「本当に……パイパンにかける情熱が理解できないな。フェルナンはダークブロンドだから、イアンみたいな明るい金髪よりも下の毛が生えてきたのが目立つのか?」

いや、気にするのはそこ?

「髪の色よりも下のほうが明るいんだ。だからそんなに目立たないはずなのに……」

「むしろジュリアのほうが目立つだろう。アイツ、黒髪だし。当然下の毛も黒だろ?」

私はジュリアの黒髪黒目で鋭い目つきを思い出す。イアンは人形を抱っこしていても許される可愛らしい容姿だが、ジュリアの容姿でパイパンを叫んでいるのは容認できないような気がする。だから余計にクライス副隊長に嫌われるのだろう。

「……そう。あいつは目立つし、自分がパイパンを崇める会の会長なので自分のパイパンには全く興味がないが、会長自らがパイパンにしないわけにはいかないと言って……アイツもパイパンにしている」

「それは見たくないな……」

「そうなんだ……でも、もう諦めている」

やはりジュリアを躾けるのは不可能なようだ。妻も諦めているのに、他人の私達がどうこうできる問題ではない。そう……仕事はしているし、もう良いかもしれない。

「デニス……お前の夫はどうなんだ。正直真面目に仕事をしているようには見えないが」

「うっ……すまないっ……」

デニスの夫のジブリールはこの中の夫の中で一番若い。21歳になったばかりで最年少で分隊長になる。イアンが隊長に就任するため、新しく分隊長になる予定なのだ。
年は若いが当然妻のデニスよりも魔力は高い。魔力が高いからといって上の地位につけるわけではなく、上の役職が空かないと当然出世は出来ない。だが、今回上手い具合に上の役職が空いていき、若干21歳で分隊長になるジブリールは出世街道を走っている……と言えるのだろうか。

「仕事は……一応やっているんじゃないのかな」

「あれじゃあ、真面目にやっているようには見えないだろう。パンツ被って仕事なんかして、真面目にやっていても誰も認めないぞ」

ジブリールは別名パンツ仮面だ。エルウィンと同期であり、エルウィンが隊長の変態の餌食になっているのを真近でみていたはずなのに、何故か隊長を尊敬し、尊敬する隊長がエルウィンのパンツを大事にし宝物にしかぶっているのを見て、自分もやって良いんだと思い込んでいるようなのだ。
そんなジブリールのパンツにかける情熱は熱い。

「……だけど、それでも分隊長に出世できたんだから……問題にしてはいけない部分かもしれない」

「そんな訳はないだろう! 分隊長になってまでパンツ被って仕事する事なんか許される訳ないだろう! お前自分の夫のパンツ仮面を見てみぬ振りをするのは止せ!!!」

「そうだ、そうだ! パンツ仮面が許されているのは隊長が、自分を慕って同じようにパンツを崇めているのを許しているからだ! 出世できたのも隊長のお気に入りだからなんだ!」

普通だったらパンツ被っている男が分隊長に出世できるはずはない。クライス副隊長に嫌われるからだ。しかし、クライス副隊長が産休の時期に被っていたのもあり、目撃されていない。そのせいで隊長お気に入りのジブリールが分隊長になる事になってしまったのだ。

顔が綺麗なだけに余計残念な男だ。


「聞いてくれ……どうにもならない、俺の悲哀を……」




新隊員として入ってきたジブリールは淡い金髪にブルーグレイの目をした綺麗な顔立ちをしていた男だった。魔力にも優れ品行方正でとにかく期待が出来る新人だと思って可愛がっていた。

「先輩、先輩には婚約者とか心に決めた方はいらっしゃらないんですか?」

なんとかく何故こんな事を聞いてきたかは心当たりがないわけでもない。
だが年下には興味がなかったし、そもそもジブリールのほうが魔力が高い。結婚したら俺が妻とか、今まで誰かの妻になる事など考えた事もない。これは他の同僚だとて同じだろう。

「そうだな……隊長のような方がいたら、考えるかもしれないがな」

その頃最早隊長は……尊敬に値する方ではなくなっていたが、尊敬に値する時期の隊長を思い浮かべてそう言った。

「そうですか……」

ジブリールは消沈したようにそれだけ言った。それで終わったと思っていた。

「なんか最近下着が消えているような気がするんだけど……誰か俺の下着混ざっていないか?」

「……なんかジブリールが似たようなのを被っていたような」

「被っていた? 履いていたの間違いだろう」

ここ最近クリーニングに出したはずの下着が帰ってこないのだ。ジブリールの所に間違って配達されたのか?

