家系図の問題も分かったぞ! ここ最近、恋愛結婚または普通の政略結婚で結婚した夫婦は妻のことを思って子どもは2人まで、ってことにしていて。
略奪してきた花嫁たちはポコポコ子ども産ませて、薬がなくても夫に発情する淫らな身体にしたというわけか。


「なんか、もう……やっぱり二人で打ち止めですね。クライス様」

「……そう、したい」

エルウィンは打ち止めと言えば、隊長が泣くだけだが、それで通るだろう……だが、俺は……


「ユーリ……今日のお茶会で、とんでもない事を聞いたぞ。公爵家の男は子どもは2人までというのが通例らしいな。なのに3人も4人も計画しているお前はどういう男なんだ?」

どういう男なんだと自分で問いかけておきながら、非道な男だろうと答えを聞くまでもなく分かっている。

「どうしたんだ? 俺の可愛い奥さんはそんなに怒って」

「お前みたいなな魔力の強い公爵家の男は、2人目までしか作らないってことになっているんだろう? 3人目以降を作ると……身体が……」

取りあえず怒っていたユアリス様とリエラ国王を仲直りさせて、ユーリに文句を言うべく急いで帰ってきた。

「ああ、淫らな身体になっちゃうって奴だね……楽しみだね」

「貴様って男は!!!!!」

いや、怒ってはいけない。怒っては負けだ。こういう男だって分かっていたはずだろう?

「3人目は産まない!……いや、産みたくない!」

産まないが通用しないとは分かっている。俺の意思など関係ないからだ。勝手にこいつは孕ますからな。

「ふ〜ん……クライス約束したよね? 3人目産んでくれるって」

そう、してしまったのだ。兄のマリウスの命を救ってくれたのはユーリの手はずだった。その頃、俺はユーリと結婚し子どもを産んだばかりで、世情に疎かった。仕事もしていなかったし、そもそも兄とは疎遠だった。だから兄がロベルトさんと結婚した事も知らなければ、実家から絶縁されていたことも当然知らなかった。
その間、ユーリは兄の命を救い、兄の夫を出世させ、実家から放逐された兄を社交界に復帰できるように、後押しをしてくれていた。ユーリの手助けがなければ、兄の嫁ぎ先である伯爵家も結婚に反対していたかもしれない。
そんな色々やってくれた夫に対して借りを返さないわけにはいかない。
たとえ相手が有り得ないほど鬼畜な夫であっても。
外面だけは世界一良い夫なのだ。家庭内では平気で妻を洗脳する非道な男だが。

「約束はした……だが、お前はいつも後出し条件すぎだ! そんな弊害があることは結婚する時に言っておくべきだろう! 事実、ユアリス様は知っていたじゃないか!」

ユアリス様は王子だったし公爵家の事情にも明るかったかもしれない。元々していた可能性もあるかもしれないが、代々の公爵は最近妻を思って2人目までにしていたはずじゃないのか?
何故この夫はそういう思いやりはないんだ?
いや、あったら洗脳なんてするわけないか……何故俺はいつもこの夫に常識を求めて何時も自問自答し打ちのめされるのだろうか。

「まあ、そう怒らないでくれないか? あれは、うちに伝わるジョークというか。妻に子どもを諦めさせる先祖の知恵が作ったホラ話らしい」

「ジョーク? ユアリス様は真剣におっしゃっていたぞ?」

「うん、まあ……母上はもっと子どもが欲しかったらしいけど、父上は俺と兄さんで充分だったらしくそれ以上は欲しくなかったらしいんだ。まあ、理由は息子に母親を取られたくないという独占欲らしいけどね。2人というのは公爵家を維持するのに、最低限必要な人数で2人と設定してあるらしい」

「先祖はたくさん子どもがいただろう?」

「だからこの口伝が始まったのはわりと数代前かららしいよ。恋愛結婚で結婚したら、子どもなんて義務で作る以上に要らないっていうのが、父親の意見。で、母のほうはもっと欲しいから、そういう母体のためにこれ以上作ったら駄目だっていう話を作り上げたんだって」

「じゃあ、ユアリス様は騙されていた?」

「まあ、そういうことになるね」

3人目を産みたがったユアリス様に公爵は……奥様似の子どもが生まれれば嬉しいだろうが、また自分似の子どもが生まれることを思って思いとどまらせたんだろう。


「だから、俺とクライスに3人目を作るのは何の問題もないってわけ、安心してくれた?」

「……仕方がないな」

「じゃ、そろそろ3人目作成しようっか♪ ジュリスから1年経っているから、そろそろできるかな〜」

3人目……子どもは可愛いけど。その間の洗脳さえなければ、まだマシなのに。でもこればっかりはこの夫は言っても聞かないしと、ほぼ諦めの境地でいた。
ユーリの考えていることなど知りもせず。



この口伝は、確かにどんな花嫁にも当てはまることじゃない。
じゃあ、全くの偽りかというと、火の立たない所に煙は立たないということだ。実際にそういう花嫁がいたんだよ。
過去視で見たから間違いない。
連れ去られてきた花嫁は、夫によって秘薬を飲まされ薬と男なしではいられない身体にされて。
薬は妊娠中は飲めないので、薬がなしになったら孕まされていて。何人も子どもを産まされて、そしたら濃い魔力に侵食されていて、今度はその男の魔力なしでは生きていけない身体になって。
故郷を懐かしんで帰りたくても、何人も子どもを置いて逃げ出す事もできず、夫なしではいられない身体になって、あの花嫁の塔から結局出ることは適わなかった。
そのご先祖の花嫁が、3人目を産んだらそうなってしまった。だから3人目以降は〜っていう話の元になったんだよね。
3人目以降を産んでも大丈夫な花嫁もいたし、同じように3人目を産んで、薬の投与を止めても夫無しで要られなくなった花嫁も何人もいた。

そうだね、大体半々じゃないかな?

でも、俺は嘘をついていない。俺は過去視で過去を確かめたから、そういう事実もあったんだって分かったけど、父上はわざわざ確かめもせず口伝だといって母上に諦めさせていたわけだから。だいたい半々ってそう高い確率じゃないよね。

ただ未来視は過去視と違って、そう何度もできることじゃない。だからクライスがどっちになるかは、分からない。
だって未来視で確かめなくっても、すぐに分かるじゃないか。

でも俺はどっちでも良いよ。俺なしで要られない淫らな身体になったクライスなんて物凄く可愛いだろうし。
そうじゃなくても、孕ませれば可愛いクライスが見られるんだし。
たまに俺に怒りながら抱かれるクライスもとっても可愛いし。

俺はどんなクライスでも愛しているからね。


END

「隊長! よくもこんな大事な事黙っていましたね! 3人目なんか絶対に有り得ないので、俺似の子なんか今度一切期待しないで下さい!」

「そんな! あれは事実かどうか分からないただの都市伝説だ! (つω・。) 私は無関係だ!」

「火のないところに煙は立たないっていうじゃないですか!(エルたん賢い) 事実かもしれないっていう可能性があるのなら、自衛ってしすぎてもいけないものじゃないと思っています。なので今後性交渉は一切する気はありません!」

(つω・。)





- 117 -
  back  






×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -