからって、妊娠させようとするなよ?」

「……分かっているよ」

俺は勿論半分以上信じていない。信じていなかったが今までアンジェを産んでから妊娠していなかったので、嘘を言っているかどうか図りかねていた。


*****

クライス副隊長が、魔力がなくなったと診断を受けに来ました。
物凄く不機嫌そうな顔をしています。

「あの、その……また、想像妊娠です!」

勿論信じてくれず、ユーリ隊長にハイキックをかましていました。魔法が使えたのなら、クライス副隊長の得意技の雷撃魔法を食らわせていたかもしれません。副隊長殿……妊婦さんがハイキックは止めてください!

ユーリ隊長は『やっぱりあの部屋と相性が良いんだね』と笑っていました。



END
ユーリたんとクライスの2人目作成編です!
ユーリの念願の二人目です。
隊長もこれくらい上手くいくといいね・・・・
何か感想があれば喜びます♪





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