自宅の城に戻すとマリウスがいないことに気がついたロベルトは、本宅のほうにいるのだろうと迎えに行った。
勿論マリウスが家出していたとは思いもよらない。アルベルとアルトもいなかったので、戻っていないだけだと思ったのだ。

「は?……マリウスが家出? ここに?」

「そうだ!」

「何故?」

勿論ロベルトに家出されることをした覚えはない。また目の鼻の先の同じ敷地内に家出しても家出というのだろうかと首を傾げた。

「お前が昨日抱いてやらないからだろう!!!!! 妻に恥をかかすな!!!!!!」

「え?……」

「昨日のな、母子共に健康ですって報告は、医者の許可もでたから抱いて欲しいってマリウスが言っていたんだよ。なのに、お前はそのまま寝たらしいな。マリウスはお前に飽きられたと思って泣いて泣いて、出て行くって言ったんだ。しかもあの小さな家を手切れ金に貰って二人の子どもを育てていこうとしていたんだぞ!」

「……何でそこまで思い込むんだ」

ロベルトにしてみたら、一度抱かなかったくらいでもう別居で離婚(離婚は出来ないので、籍だけ残して別れること)でシングルマザーになるまで考えるのか、マリウスのネガティブ思考は勿論分かっているが、飛躍しすぎだと頭が痛くなった。

「それがマリウスだからだ!」

「そうですね。分かっていますよ……ありがとうございます、引きとめてくれて。一人で家出されたら、勿論すぐに迎えに行きますがそれまでまた悩んで泣いていただろうと思うと、母上たちが慰めてくれていたらマリウスも少しは気が紛れただろうから」

「ああ、ロベルトがマリウスに飽きたのではなく、父親譲りの精力の無さだと謝っておいた。お前も俺に似ればな」

「私も謝っておいた。お前に精力の無さを遺伝させてしまったと」

「俺は違いますよ……母上に似たんです」

「反論するな!!! お陰で飽きたんじゃなく精力が低いんだと、マリウスのネガティブさが少し無くなったんだからな。だいたいなんで昨日抱いてやらなかったんだ?」

「あれが誘い文句だと思わなかった俺も悪いですが……アルトが寝る直前までグズっていたので、マリウスも疲れていたし。ゆっくり眠らせてやろうと思っただけですよ」

マリウスは言葉で言うよりも態度で示す事が多いのに、失念していたロベルトが悪い。目や表情で訴えたり、擦り寄ってきたりと。ただ、まだ産後という観念があって、ロベルトもそこまで気が回らなかったのだ。
言葉で言えば良いといえばそうだが、マリウスがなかなか言えない性格なのは良く分かっているのでここでフォローすべきなのはロベルトなのだ。

「マリウスは精神的な愛を信じていないからな。肉体的に依存しているというか……お前が愛しているって信用させていないのが悪い!」

「言い返す言葉はありません。今夜はアルベルとアルトをお願いしても良いですか? 夜泣きをすると集中できないので、マリウスが」

「ああ、任せておけ」

マリウスを迎えに行き、子ども達を置いて戻った。勿論家出した云々で叱るつもりは無かった。
そして、子育てが大変だと思ったから昨日は手を出さなかっただけだと言ったら、きっと言い訳だとか、傷つけないようにしていると思われるだけなので言わないことにもした。
何も知らないようなふりをして、不安を払拭させるしかないと思った。




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