初めての息子ができたのは、結婚してから5年後のことだった。
5年も子宝に恵まれなくて、こんなにアンリ様のことを愛しているのに、どうしてなのだろうと思い悩んだときもあった。

アンリ様は優しく、跡継ぎなんていなくても構わないと言ってくれたけど、けれど僕はどうしてもアンリ様の子どもを産みたかった。

だから息子を初めてこの手に抱いたときの嬉しさと言ったらなかった。それに物凄くアンリ様に似ている。
次男も三年後に恵まれ、二人とも父親似で僕を喜ばせてくれた。アンリ様は僕に似た子が欲しかったと最後まで言っていたけど、僕はアンリ様に似ている子で凄く満足だった。

長男も次男も魔力に恵まれていて、これなら公爵家の跡継ぎとして全く問題はなかった。
長男が持っている独自魔法は今分かっている限り、魅惑魔法(強烈なカリスマ制を普段から出す。意識すれば相手を虜にする)・時封魔法(対象物の時を止める)・回帰魔法(全てを元の状態に戻すことができる。命ですら同様)、次男は精神制御魔法・未来視過去視・時空移動魔法(時間の旅をすることができ、過去や未来に干渉する事ができる)などを持っていることが分かっている。
けれど、まだ幼いので発現できていない独自魔法もたくさんあるだろう。
これらの魔法は他に家系には現れないので、莫大な魔力を持つという自覚を持って、そして僕もそのように教育しないといけないと思う。


「母上、母上と父上はとても愛し合って結婚なさったそうですね? とっても有名なラブストーリーだったと叔父上に聞きました」

「兄上がそんなことを?」

僕とアンリ様の結婚の経緯は、ある程度の階級の者なら知らないものはいないようだが、誰もがアンリ様の機嫌を損ねないように口外しようとはしない。
兄上もデュアルとの一件以来、僕達の結婚に関して何も言ってこなかったので、急にどうしたんだろうか?

「将来、私が国王にならないか? と言われました」

「ああ、なるほど……」

僕も5年間子どもができなかったけれど、兄のほうは10年も作らなかった。できなかったのではなく、どうやらあえて作らなかったようだ。僕のほうに二人生まれて、ようやく作り始めたようだけど、王女二人しか生まれなかった。しかし兄は王女しか生まれなかったことに、どうやら安堵している様子らしい。

王女しかいないのなら、アンリ様の子が王位を継ぐことになる。
分からないけど、僕とアンリ様の息子に王位を譲りたいのは、あの騒動のお詫びも当然あるだろう。ある意味、ご機嫌伺いなのだろうか。それとは別に、国王はやはり魔力の高いほうが統治がしやすい。自分がそれほど魔力が高くなくて、アンリ様に馬鹿にされていたのを気にしているのだろう。そして、もし無理に王子を作って魔力の低い子になった場合、僕の息子達と比べられことは必須だ。王子がそんなかわいそうな目に合わせたくないという親心から、王子を作らなかったのかもしれない。

しかし別に僕もアンリ様も王位を狙ってなんかなかったのに。

「父上と母上の息子の私になら王位を任せられるといわれたんですが……」

「なりたくない?」

「興味はありません」

「でもね、将来好きな子ができたら、権力はあったほうが良いよ」

アンリ様は国王ではなかった。勿論アンリ様の実力なら、国王とか、そんな権力などなくても力づくで僕を勝ち取ってくれた。ただ、もしアンリ様が国王だったら誰にも反対されず、すぐにアンリ様の物になれたのに、とは思った。

「私は人を好きになると言う気持ちが理解できません」

「じゃあ……ユーリはどう?」

ちょっと長男は心配だな。頭も良く、魔力も、全てのおいて素晴らしいけど、余りにも堅物すぎる。こんな小さいから、大人になったら好きな人が出来てくれたらいいけど。
国王にもしなるんだったら、結婚しないといけないし。

「僕は……お母様が決めた人で良いですよ」

「そのうちね、絶対好きな人ができると思うんだよ。だってアンリ様と僕の子だもの。好きな人とできればお母様は結婚して欲しいと思うんだ」

婚約者を決めることは簡単だけど、無理矢理結婚はして欲しくない。好きになった人と、僕のように幸せになって欲しいんだ。

「好きな人ができたらどうしたら良いの?」

「それはね、勿論ユーリを好きになってくれるように努力するんだよ」

「好きになってくれなかったら?」

「う〜〜ん……そうだね。ユーリは魔力も高いし、人にはない魔法をたくさん持っているんだから、それらを駆使して何としても手に入れるんだよ。公爵家に生まれた男はそういう志を忘れてはいけないんだ。ユーリたちのお父様も、そうやってお母様と結婚してくれたんだから、ね」

だって誰だってアンリ様のような素晴らしくて強い男に、無理矢理にでも手に入れられたいと思うだろう。

そのアンリ様の息子の二人だったら、絶対に花嫁も好きになるはずだ。


「何の話をしていたんだ?」

「アンリ様。ふふ……二人の結婚の話です。好きな子ができたら、アンリ様のようにどんな手を使っても結婚しなさいって」

「まだ早いだろう」

「ええ、未来の話です」

「では、私から二人にプレゼントを渡してやろう。これはお母様を手に入れた際に使用した『花嫁の毒薬』の残りだ。お前達二人に分けてやろう。お父様はこれでお母様と結婚できたんだ。だから縁起が良いだろう。いずれ使う日が来るかもしれないからな」

「素敵な花嫁を見つけるんだよ?」

「ユアリスよりも素敵な花嫁はこの世にはいないだろうがな」


END


*リクのあった公爵夫妻、隊長とユーリのパパママのお話でした。
ヤンデレ夫妻と公言してしまっていたので、ヤンデレにできるか?とプレッシャーがありましたが、期待に添えたら嬉しいです。







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