「悪い……俺は全然理解できなかった」

げっそりと有り得ないとでもいうかのようにクライス副隊長は首を横に振っていた。

「100歩譲って……兄弟で結婚したのを見て見ぬふりをしたとして、どうしてパトリックお前の責任なんだ!!!! どう考え立って、ロレンス一人の責任だろう!!!」

んー。クライス副隊長はお怒りだけど、お互い納得しているなら構わないんじゃないのかな? って僕は思うけど。

「それは……だって俺は兄ですから……ロレンスがしでかす事に責任を取らなければいけない義務が」

「だから、お前は塔に閉じ込められて、媚薬飲まされて、子ども産まされても、弟の責任を取ってやったとでも言うのか!!?? 弟を甘やかすのもいい加減にしろ!!! 弟に孕まされて、何か思うところはないのか!」

「それは……」

クライス副隊長、あんまり責めても可哀想ですよ。

「だいたい、ユーリ! お前もロレンスの片棒を担いで、陛下に進言をするなんて何を考えているんだ! パトリックが可哀想だろう」

今度は矛先がユーリ隊長の元へ行った。クライス副隊長、モラルには厳しいよね。ジュリアのパイパンとか、僕の全裸とか駄目とか言っていたし。

「だって、兄さんとエミリオの後始末を兼ねてだよ。パトリックもロレンスも純潔を失っているんだからもう誰とも結婚できないだろう? ロレンスはどうしても結婚したいっていうし、父上も認めていたし」

「だがモラルが」

「もし、クライスが俺の兄だったら結婚諦めた? 俺は諦められないよ。例えクライスが兄弟だったとしても何としても結婚してみせたよ。父上だって同じだろうし、俺たちロレンスの気持ちは痛いほど分かったんだ。だから協力したんだ」

「そうだな……俺もユーリが弟でも結婚したと思う」

モラルに煩いクライス副隊長もやっと納得したようだった。色々厳しい人だよな。僕もグレイが兄弟だったとしても絶対結婚したよ! 本当の兄たちは……間違っても結婚したくないけど。

「だが、兄弟で結婚は置いておく……としても、パトリック、お前洗脳されているんじゃないのか? 同調で」

「それを言ったら、同調だけじゃなくって、婚姻届にサインをしてもらった今でも花嫁の媚薬漬けにしていることのほうが問題じゃないですか? 何で結婚してくれたのにまだ花嫁の塔に閉じ込めて媚薬使っているんだ?」

普通にこの塔から出て、子育てすれば良いのに。

「おい、イアンの言うとおりだ。パトリックはお前みたいなアホで駄目でヘタレな弟にも慈悲をやり結婚までしてくれたと言うのに、貴様は何故未だにパトリックを監禁して媚薬漬けにしているんだ!!!」

「だって……塔から出したらパトリックが逃げちゃうかもしれないし。正気に戻ったらエッチしたくないって言われるかもしれないし……やっぱり弟としてしか見れないとか言われたりするかもしれないから」

うちの国では結婚したら一生離れないのに、そんな心配しちゃうんだ。子どもまで産ませちゃったのにね。

「ロレンス……馬鹿だな。今更そんなこというくらいだったらサインなんかしない。ローラントだって産まなかった」

「だって……そう言ってくれるのだって同調のお陰なのかもしれないし……塔から出したくないんだ。花嫁の媚薬と同調なしでパトリックを置いておけない」

ああ、クライス副隊長がとってもイライラしているのが分かる。
きっとアホ過ぎる兄弟だと思っているんだろう。

「どうでも良いが仕事に来い。というか仕事をする気があるのか? 真面目に仕事をするか辞職するかどっちかにしろ! というか、もう俺は首にしたい。お前が公爵家の一族じゃなかったらとっくの昔に首になっているぞ」

