小説(両性) | ナノ

▽ 11(END)


「家族を上げたかった」

「え?」

「俺は勝手な男だよ。ユインの逃げ道をなくして、勝手に皇后にするんだから……でも、ユインがずっと子どもが欲しかったのは知っていた。俺のせいで、そんな小さな夢も消えてなくなって。だから、俺はずっと子どもの頃から、ユインに子どもをあげたかった……他の誰にもあげたくなかったから、俺がユインの子の父親になるんだって、5歳の時から思っていたんだ」

ば、馬鹿かと怒鳴りたかった。どこの世界に5歳の分際で父親同然の大人の子どもの父親になる計画を立てている幼児がいるんだと。

そう言うと。


「皇帝だから許されるんだ。ねえ、プロポーズの返事は?」

「お前さっき、俺にだって拒絶はさせないって言ってなかったか?ということは、俺の返事なんか必要ないんだろ?」

「答えはイエスしか受け取らないけど、ユインの口から俺の妻になるって言って欲しい」


子どもの頃からの癖だ。甘えるように『ねえ?ユイン、一緒に寝て』とよく言った口ぶりと、同じように懇願する口調で言ってくる。こんなふうに甘えてこられるといつも拒否が出来なかった。そんな子どもを寝かしつけて一緒に眠っていたが、まさかそんな子どもの頃から、ユインに子どもを産ませようとしていたなんて。



「ずるいな……そんなふうに言われたら、俺が駄目って言えないの分かっているんだろ?」

可愛い息子で、今はお腹の中の子どもの父親になったライル。今度は夫になるのかと思うと、その変遷に笑みがこみ上げてきた。普通は有り得ないからだ。

「うん。分かってて言っている」

「言っておくけど、お前が夫になったからって、俺がお前の事を息子として以外愛せないぞ?今更男としてなんて」

「見させてみせる」

自信満々にそういうライルに、苦笑する暇もなく悲鳴を上げてしまった。

「う、うわ!何?」


お姫様だっこをされていた。


「皇后のお披露目に連れて行こうと思って。俺の妻だって、披露した後はここに閉じ込めるから、覚悟しておいてくれ」


どんどん歩きながら後宮を出て行くライルに、そんな疑問が浮かんだ。今迄だって後宮に閉じ込められていた。愛妾として。


それが今日から、皇后になるだけで、何も変らない。

いや、一つだけ変わる事は、お腹に子どもがいることだ。でも先ほどまでの絶望感はもうなかった。ライルの馬鹿馬鹿しい計画のせいだ。

ほんの子どもの頃からこんなことを考えていたなんて知った今は怒るのも馬鹿馬鹿しいほどだし、ライルなりに自分勝手にユインのことを思っていたことだと知ると、怒るに怒れないのだ。


「本当に守りきれよ?お前が計画的に仕込んだんだからな……」

「領地に引きこもろうと思われたら嫌だから、全力で守るよ。俺の奥さんと子どもをね」


この前まで小さな子どもだったはずなのに、それが自分の夫になるなんて、庶子から皇帝になったという波乱万丈な人生のユインでも想像がつかなかった。


「愛しているユイン……」


だけど、そんなふうに幸せそうに囁くライルを見ていると、ユインまで暖かな想いに包まれてくる。



きっとユインは皇帝としての名前は残らないだろうが、皇帝にこれほど望まれた皇后としては名が残るのかもしれないと思った。



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