「クライス様って、何時になっても本当にお美しいですね……」

「そうか?……しかし突然何だ?」

クライスとユーリの第三子ユリアの誕生祝いにエルウィンと一緒に恒例のお茶会来ていた。

「何時までもお若いままだし、綺麗な人ってユアリス様みたいに何時までもお美しいんでしょうね」

まだクライスは年を取ったのにお若く見えますね、といわれるような年でもないだろう。

「いきなり何を言い出すんだ? エルウィン。急に年寄りのようなことを言い出して」

「もうすぐ隊長が即位するでしょう?……最近、隊長がエルウィンが世界で一番美しい王妃になる! とか言っているんですが、他国ってまだまだ王妃女性が多いですし、そもそも俺って別に綺麗じゃないですし。なんか注目集められるのが嫌なだあって……クライス様くらい美しくて強かったら自信持てたんでしょうけどね」

まあ、気持ちは分からないのでもない。
エルウィンは下級貴族の出だし、魔力もさほど強くない。
鬼嫁だが精神的に強いのは隊長にだけで、通常時にメンタルが物凄く強いという訳でもない。
きっと同じ兄弟の妻でクライスとつい比べてしまうのだろう。
可哀想だが確かにクライスとエルウィンを比べれば何もかもクライスが勝ってしまう。

隊長は国王になることがほぼ本決まりに近かったので、もう少し慎重に妻を選ぶべきだったといえるかもしれない。決してエルウィンが悪いという訳ではなく、妻になる人の負担をもう少し考えるべきだったと思うだけだ。

しかしそう考えてる私も深く考えていなかったが、私が隊長の婚約者に選ばれたのは将来の王妃になることも視野に入れられていたのだろうか? 隊長と結婚するつもりが無かったので真剣に考えた事はなかった。

私は次男として生まれ、兄があとを継ぐ予定だったため王妃にと考えても不思議はなかったのかもしれない。
父は公爵の従兄弟、母は陛下の従兄弟、まあ血筋としては悪くはなかったのだろうし、魔力的に考えても隊長とは相性が良いと考えたのだろう。

ただ、私の兄は私が幼い頃に駆け落ちをしてしまっていて、将来的に私が家を継がなければならない可能性が高かった。
それでも他国に逃げたというわけでもなかったのでいずれ仲直りをして戻ってくるかもしれないと思っていたから私を嫁に出そうとしたのか。

とにかく私もクライスも高位貴族だ。エルウィンからしてもれば中々覚悟がつかない。というのが正解なのだろう。

「まあ、そう落ち込むな。エルウィンはクライスほどじゃないが、充分美形だし若いし、礼儀作法もしっかりできている。政治は隊長がやるんだから、エルウィンは隊長に任せておけば良いんだ」

正直誰もエルウィンに王妃としての手腕を期待していない。
期待しているのは隊長の変態を制御してくれることだ。
これまでの隊長の変態行為および変貌振りは何とか第一部隊+陛下周辺だけで押さえ込んでいた。
しかし国王になったらそれも難しくなるだろう。そこでエルウィンに隊長を上手く煽ててなんとかして欲しい、それが唯一期待される事だ。

「クライスには変態な変わりに陰険で計算高い夫がいるんだからな。エルウィンは若さがあって……ああ、でも、それもヤバイか?」

クライスが何時までも若くて綺麗だとエルウィンは褒めていたが、エルウィンは今は若い。この中で最年少だ。だから当然若い。けれど何時までも若いわけには行かない。当然年を取って老けていく事になる。

「今は若くて良いけど、年取ったらどうするんだ?」

「どうするって、年を取れば……当然老けますよね?」

「おいおい……俺たちがそうなると思っているのか?」

「そうなるって……?」

「お前、義母上や義父上を見てどう思っているんだ? あの若さと美貌」

「どうって、とてもお若く見えますよね」

駄目だ。全く分かっていない。

「エルウィン、高位魔力保持者は外見は若いままで固定される。加齢しないんだ……肉体も絶頂期のままだし、若い外見のまま一生を終える事になる。知らなかったのか?」

わざわざ学校の講義で教わるようなことではないが、極端に年を取らない外見の身内がいれば説明されなくても疑問に思うはずなんだが。

「え? そういえば、そんなことを聞いたような……」

「私達の階級ともなると親戚縁者はほとんど高位魔力保持者で年を取らないから、当然の常識だったんだが……エルウィンはそうじゃなかったから誰か説明してやるべきだっただろうな」

エルウィンは下級貴族で周りの年を取った者たちは当然加齢していっただろう。だから知らなかったのかもしれないが。

「じゃあ、クライス様やエミリオ分隊長も年を取らないんですか?」

「そうだ……ついでに言えば当然隊長もだし、ルカやサラもだ。エルウィン、お前だけが年を取っていく」

「そうなんですか……年を取っていくのは当然のことなんで何とも思っていなかったです。しょうがないことですが、皆若いままで俺だけ年を取っていくのは、嫌かもしれないですね。同じ階級で結婚していれば何とも思わなかったでしょうけど……」

確かに同じ階級同士で結婚していれば伴侶も同じように年を取っていくし、子どもも同様だ。当然のこととして受け止めただろう。

「でも……俺だけ年を取ったら、隊長も流石に盛ってこないでしょう。おじいちゃんになったら、そんな外見の俺に興奮したりしないでしょうし……それは利点ですね」

「いや、お前の考えは甘いと思うぞ……あの隊長がお前が年を取ったからと言って遠慮すると思うか? 好きじゃなくなると思うか? おじいちゃんになったお前にやらせて下さいと言うに決まっているぞ」

「流石に隊長でもやらないでしょう。そんな人の身体のことを思いやってくれないような人はさらに幻滅ですね……あ、よく考えればエミリオ分隊長だって似たような立場じゃないですか? だってギルフォード王子は魔力阻害症で、魔力は0でしょう? ギルフォード王子も人並みに年を取るってことでしょう?」

ギルフォードな……あいつは特異体質なので純粋に魔力が0っていうわけじゃないような気もするんだが。あの体質の解明がされていないので、よく分かっていないが、魔力を阻害する能力を持つってことで、あれはあれで魔力があるような気もするんだ。だから、ギルフォード単体でも年を取らないような気もしないでもないんだが……

「エルウィン、よく考えてみろ。お前の周りで魔力が低いのに年を取らない人たちがいないか?」

「……? そうですね。俺が高位魔力者に囲まれて過ごすようになったのって、隊長と結婚したここ最近なので……あまり外見が変わっていく人は見ていませんが……そういえば、王妃様は女性で魔力がないのにお若いままですね……あとギルフォード王子のリエラ国王もそうですよね? リエラ国王は俺よりも魔力低いはずなのにそういえば変ですよね?」

「そうだ……王妃様もリエラ国王も共通の点があるんだ。それは、夫が高位魔力者ということだ。つまりだな……定期的に交わる事によって夫から魔力が注ぎ込まれるので、伴侶も同じように若いまま肉体を保てるようになる。だからギルフォードも私と同じように若いままの予定だ」

「問題は、定期的な交わりだ。俺は単体でも魔力が高いのでユーリがいてもいなくても関係ないが、エルウィンは違う……今はまあ、隊長を拒んでもいても若いから問題ないが、このまま隊長をずっと拒んでいるとお前だけ老化していくぞ」

そう、最初に戻る。クライスはずっと綺麗なままだが、このままだとエルウィンはヤバイ。




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