「駄目です! 仕事辞めたら両親に怒られます」

「どっちかだ! 仕事しないくせに辞めたら怒られるから辞めませんとか都合の良い事ばかり言うな!」

「すいません、副隊長。ちゃんと俺が責任を持って仕事に行かせますから」

「貴様は2年間も言いなりになっていたくせに、ロレンスが言う事を聞くとでも思っているのか?」

「ロレンスはきっと心配なんだろう。俺にはロレンスの気持ちは分かる。この塔には誰も入れたくないだろうから、息子の世話をする人間がいないんだろう。ロレンスは息子の世話もしないといけないし、パトリックのことも心配で仕事にも行けないんだ。強引に奪わなければ自分の物にはならなかった妻だからな」

流石リーセットは自分も奥さん無理やり手に入れた仲間だけはあるね。

「ロレンスが真面目に仕事に行って、花嫁の媚薬の使用を止めて、パトリックが息子の世話をすれば全部丸く収まる事だろう……例え、花嫁の塔に住み続けたとしてもだ」

う〜〜ん。
今の問題は……
・ロレンスが仕事しない
・パトリックが閉じ込められている
・パトリックが媚薬飲まされている
・子どもの世話

こんな所かな?

「けど……ローラントを出産してからまた媚薬を使い始めてしまったので、今使用をやめても効果は継続されてしまうんです」

「ユーリ、解毒剤はないのか?」

「残念だけどないね。俺たちの一族にそもそも解毒剤なんて不要だったし、そっちを開発する才能が皆無だったみたいで……まあ、子どもを産めばリセットされるけど」

「じゃあ、どうかな? ロレンスは出勤の時、パトリックと赤ちゃん連れてきて、赤ちゃんは育児ルームに預けていけば良いし、パトリックは監禁部屋を用意するからそこでエッチしたくなったらロレンスにしてもらえば良いよ」

うん、全部丸く収めている!!! エリオットと同じようにすれば良いんだ。エッチ部屋を作ってあげれば何の問題もないね。

「そうだな、それ良いだろう」

「万事解決だな」

「仕事が終われば皆で花嫁の塔に帰っていけばいいからな」

「はい、ありがとうございます。僕たちのために色々考えてくれて」

で、会議終了でいいと思ったんだけど……

「お前らアホか!!!!揃いも揃って!!!!何の解決にもなっていないだろうが!!!!」

「え? そうですか?」

「丸く収まったように思ったんですけど」

「ロレンス先輩も満足していたように思うんですが」

「パトリックが何も解決していないだろう!!!!!! そもそも部隊にエッチ部屋なんて作っていいと思っているのか!!!???」

作っちゃ駄目なんだって……え? 駄目なの? というように、僕達夫分隊長は顔を見合わせた。

「そんな部屋は却下だ! ローラントを育児ルームに預けるというのはそれで良い。パトリックは……やはりロレンスがいないと駄目な身体か?」

「はい……すいません。満足に育児もできていないんです。母乳だけはロレンスが手伝ってくれてなんとかあげれているんですか。普段はこうしてロレンスに身体を預けた後じゃないと正気で物も考えられないんです」

「……本当は実家に戻るのが一番じゃないのか? 子どもの世話もしてくれるだろうし。パトリックの身体の面倒を見ないといけないときだけ転移して戻ればいいだろう」

「……俺、まだ両親に会う勇気がないんです。こんなことになってしまって何て思われているかと思うといたたまれなくて」

「僕もパトリックを塔から出したくないんです……」

「ああ、もう良い! じゃあ、パトリックは2年間これまでサボっていたから無給で奉仕すること。育児とパトリックのため第二子が生まれるまで短時間勤務に変更すること。花嫁の媚薬はもうパトリックには使うな! そうすれば第二子誕生以降は大丈夫になるだろう。これらのことを守れるか?」