「おい、ジブリール、お前俺の下着……」

見てはならないものを見てしまった。パッチリとした目に綺麗な顔に綺麗な金髪に……俺のパンツを被って台無しにしてしまっているジブリールがいた。

「先輩! お久しぶりです! 最近、僕辺境警備に行っていて会えなくて寂しかったです。でも、先輩のパンツがあったから何時も一心同体な気がして、先輩のことをいつも匂いを嗅いで思っていました!」

俺は……怒れば良かったのかもしれない。それって盗んだんじゃないのか? どうやって手に入れたんだとか……パンツを被っているなんて、それでも期待されたエリートなのか!

と、先輩らしく部下を正さなければいけなかったのだろう。

しかし俺は関わりたくなかった。嬉しそうに俺のパンツを被っているジブリールのこの有様は……俺のせいだったからだ。

「隊長を先輩が見習えって言ったので、隊長を観察して、パンツを崇めろということだと分かったんです。本当に素晴らしいですね、パンツは! 先輩と遠く離れていても、寂しくないし、この素晴らしい匂いとか、先輩のお尻を包んでいた布とか、神の一品ですね! あ、できればTバックとかも履いてくれると嬉しいです! 僕のパンツコレクションに加えたいので!」

隊長が理想とか嘘言ったから、ジブリールがこんなんになっちゃったんだと、責任を感じたのだ。

だからと言って、パンツを被っている後輩を元に戻す自信もなく、パンツくらい上げれば良いか……と思い、後輩がパンツを盗んでいくのを止めなかった。パンツを被っていても、注意もしなかった。

いわゆる、見て見ぬ振りをするようになった。

現実逃避をしたことが、後になって自分の身に降りかかってきたといえる。


「ああっ……ん、先輩っ、僕いっちゃいます」

媚薬に溺れた脳でも、周りは見える。周りも全裸で絡まっちゃっている同僚&部下たちがいたが、皆全裸になっている。なっていないのは俺だけだった。正確にはパンツだけはかされていて、後ろだけ破かれてそこからジブリールの物を挿入されているのだ。

「出しちゃった……先輩の中に一杯。これで僕、先輩の旦那様だよね? 先輩のパンツも、先輩も全部僕の物」

それからと言うもの、性交の際は常に俺はパンツをはかされたままで、パンツを破りたくない、だって大切なパンツだからと、邪魔にならないようなきわどいTバック型や穴あきパンツなどをジブリールは開発し、それを販売し大成功を収めたらしいが……俺はその収益がいくらになるかは興味がない。

今日も、性交の後のお互いの精液がべっとりついたままのパンツを嬉しそうに持って行き、被っているのを目撃されている。





「俺が悪いんだ……始めの過ちを正そうともせずにいたから……だから、夫が変態なのを許してくれ!」

「まあ……変態に関わりたくない気持ちは非常に分かるが、デニスは何一つ改善しようとか、正そうとする努力をしていないな。変態の言いなりじゃないか。隊長を見ろ! エルウィンに散々尻にひかれているじゃないか!! お前のジブリールが隊長をモデルに変態化したんだったら、デニスもエルウィンを目指せ! 鬼嫁になるんだ!!!」

「……鬼嫁」

「そうだ!! お前はもうパンツをはくな!! ノーパンになれ! そうすれば、ジブリールも被るパンツがなくなるだろう!!!」

「そうだそうだ! パンツを人質にしろ!!! 人前でパンツを被るんだったら、パンツをはいてやらないと鬼嫁になれ!」

あれほどパンツを愛しているジブリールにとって、デニスにパンツを貰えないことは、これ以上ないほどの鬼嫁行為だろう。ジブリールは古いパンツではなく脱ぎたてのパンツを被るのが好きだからな。

しかし、ジブリールの尊敬する隊長なら同じくパンツは宝物だろうが、エルウィンがノーパンでいるのなら、それはそれで喜ぶだろう。本当にノーパンがジブリールにとって罰になるのだろうか……



だんだん奥様方も常識が崩壊・・・



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