「薬?どこか身体の調子もおかしいのか?」

「いえ……ちょっと飲みすぎただけです」

ただの避妊薬だ。効き目は怪しいが、飲まないよりはマシだろうという程度だろう。婚前交渉など滅多に起こらないこの国で、避妊薬の需要などないに等しい。隣国から入ってくる薬が非常に高価な値段で売っているが、偽物も多いという。これも本物かどうかも分からずに飲んでいた。
もし俺の魔力があの男に勝っているとしたら、避妊のことなど考えずに済んだのに。気休めにしか過ぎない薬で、自分を犯す非情な男の子どもを孕んでしまわないかと、心配する毎日がいつか終りが来る日があるだろうか。

「ユーリのせいか?」

「え?……」

今、隊長は何て言ったのか?彼の弟のせいかと言ったのだろうか?

「……何を」

「ユーリから聞いている。あれも次男だから甘やかされて育ったせいで、お前に迷惑をかけていないか心配だ」

決定的なことは何も言わなかった。何を聞かされているのか分からない。ただユーリが自分の事を好きだということなのか、身体の関係まであることを示唆しているのか分からない。

「ただ、私は結婚するつもりはないから、ユーリとクライスが結婚して家を継いでくれると助かる。お前なら家柄も良いし、両親も喜ぶだろう」

「……俺は、そんなつもりはっ」

あの男は最悪だ。もう俺は隊長の目が見れないじゃないか。
隊長は分かっているというように頷いたが、意思の疎通が出来ているかは不明だ。どこまであの男は俺を辱めれば気が済むのだろうか。

怒りを抑えきれないまま、夜を迎えた。
俺の怒りなど感知しないとばかりに、ユーリはにこやかな笑みさえ浮かべて人のベッドに入り込んできた。

「やめろ!」

いつものように好き勝手な行いを許すつもりはなかった。それでも力では適わないが、唯々諾々と従いたくはなかった。

「どうして今日は抵抗するの?無駄だって分かっているだろ?俺は何があっても止めないよ?クライスの気持ちなんてどうだって良いんだ」

傲慢ないい様に余計に腹が立った。この男が自分の気持ちなど考えているはずもないことは分かりきったことだ。だが口に出して言われて、平気なはずはない。

「隊長に何を言ったんだ!」

「ああ、兄さんに。うん……俺がクライスを愛していることと、あとは……もうこうやって他人じゃないことかな?クライスを何度も抱いて、交わって、気持ちよくなっているって」

「何を考えているんだ!そんなこと!?っ」

「何って、クライスのことしか考えてないよ、俺は。毎日毎日考えるのはクライスのことだけだ。どうやったらクライスが俺のことを好きになってくれるのかなあ?とか、今夜はどうやって抱こうとか。昨日のクライスは苦しそうに喘いでいて、思い出すだけで勃起しそうとか。何時になったら俺の子ども孕んでくれるかな?とか」

とても、とても楽しそうな笑顔でユーリはそう言った。

「そう……それから、兄さんのことを何時になったら諦めてくれるのかなあ、とかもね」

「とっくに諦めている」

「嘘だ。まだ好きなんだろ?だから俺のことを受け入れない」

身体はとっくに受け入れてくれているのに、とユーリは俺を押さえつけながら、服をはがして行く。

「隊長のことがなくたって、お前なんか好きになるものか!」

「うん、だから、良いよ。心が手に入らないって分かっているから、身体だけでも手に入れるって決めたから。兄さんのことが好きって言われた時から、もう俺は我慢するのを止めたんだ。クライスの心なんてどうても良い……俺のことが好きにならなくたって、俺に犯される可哀想なクライスのことも可哀想とも思わないし。好きな人の気持ちを考えることなんか止めれば、けっこう平気なものなんだぜ?自分の欲望を満たすことだけ考えれば良いんだから。こうやって……」

ユーリは昨夜もユーリのものを飲み込んでいた後腔に潤滑油を塗りつけると、俺の許可などを得ることもなく、強引に入り込んできた。

「くっ……」

「クライスを抱くことだけ考えてっ…自分の幸せのことだけ考えれば良いんだからな」

「最低なっ男だなっ」

無理強いされているというのに、抱かれるのに慣れた俺の身体はユーリの身体を喜んでむかい入れてしまう。初めは媚薬を使われ無理矢理ユーリの身体を受け入れていたが、今は薬がなくても痛みもなく感じてしまうはしたない体になってしまっていた。

「お前は身体は手に入れられたって、一生俺はお前を愛さないっ……意地でもお前と結婚なんかするつもりはないからなっ!」

「分かっているよ。だからせっかくクライスと結ばれても皆に言いふらさないんじゃないか。そんなことしてもクライス俺と結婚してくれないもんな……だから毎晩頑張っているんだ。クライスの腹の中に一杯中出しして、精液をつめて、俺の子どもを孕んで貰うように。流石のクライスもさ、俺の子を妊娠したら結婚する気になるだろ?」

楽しそうに、早く孕んで欲しいというユーリにわざわざ反論はしなかった。
確かに、妊娠したことが発覚したら、立場的にも結婚を余儀なくされるだろう。結婚もせずに子どもを産むことなど許されていない。
いくらユーリのことを憎んでいるとはいえ、生か死かと言われたら、ユーリと結婚するしかなくなるだろう。

しかしそんな日は永久にこないのだ。



*弟たんは純愛計画的ゲス



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