「はい……」

ちょっと納得したくない感じなロレンス。きっと花嫁の媚薬ずっと使いたいんだろうな。

「俺が守られせますから」

パトリックは仕事どうするの? しばらく産休ってことにしても次の子産まないと媚薬の効果切れないんだよね。そしたらまた産休だし。

「俺は……仕事はもう辞めます。補佐をしているオリバルドを昇格してやって下さい」

まあ、嫉妬深い弟兼夫がいるからたぶんしばらくは花嫁の塔から出て行かないんだろうね。

「ごめんなさい……パトリック。色々諦めさせちゃって……でも、僕パトリックがこの塔以外にいて他人といるのを見るのが不安でしょうがないんだ」

「いいよ……俺、この塔に住むから、気にするな……」

「あの兄弟夫婦は置いておいて、これで全部解決なのか? きちんと部隊は稼動するのか?」

「「「「はい、問題ありません。全部解決しました」」」」

エリオットのエッチ部屋は……クライス副隊長復帰当分しないだろうから問題ないよね。




「でね、クライス副隊長って物凄く怖かったんだよ。ユーリ隊長もあんな気の強い奥さんだと大変そうだよね。僕のグレイはとっても優しくって嬉しい」

会議を終えて官舎に戻ってきてグレイに今日あったことを全部話していた。
時折グレイは何故か頭を抱えたり、ため息をついたりしていたけど、よくやったなと言ってくれた。
ポツリと子ども産んだら専業主婦になるかもしれない、と言われたけど、僕頑張って働いてグレイに不自由なんかさせないから全然平気だよ! 今僕には隊長という仕事と、人形販売金と、領地から入ってくるお金があるから、官舎を出てもお城に住まわせてあげれるんだから。

僕は今日頑張ったご褒美にグレイに膝枕をしてもらって、頭を撫でてもらっている。グレイは優しい。

でも一つ今の状況に不満があるとしたら、グレイが妊娠中なのでいやらしいことができないことだ。

『安定期になれば大丈夫なんだよね?』と聞いたけど『イアンの大切な子なんだ。特に俺は妊娠しにくいし……2年で妊娠できたことが奇跡と同じだ。大事にしてもしたりないくらいだから……分かってくれるよな? イアンは良い夫で父親だから、我慢できるよな』とグレイに言われた。
うん、僕良いお父さんにならないと!

だから……性欲を我慢しないといけないんだ…(´・ω・`)

お父さんになるんだもん……僕の股間我慢……

僕エッチなこと大好きなのに……(´・ω・`)

僕がショボーンとしていたら優しいグレイは、エッチは禁止だけどエッチな格好をしてくれるって。それを見ながら自慰をしろって……しているところを見てくれるグレイは優しい。

いそいそと取り出そうとして、エッチなパンツをはいてくれたグレイをガン見しようとした時。

「そういえば、副隊長代理は誰にしたんだ?」

え? そういえば決めてなかったな。奥様な分隊長はいつ妊娠するか分からないから……夫な分隊長で……

「明日、決めるよ」

僕今エッチさせてもらえないから、一番エッチの回数が少ない夫に補佐をしてもらおう。明日回数を聞いて決めよう。仲間が欲しいから。



END
「なんだか、俺エミリオ分隊長が良いことしたような気がしてきました」
「何でだ?」
「だってこんな変態分隊長を放置しておいたら大変な事になりますよ! 奥様分隊長たちが被害にあってもらって被害を拡大しないようにしたのは正解でした!」
「……意外に純愛ばかりだったしな。それほど不幸な妻も……いないと思いたい」
「それに俺に勇気をくれました! 隊長よりもアホな夫がいるって!」
「エルウィン……お前最近言っている事が酷いぞ」
「だけど、これじゃあ……クライス様産後明け出勤したら出勤拒否になるかもしれませんよ」
「私もそうしたい気分だ」


*長くなりましたが夫会議終わりです。誰が一番結婚したくない夫なのか・・・逆に誰がマシなのか・・・(笑)最近ユーリたんがいい夫に見えてくるという幻が多数観測されています。



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